UnsplashのRodion Kutsaievが撮影した写真
さみしい夜の句会報 第173号(2024.6.9-2024.6.16)
第173回の参加者58名でした。ありがとうございました。参加された方の1作品以上を掲載しました。掲載のない方、誤字脱字等ありましたらDMにてご指摘下さい。投句はテキストにてお願いします。テキスト以外の投句は週報に反映しませんのでご注意願います。
合同作品集『さみしい夜の句会』3集、手に取っていただけてるでしょうか。自選20句(首)とエッセイ(任意)が無料で掲載でき句集はAmazon他で販売します。作品を世に問うチャンス(場)を無料で提供しているのですが、こんな場所は自分が川柳を書き始めた頃は考えられなかったことです。メルマガといい昔の自分が欲しかったことを今の自分がやっている、そんな感じです。
◆ 参加者(58名)
しまねこくん、花野玖、石川聡、帰ってきた笛地静恵、クイスケ、蔭一郎、何となく短歌、ハッカ飴、syusyu、佐竹紫円、胡椒 黒、西脇祥貴、りんか、靈夢、souko守宮、雷(らい)、黒木九、水の眠り、桑原雑、西沢葉火、ユミヨシ、中村マコト、ひうま、もりや、まつりぺきん、KEITA_PASTEL(辻恵太)、月硝子、涼、汐田大輝、しろとも、月立耀、りゅうせん、平松泥沸、菊池洋勝、朝森たけ、はゆき咲くら、池田 突波、おかもとかも、上崎、片羽 雲雀、みさきゆう、蜜、石畑由紀子、流離するおかん時々オクラちゃん桃瀬、ヴたこ だょ、東こころ、うつわ、古城エッ、メタル麺、さんそ、石原とつき、カゲキ・ちゃけぞう、亀山朧、名犬 ぽち、北村灰色、むし、月波与生
◆ 川柳・俳句
シフトダウン戻らぬギアに雨が降る カゲキ・ちゃけぞう
おそろいの半導体でばれている 黒木九
長編で別れ短編集で会う 雷(らい)
ぼくはくま お前は銃で 俺は湯気 平松泥沸
こそばゆい仮面のうらのペンネーム ひうま
飼育だよ眼に濁音が近ければ ひうま
もう行けよモーター駆動なんだろう おかもとかも
二等辺こんなはずじゃなかった系 おかもとかも
スクラップブックに集めていた涙 クイスケ
天日干し紙ヒコーキは烏賊らしく 西沢葉火
ホルモンの脂の透けるお品書き 帰ってきた笛地静恵
新小岩よりも小岩が好きになり 帰ってきた笛地静恵
怪談のあとに隠れる夏布団 帰ってきた笛地静恵
ゆらゆらと百合のゆりかごユーラシア 蔭一郎
匣ひらき麒麟の首が伸び縮み 蔭一郎
う雨うーうー雨うーう雨雨っ 石川聡
ブラジャーを干せばメロンにならんのか しまねこくん
やまびこの五割が夏の遭難者 しまねこくん
海開き山開きして帰る家 しまねこくん
夏の指紋なのに再現性がある 上崎
水茄子がいよいよ傘になりたがる 上崎
ポーランド訛りの雨が降りつづく 汐田大輝
フロッピーからあの時の血が溢れ 石川聡
*
焼酎や味おもひ出すこともなく syusyu
しじゆうから喜寿のソプラノ際立ちぬ 花野玖
星ひとつ蛍袋に閉ぢ込める 佐竹紫円
あがりへ五マス戻る中島みゆき 西脇祥貴
「垢離掻き」で 全裸魅せるは 潔き 靈夢
籤引きで蛙を当てた形見分け souko守宮
笑い声校舎を包むアルミ箔 まつりぺきん
暮六つの昏さと甘さ水羊羹 月硝子
誤作動か暑さで火災警報器 涼
上弦の月はおととい切った爪 しろとも
星屑と空芯菜のマヨ炒め りゅうせん
骨の浮く背中の湿布気触れかな 菊池洋勝
故ありて夜店の店主烏賊を焼く 池田突破
繰り返し滅多にないを炙り出す 雷
鬼百合の涙くちびるで拭って 片羽雲雀
イイネしてくれた貴方は空の上 流離するおかん時々オクラちゃん桃瀬
効率の嘘は吐かない飴細工 みさきゆう
奪っちゃえと声が聞こえて夏が来る 東こころ
自転車で仁王立ちする女学生 うつわ
あたふたをモツ煮込みは電池切れは会得 石原とつき
夜は木や草も、さんそを吸うんだよ さんそ
コトの葉の諂曲模様チャリを抱く 石川聡
*
いも焼酎むっつりすけべ伸び縮み 月波与生
デリヘル嬢と啜る葱のないあさげ 月波与生
◆ 短歌
まどろみにガーデンチェアで聞く夏の始まりの音ききわけながら 水の眠り
フェリーニの8 1/2をみて君の世界にいるふりをする 水の眠り
六月の熱い水気に覆われた駅をざぶんとつめたく洗う 胡椒 黒
しおからい恋をするから体から水が出ていかなくなるんだよ 胡椒 黒
かなしみが消えない時の歌だけは明るくなれと祈って詠むよ 月立耀
あどけないその眼差しに見つめられ今までついた嘘が恥ずかし KEITA_PASTEL
*
無力感あたしがここにいることがだれの救いにすらもならない 何となく短歌
愛という言葉の意味をそっと知る自分で食べない果物を剥く ハッカ飴
ほろりとけ口いっぱいに甘くなるきみに想いをのせる スフレに りんか
たとえ今、常夜灯しかなくたってあのとき君に会えてよかった ユミヨシ
しんでも気づかない悲しまれない人生お疲れ様でした もりや
実家にて暮らした日々を思い出す蛙の声が何処か遠くで 朝森タケ
かりそめの器が一つまた老ゆる今日の私を知れないあなた 蜜
隣には眠る心臓ネジ巻きのプロを探しに旅立つ夜明け ヴたこ だょ
一瞬で弾き飛ばされやって来たこの地に僕は骨をうづめる 古城エッ
あまりにも孤独で暗い君だけが救える町の僕は住人 メタル麺
◆ 詩・短文
不死は無限ですが、人の記憶容量は有限ですから、不死の人の脳は溢れかえる記憶で混濁してしまい、もはや意味をなさぬ言葉をうわ言のように呟きながら、果てのない荒野を徘徊することになるでしょう。(桑原雑)
◆ 作品評から
コトの葉の諂曲模様チャリを抱く 石川聡
~おはようございます。ありがとうございます。「諂曲模様」とは、「媚び、へつらうさま」だとありましたが…(亀山朧)
あの子とはたそがれにしか遊ばない 帰ってきた笛地静恵
~「暮れそうで暮れない黄昏どきは」とあるようにたそがれは人恋しい時間帯らしい。「あの子」というのもなかなか歌謡曲的な呼び方。(月波与生)
海開き山開きして帰る家 しまねこくん
~観音開き姫はじめ(名犬 ぽち)
フェリーニの8 1/2をみて君の世界にいるふりをする 水の眠り
~こんばんは。この映画はアヌーク・エーメが無茶かっこいいんですね。(石原とつき)
~名作を鮮やかに昇華していて良きです。フェリーニの映画も、水の眠りさんのオリジナル作品も本当に好きだし、素晴らしいと思います(北村灰色)
いも焼酎むっつりすけべ伸び縮み 月波与生
~いいなあ。アルコールで、妄想が膨れ上がる。伸びる。度数が高すぎる。縮む。お、いい女。伸びる。男連れか。縮む。中年男の屈折した欲望。ホルモン屋に漂う。芋焼酎特有の匂い。「むっつりすけべ」が昭和。笑いました。状況の設定がうまい。(帰ってきた笛地静恵)
元気だよ頑張ってるよ花じゃないから咲いたりはできないけども 何となく短歌
~「花じゃないから~」の後半が前略おふくろさまみたいで泣ける。「咲いたりはできないけども」は定型にすべき。(月波与生)
ゆうぐれを甘味処でゆれてます 石川聡
~「を」と書いたセンスをどう読むか。「は」「の」も入るところに「を」と書いた作者の狙いは当たっているか。(月波与生)
実家にて暮らした日々を思い出す蛙の声が何処か遠くで 朝森タケ
~大海を知った蛙は実家にてビール飲みつつつまみを齧る(むし)
栞 胸糞映画だけ観る淫売 クイスケ
~〈修身にない孝行で淫売婦 鶴彬〉でしたか。探せばもっとありそうな。「栞」を独立させたので個々の言葉に切れが増した。(月波与生)
デリヘル嬢と啜る葱のないあさげ 月波与生
~お、いいですねえ。デリヘルの女の子と、意気投合した。お泊りしてしまった。駅の立ち食いそばで朝食。今日は、予定が空いているという。これから近間の観光地へ小旅行。先のことを考えて、いつものネギは控える。相当な金額を使っている。もはや、好きになっているのだ。(帰ってきた笛地静恵)