さみしい夜の句会報 第108号(2023.3.12-2023.3.19)
第108回の参加者は95名でした。ありがとうございました。参加された方の1作品以上を掲載しました。掲載のない方、誤字脱字等ありましたらDMにてご指摘下さい。
川柳ではよく「面白い選者には面白い句が集まる」いいます。大会で「いい句が少なくて数を取るのが大変だった」などという選者の声を聞くことがありますが、それは選者が面白くない選をするか、選者自体が面白くないかのどちらです。最近の川柳は面白くない、と感じている方は先ず自分が面白がって川柳をやっているかどうか確認してみては。
◆ 参加者(95名)
うめたかな、萩原 アオイ、Take、おかもとかも、石原とつき、太代祐一、しまねこくん、秋鹿町、小沢史、西脇祥貴、嶋村らぴ、む~みんママ、屑乃ハコ、霧島あきら、片羽anju 雲雀、saku、おひたし中田、futuro、元さん、凪ちひろ、西沢葉火、海馬、とるばどーる、夜間戦闘、しろとも、藤井皐、弌定住佳、馬勝、上崎、たろりずむ。菊池洋勝、みさきゆう、鷺沼くぬぎ、くさか、花野玖、何となく短歌、透影弦、のんのん、ぱさ、水の眠り、みおうたかふみ、元さん、みくたん、ǝǝɯouɐ、さー、Tomoko、Ryu_sen、雪の空𝒮𝒪ℛ𝒜、涼閑、水の眠り、雷(らい)、こたろう、日下 昊、石川聡、モンモン、かのん、鴨川ねぎ、蔭一郎、水也、みくたん、Nichtraucherchen、和泉明月子、もゆら、えみ、山田真佐明、海月漂、上峰子、ひなとと。、ひとつぶ、KBLib、鍛冶師、小松 百合華、星野響、ゆりのはなこ、思雨(スイ)、まつりぺきん、mine、影薄ネキ直美、高良俊礼、輪井ゆう、おはな、秋鹿町、Tatsuo Kanase、月硝子、鷹緒、抹茶金魚、みっきい、天やん、宮坂変哲、東こころ、ついうた、スキンヘッドカメラ岡本、ツマモヨコ、紅志野パワーみのり、月波与生
◆ 7・7、5・7・5 (川柳・俳句)
足枷の足ゆびに散る夕ざくら 海馬
メランコリー・衒学・メリーゴーランド 海馬
残業の悲しみだけは個人蔵 みおうたかふみ
背鰭から左が海で右は雨 西沢葉火
雲梯をつかみそこねるいいくらし 西脇祥貴
骨格が良いな 丸揚げにしたいな のんのん
バッテリーで選ぶ乗り換え案 水の眠り
かほりたつ韮の根元に蟻の来る 屑乃ハコ
恋人がいるのに地動説ですか 蔭一郎
濁点の酔いが足りない昼下がり 西脇祥貴
<持ち物>のマスクを二重線で消す さー
電波法上@は春の水 Ryu_sen
出産に立ち会わされてしやぼん玉 しまねこくん
引き分けを挟んで十二個のミモザ しまねこくん
終電をいつか詩になる距離感で 上崎
この国の体温として暮らしてる おかもとかも
とりあえず鏡にだけは打ち明ける おかもとかも
廃屋で斉藤工匂いたつ 水の眠り
同罪にしたくて針を刺し直す のんのん
間違えて硝子の爪を切っている くさか
出しやばつて来いよ三色菫なら しまねこくん
ママレモン薄めて苦いしゃぼん玉 鷺沼くぬぎ
白菜の水だけで炊く魚かな 菊池洋勝
保健室の鍵が閉まっていて怖い たろりずむ
戦争が廊下走つて叱られた たろりずむ
やわらかな鳥居を心臓に建てる 上崎
神様が神だと名乗る電話口 しろとも
右折してまだ心臓を抜け出せず 秋鹿町
桜がここに落ちるから物理学 夜間戦闘
主語からの切った張ったに建つ遺跡 高良俊礼
素早さの国であなたと待ち合わせ 太代祐一
ぴかぴかのいちごスプーンで掬う父 小沢史
ゼウスの子だけで貸し切る夜行バス 霧島あきら
眠れない眼をブルーライトで焼いている saku
やさしそう知らない家の下向きの花 藤井皐
君が居るただそれだけで日曜日 弌定住佳
朧夜に虚無を遊ばす肉の檻 馬勝
こもれびや春の妖精さんざめき 花野玖
雨模様 お口の中も 飴模様 みくたん
メロディは四季折々に開く花 ǝǝɯouɐ
連翹の二つ三つなど咲き初めぬ Tomoko
胸を抱き駅のベンチに影ひとつ(涼閑)
胸を抱き駅のベンチに影ひとつ 涼閑
ボロしか出そうのない口閉じ 雷
連翹やベンチ湧き立つノーアウト こたろう
ケムトレイル春はこれからと入彼岸 日下昊
あなたも笑って鍋の韮の鮮やか 石川聡
ひとりでも 柔く連なる ミモザの黄 かのん
春風にほろほろ崩る我が心臓 鴨川ねぎ
大谷君 今日も待ってる ホームラン みくたん
ことばは届かないまま夫婦でいる 和泉明月子
ねえここで命の水踊りしてよ えみ
闇ダレでハンバーガーを春めかし 山田真佐明
巡礼の道を進むは猫ばかり 海月漂
ん寄りにいますラナンキュラスより 上峰子
春の夜の闇の深さに我を忘れる KBLib
白鳥も詩的飛躍も北帰行 星野響
手を離しても大丈夫 君は卒業 思雨
雨垂れは少し頭が痛いです まつりぺきん
夜の中ふとすれ違う沈丁花 輪井ゆう
落ちましたよと差し出される踝 秋鹿町
屋根裏のハイジのベットなら寝れる Tatsuo Kanase
温かな便座に座り国呪う 月硝子
アイロンかければ流石に気づく痣 抹茶金魚
さみしいと伝えられないさみしさよ みっきい
鳥帰る午前五時発どこか行き 天やん
恋人の声艷めいて春の嘘 東こころ
ガラパゴスケイタイ略し黄水仙 月波与生
◆ 5・7・5・7・7(短歌)
ぽっぽるぽぽっぽるぽると鳴いている名も無き鳥よ名付けられるな みさきゆう
思ってた味と全然違ってた幸福なのも気のせいだった mine
枯れ木に花を咲かせたら海に青を戻しましょう 朽ちた大地に モンモン
ひとつだけなかまはずれがありますと問題文はさらりと告げて たろりずむ
あんなことやこんなこともできますと慣れた感じで来るドラえもん たろりずむ
あさがくるまえにないふをふりあげてだいやもんどをたたききるゆめ ひとつぶ
まだ上手く泳げないから沈んでく好きな言葉を欲張りすぎて ひなとと。
大江戸線よりも深い傷なんてないと思っていた若いころ 萩原 アオイ
何者にもなれぬままで夜走る苺ショートの祝福よあれ おひたし中田
所在不明 経路検索できぬ駅行き過ぎてからそれと知る駅 何となく短歌
魂を抜かれるという迷信のありて組閣の記念撮影 たろりずむ
そんなもんなんぼあってもいいですよ窓際の猫、助手席の犬 おひたし中田
シガレットガム「その場しのぎよね」だから?「血液型、教えてよ」 石原とつき
小舟でもネーミングライツ持っている未来の子どもは僕を知らない うめたかな
医者が言う食べ過ぎちゃだめですよ物も買えずに何が楽しい? Take
現実の海をキレイに切り取ったブルーライトに恋をしたのだ 嶋村らぴ
久方ぶりにあったあの人は照れたように若々しい!と呟いた、、。 む~みんママ
子守歌が途切れた夜どうせまた声を殺して泣くテディベア片羽雲雀
不条理の苦しき日々を嘆くより闇から逃げず未来へ向かう future
目もくらむネオンライトの眩しさと視線が戻りそこにはいない 元さん
短歌などつぶやいてみてどうするの言葉綴るの好きなんだぼくら 凪ちひろ
赦されるとは思わない過ちをあなたは何も咎めたりせず とるばどーる
寝れぬ夜を照らす月さえ朧気で時の流れも引き延ばされて 透影 弦
しつこゝろもてすにあふくよのそらをあらしすきゆくかせもおもひも ぱさ
大きめのブレザー袖を折り返す昔は芋を詰めていた君 さー
裂傷に塩とたらふく酒を浴び死んだ目玉と生きるゼラチン 雪の空𝒮𝒪ℛ𝒜
ねむれない夜にベッドの上でみる、みずうみには赤いラメが舞う 水也
いつもより開花予報が早いのは気候変動不吉な知らせ Nichtraucherchen
はらがなる夜中のテレビ飯テロに我慢できずにチョコレートを口にする もゆら
寂しさが 会う喜びを 保つコツ孤独は人を 甘くする塩 鍛冶師
蓮根の穴からギュッと溢れ出るひき肉だけが友達だった 小松 百合華
朧夜にお父ちゃんから万引きの仕方を習う僕は5才児 ゆりのはなこ
桜咲くただ一輪に期待こめ華やかさの裏流す涙も 影薄ネキ直美
欲望を枯らしたくて呑み込んだ涙を海に返すときが来た おはな
春の雨はか細く白くどれも皆断ち切られた運命なのだ 鷹緒
失恋の歌が心に沁みてきてあなたのことを思い出してる 宮坂変哲
◆ 詩
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◆ 作品評から
やわらかな鳥居を心臓に建てる 上崎
~さ・さ・り・ま・す……!!! 本来やわらかい心臓をすぐそばに置きつつ、鳥居の方をやわらかくしてるからちゃんとやわらかいんでしょうか。硬さの対象物を置いて、立てる。。。そして「建てる」。立てるでなく。人工のみなさんの汗まで見えるようです。(西脇祥貴)
甘エビの寿司に跨がる無免許で 霧島あきら
~「無免許で」が可愛らしい。この可愛らしさが寿司ネタの「甘エビ」とじょうずに響き合っている。(月波与生)
大江戸線よりも深い傷なんてないと思っていた若いころ 萩原 アオイ
~すごく良いです!(ついうた)
背鰭から左が海で右は雨 西沢葉火
~好きです(小沢史)
AIはきっとあなたが好きだからまず小指から食べるのだろう 蔭一郎
~自分の人格を模倣したAIが目の前に現れたら初めて自分の声を録音機で聞いたときの何十倍も不快だろうな。死にたくなるくらい。(月波与生)
お茶漬けはお茶目線だと苦情あり 霧島あきら
~「お茶目線」いいですね。おもてなし目線というか。それでも苦情がある現代、「お茶漬け」すら味わえません。(月波与生)
戦争が廊下走つて叱られた たろりずむ
~僕俳句わからないですけど、なんかすごいいいと思いました!!(スキンヘッドカメラ岡本)
あんなことやこんなこともできますと慣れた感じで来るドラえもん たろりずむ
~す、すきです!「慣れている」とかじゃなくて「慣れた感じで来る」のが臨場感ありますね(ツマモヨコ)
~面白い、好き。。(紅志野パワーみのり)
とりあえず鏡にだけは打ち明ける おかもとかも
~誰もわかってくれないし、自分だって自分のことなんてわからないような気がします。でも、それでも、思いを言葉にしてみることに、意味はあると思うのです、とりあえず。(まつりぺきん)
「盲腸にルビふってみたの」なんて?「“住めば都”。ギリギリセーフかな」体育館裏 石原とつき
~石原とつきさんの作品はいつも会話しているが嚙み合っていない。これはギリギリセーフらしいがなんのこっちゃである。(月波与生)
指先に砂漠の柔らかさが見える 藤井皐
~「砂漠の柔らかさ」を予感させるものが希望めいて良い。それが「見える」とはなんと美しいこと。(月波与生)