川柳の話

今日の川柳

#4 老人は死んでください国のため 宮内可静

この句が最初に登場したのは1997年12月、作者の宮内可静さんは78歳だったという。 なので、若者が老人に向けて書かれた川柳ではない。 老人が(自分を含む)老人に対して詠んだ川柳だ。 当時は賛否両論で騒然だったと樋口由紀子さんが金曜日の川柳で書いている。 実は高齢者の自殺は他の年代に比べても多い。 二十代も三十代も四十代も多いが景気が良くなって経済的に潤ってくると減る。 だから現在は危険なのだけど。 しかし七十代は他の年代ほど影響を受けにくい。 世の中がどうあろうと一定数の高齢者は常に死を選ぶ傾向があるのだ。 その理由は「迷惑をかけたくない」である。 そう考えたとき、この句は宮内さんの内面から湧いてきた自分の声に聞こえやしないか。
川柳のいま

#2 くちびるにウエハースと川柳ステーション2022~川柳の話  

6月28日(奥付によれば)、なかはられいこさんの句集『くちびるにウエハース』が発行されました。 前句集『脱衣所のアリス』からは21年ぶりの句集とのこと。 21年ぶりとはいえその間に発表された作品は「We ARE!」、「ねじまき句会」で読めるので 句集にはどの句を載せてどの句を落としたのかにも興味がありました。 全5巻でもよかったのに。
今日の川柳

#3 お別れに光の缶詰を開ける   松岡瑞枝

光の缶詰を開けると 過去が消えて自分も別なものになってしまうのだろう 見えていたものが見えなくなってしまうのだろう 光の缶詰だからね だから普通は開けない 開けない限りはあなたとわたしの関係は維持される でも 缶詰を受け取ってしまった時点で あなたとわたしは別れることになっていたのである だって 光を見たいじゃないですか しっかり 目を開けて お別れに光の缶詰を開ける 松岡瑞枝 (句集『光の缶詰』(編集工房・円、2001年))
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今日の川柳

#2 ぼくら逃亡 海がなければ海創る  岩村憲治

川柳人としての起点をどこに持つか、を考えた時個人的にはこの句がそうなんじゃないかと考える。ぼく(ら)のらも甘いしうっとうしいし「海創る」なんては今は中学生すら言わないだろうとは思う。 だがこの句の海は寺尾俊平の「川柳のユートピアの建設」に呼応しているように思えるし何よりわくわく感に溢れている。 「逃亡」が効いているのだ。何からの逃亡だろう。ここはひとりひとりちがっていい、とにかく逃亡するのだ。で、うっとうしい(ら)が生きてくる。理由はそれぞれみな違うが、ぼく(ら)で逃亡するのである。海も創っちゃうのである。 わくわくするじゃないか。 ということで、川柳のことを考えるとき ぼくはこの句を起点としていきたいと考えている。
句集

#3 オンコリンカス 落合魯忠第一句集

秋サケの産卵の様子はテレビで目にした人も多いだろう。 忌を嫌うテレビで見てもサケの産卵は感動的である。そしてその後の運命も。 作者が目にしたものは演出されたテレビの世界ではなく、生々しい現実のオンコリンカスの生涯である。 儚きものの生の憧れと死を恐れない畏怖がこの句集の太い動線となっている。
今日の川柳

#1 蜘蛛男が繋ぐ the end の余韻 月波与生

毎日川柳ということで、これから(ほぼ)毎日、川柳を一句選んで感想を書いていく。 最初は自句を選んだ。今後自分の句を選ぶことはないだろうから。 蜘蛛男は江戸川乱歩を思い出す人もいるだろうが、この蜘蛛男は仮面ライダーのほう。 仮面ライダーの1回目の怪人が蜘蛛男。 初回の仮面ライダーの映像は小学校低学年の自分には結構衝撃的であった。
句集

#2 借景 永末恵子第三句集

著者   末永恵子  発行所  航跡社 発行日  1999年4月4日 プロフィール(句集発行時点のもの) 1954年  広島生まれ 1989年7月  同人誌『白燕』入会 1993年4月 『白燕』退会 以降無所属 著書  (句集発行時点のもの) 1989年9月  歌集『くるる』 1991年8月  第一句集『発色』 1994年12月  第二句集『留守』 1999年3月 第三句集『借景』
句集

5・7・5作品集「Picnic」6号発行

野間幸恵さんが発行する「Picnic」も6号になりました。 今回は、あみこうへいさんが『5・7・5を企む「Picnic」』を書いています。 「…今更だが、五七五形式は跋行的とも言える形をしている。リズム的にもその短さにおいても何かを喪失し続けているようにも思われる。 ところが面白いことに、このことが逆に見えないもの、手から零れかねないものを絡め取るという作用を言葉にもたらしている。とにかくそれを思うところから始めよう。」  (5・7・5を企む「Picnic」 あみこうへい)
川柳のいま

#1 文学フリマ盛岡と日川協と公募川柳~川柳の話

これからほぼ毎週、川柳について1週間に起きたことの振り返りと、来週のイベントや予定などについて書いていきます。本来はYouTubeチャンネルのスクリプトなのですが、本ブログが軌道に乗るまで(収益化できるまで)YouTubeは始めずブログに専念していくつもりなので、スクリプトだけ毎週公開していきます。自分の身の回りの話題だけでなく、川柳を広く捉え偏りのないレポートにしていくつもりです。よろしくお願いいたします。
句会

川柳発祥の日(8月25日)を祝う会

今年(2022年)は慶紀逸没後260年。 川柳が単なる万句合興行に留まらず他の雑俳から分かれて文芸になったのは、慶紀逸編の『誹諧武玉川』からといわれている。これを手本にしたのが『誹風柳多留』であり、これは句の見本としてその後の多くの川柳作者のテキストとなった。『誹諧武玉川』が世に出なければ『誹風柳多留』の誕生はなく、文芸としての川柳はなかったかもしれない。
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