#5 雨の音 確かなレとか君のファとか 高橋由美

今日の川柳
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雨が降っている。
という情景ではなく「雨音」としているので、作者はこの句の「音を聞いてくれ」といっているのである。
なので音を聴いて読んでいこう。

確かな「レ」、何だろう。
レはレモンのレ、レの音で始まる歌だろうか?
ということで調べる。
ほう、「君が代」が「レ」から始まり「レ」で終わる歌らしい。
これはこれで面白いし、確かな「レ」なのだけと、多分違うだろう。
ということで却下。

しょうがないから最初に戻る。
最初に「雨の音」とあるから、君とぼく(勝手にふたりきり)で聴いている雨音が「レ」音に聴こえるということにしよう。
すると何故「ド」、「ミ」、「ソ」じゃないのだろうと疑問が湧く。

それはドミソだと感情が落ち着いてしまうから。
ピアノで「起立、礼、着席」を合図する音があるがその起立と着席が「ドミソ」の和音である。
句は「レ」なので、もっとざわついた雨音だ。
大雨になる予兆かもしれない音
それが確かな「レ」で、ふたりはその音を聴いている。

で、ここで君の「ファ」。
これは不協和音を暗示させている、ということでいいだろう。
不協和音の中でも最強なのが「ファ」と「シ」を重ねた音。
「音楽の悪魔」と称されているらしい。(Wikipedia)
「ファとか」と「とか」を付けて「シ(死)」を引っ張りだそうとしてるのがこの句の周到なところ。
となると「レとか」、のとかは「ラ」音ということになる。
ちなみに「ラ」音はラッセル音ともいい、呼吸音のノイズを指す。

と、読んだが聴こえるのは雨の音だけである。
それがこの句の一番怖いところかも知れない。

  雨の音 確かなレとか君のファとか 高橋由美  (川柳木馬第172号 2022・春)



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