UnsplashのMaria Lupanが撮影した写真
さみしい夜の句会報 第174号(2024.6.16-2024.6.23)
第174回の参加者67名でした。ありがとうございました。参加された方の1作品以上を掲載しました。掲載のない方、誤字脱字等ありましたらDMにてご指摘下さい。投句はテキストにてお願いします。テキスト以外の投句は週報に反映しませんのでご注意願います。
小旅行で下北半島へ行って来ました。数十年ぶりに訪れた恐山はかつて寺山修司が映画「田園に死す」で撮った風景が想像できないくらいに変わっていました。いや寺山が切り取った風景は彼の演出によるもので恐山は昔から変わっていなかったのかもしれません。そんなことを考えながらの仕舞い旅「下北半島編」でした。
◆ 参加者(67名)
平松泥沸、しまねこくん、岡村知昭、りゅうせん、桑原雑、はゆき咲くら、帰ってきた笛地静恵、syusyu、靈夢、西脇祥貴、石川聡、片羽雲雀、えみ、遼旅、クイスケ、鷹橋ねい、東こころ、水の眠り、花野玖、石原とつき、西沢葉火、古城エッ、輪井ゆう、辻恵太、何となく短歌、みさきゆう、汐田大輝、菊池洋勝、ハッカ飴、さんそ、酔名、しゅがお、まつりぺきん、蔭一郎、胡椒 黒、松柏木、佐竹紫円、みずほ、ダリア220、上崎、小沢史、おかもとかも、太代祐一、徳道かづみ、松菊梅、梓川葉、雷(らい)、かれん、ひうま、松柏木、鮨田わさび、メタル麺、深名、もりや、朝森たけ、ユミヨシ、千春、しろとも、涼閑、もゆら、川合大祐、やーま、母ちゃん、ポッキー(山口絢子)、Ricca_Takahashi、外村ぽこ、月波与生
◆ 川柳・俳句
父の癌ひかりの中の苔の数 千春
先生が試験に出すと言つた虹 しまねこくん
殻付きの雨がざくざく落ちる梅雨 しまねこくん
日傘つて分かつてゐても刺されさう しまねこくん
各論に分かれてゐてもなお西瓜 しまねこくん
シェフの気まぐれ不死鳥のパフェ クイスケ
荻窪を三葉虫で埋め尽くす 汐田大輝
知事室のどの柱にも藁人形 汐田大輝
予報士の豆の花から天気図へ 菊池洋勝
梅雨闇や廊下の奥に能の面 帰ってきた笛地静恵
原作の人の出てこぬ第一章 雷
体温がギターソロより高い人 おかもとかも
桜桃や血管だけは褒められる 小沢史
窓あけて夏至とわたしをいれかえる 蔭一郎
痩せたけどキリンには乗れそうもなく 岡村知昭
三日月を纏って上手くなる逢瀬 東こころ
繋がった夜もわすれてチロルチョコ 東こころ
どの嘘も狐火となり燃える都市 鷹橋ねい
目白鳴く句点打つ場に迷ひけり syusyu
ジャンク品ひとり笑いも三年目 りゅうせん
*
八卦よい のこったひとでカラオケ行こ! 平松泥沸
国立の6月の雨もういないきみの傘だけ乾いてる 桑原雑
片頭痛 癒し慰め 立葵 靈夢
終曲に骨を貸す中島みゆき 西脇祥貴
帯!帯が~オビワン家の美 石川聡
雨が降る前に指輪をお直しへ えみ
ヨーゼフが近づいてくるカタツムリ 宮坂変哲
人肌より手あつくなるやも地球 遼旅
薄荷刈けふ成人となりし子と 花野玖
10割る3のアマリリス 西沢葉火
暮らしの底から煮こごりを掻き出す 輪井ゆう
カニ歩き急いでいるのよ島の夏至 しゅがお
電源がはずれた少し泣けてきた まつりぺきん
馬鹿を見ることを知りつつ吐けぬ嘘 佐竹紫円
性的に好みのあのひと川蜻蛉 ダリア220
ここは底 明滅すればすくわれる 上崎
今すぐに消滅都市のかき氷 太代祐一
夏至タルト崩壊の夕べひとくち 片羽雲雀
あの頃の君とは違う君と飲む 徳道かづみ
睨んでないよ目が死んでんだ 松菊梅
雷鳥に波があるわけないでしょう かれん
どの毒をつかって国を統べようか ひうま
さくらんぼのお尻はわれていません 松柏木
すみません今日も生きます桜桃忌 しろとも
裏側を見せない月に語らせる 涼閑
*
記憶とはランゲルハンス島の鳥 与生 月波与生
◆ 短歌
みんなで写真撮ろうよのそのみんなの中にぼくはいなかった もりや
玉子かけご飯の眩しい黄色より垂らす醤油のような明朝 ユミヨシ
真昼の月を忘れては三十日月の分だけ浮かぶ「らしく」ないもの メタル麺
片隅に古ぼけた椅子をコトリ置く居場所を見つけ生きてゆくこと みさきゆう
スカートの中には鱗これからも向かうところは自分で決める みさきゆう
ひまわりの花弁を瞳にのせてみる夏の準備をしているつもり 胡椒 黒
優しいと要約されたわたくしの深緑の淵さざ波がたつ 水の眠り
窓際のオレはかつては5人抜きマラドーナとはだれもしらない 水の眠り
*
ちょっとずつ氷抹茶が増えてゆき今年の夏を買い占めてゆく はゆき咲くら
因果応報は「雨、しつこいよね」上カルビは失敬 石原とつき
お互いの堕獄の歩み知っていておまけに傷の場所も知ってる 古城えつ
人生を やり直すなら あの日から思い出すたび 箸が止まりぬ 辻恵太
世の中に三歩後れて付いてゆく三つ指付いて暇を告げる 何となく短歌
「みみかして…ままだいすき」をしてくれた思い出だけで1000年生きる ハッカ飴
屋根上の月があふれて照らすからレース越しにも部屋がまばゆい さんそ
酔うことのない飲み会では壁の花千ベロ以外に呼ぶ者の無く 酔名
祈るように嚥下禁を破り手酌空の白みに追い抜かれたい みずほ
電源のコードが抜かれることのないモバイルPCは僕に似て ユミヨシ
背中から優しく抱かれていたような気がしたたぶん夢で会えてた 梓川葉
眠れない深夜3時の絶望を大きくしたら「大惨事」になる 鮨田わさび
うにゃーふにゃーとこんにゃくになるために眠剤の機嫌をとる最中 深名
10年後に会おうとか思ったけれどそーしたら君も僕も10年後のままだった もりや
あんなのは別格なんて言い訳し無視をするのは簡単だけど 朝森たけ
◆ 詩・短文
雨上がりの匂い
窓を開けて
部屋に導く
ひんやりとした風が
おじゃましますと
するりと入り込む
雨上がりの匂いを
体に巻きつけて
静かに目を閉じる(もゆら)
◆ 作品評から
帯!帯が~オビワン家の美 石川聡
~ありがとうございます。素敵な更紗柄の綿着物で仕立てた方がかなりのお洒落上級者と思われます。じつは結び方じたいは簡単で(小声)柔らかい帯だったので綺麗にまとまりました。フォースじゃ☆笑(片羽 雲雀)
各論に分かれてゐてもなお西瓜 しまねこくん
~総論賛成。各論反対。激しい議論に、皆の心が分かれていても、休憩にスイカが出れば、ひとつにもどる。夏の会議室の光景。(帰ってきた笛地静恵)
因果応報は「雨、しつこいよね」上カルビは失敬 石原とつき
~約束の地にやきにくのくりかえし(川合大祐)
片隅に古ぼけた椅子をコトリ置く居場所を見つけ生きてゆくこと みさきゆう
スカートの中には鱗これからも向かうところは自分で決める みさきゆう
~拝見しました!コトリがとくに好きです!おめでとうございます(はゆき咲くら)
~みさきゆうさん、こんばんは。NHK短歌、おめでとうございます。二首も掲載されたんですね!一首目はコトリというオノマトペがすごくいいですね!下の句は深いなあと思いました。居場所、大事ですよね。二首目は鱗が個性的ですね!その後に強い決意が続いていて、ちょっとかっこいいです(やーま)
~ゆうさん、おめでとう。早く、言いたかったー。素敵な2首、両方大好きです。テキストで見つけてから、私も嬉しくて。良いお歌だわ〜(母ちゃん)
優しいと要約されたわたくしの深緑の淵さざ波がたつ 水の眠り
~水の眠りさん、薔薇おめでとうございます(*´∇`*)優しいを要約される、という表現の巧みさ、また深緑という美しい色がざわめく心の内の不穏さと主体の魅力を表していて素晴らしいと思いました。色を使った比喩を自分も詠みたいと思いつつなかなかできておらず、勉強になります。(ポッキー(山口絢子))
さくらんぼのお尻はわれていません 松柏木
~ちょっとした気づき。あえて、こう指摘されると、妙におかしいです。そして、背景に、橋本治の『桃尻娘』が、あるのではないでしょうか。桃は割れていますから。(帰ってきた笛地静恵)
屋根上の月があふれて照らすからレース越しにも部屋がまばゆい さんそ
~素敵(Ricca_Takahashi)
性的に好みのあのひと川蜻蛉 ダリア220
~ただ「好み」ではなくて、「性的に」。肉の欲望を抱いて。黒く日焼けした、しなやかな肢体。赤いシャツに短パンぐらいの軽装。川べりのBBQか。「あの人」と近づきになりたい。しかし、心身の距離が遠いのだ。近寄ると飛んで行ってしまう。せつない。(帰ってきた笛地静恵)
窓際のオレはかつては5人抜きマラドーナとはだれもしらない 水の眠り
~マラドーナ本人として読んでも転生として読んでも面白いです!いつか神の手が発動するのだろうか…(外村ぽこ)
世の中に三歩後れて付いてゆく三つ指付いて暇を告げる 何となく短歌
~いいですねえ。昭和生まれの賢い女性への讃歌でしょうか。けして出しゃばらない。慎ましい。けれども、彼女なりに一貫した、気品のある人生。上の句と下の句の最期の間に、長い人生の時が流れ。一首に長い時間をこめるのは難しい。茨木のり子さんの詩のよう。秀歌。(帰ってきた笛地静恵)