さみしい夜の句会報 第94号(2022.12.4-2022.12.11)
第94回の参加者は83名でした。ありがとうございました。参加された方の1作品以上を掲載しました。掲載のない方、誤字脱字等ありましたらDMにてご指摘下さい。
合同句集第2集はおかげさまで第1集を超える方から参加連絡をいただきました。少し早いですが締め切らせていただきます。ありがとうございました。句集発行は2023年春を予定しております。第1集同様句集はAmazonにて販売いたします。ご期待ください。
◆ 参加者(83名)
mugwort、ゆりのはなこ、しまねこくん、たろりずむ、hyuutoppa、石川聡、風池陽一、みさきゆう、徳道かづみ、syusyu、太代祐一、えのきさん、水の眠り、とわさき芽ぐみ、石原とつき、西脇祥貴、元さん、菊池洋勝、おかもとかも、鴨川ねぎ、海馬、のこりか庵、花野玖、岡村知昭、野々原 蝶子、あ、雲上晴也、宮坂変哲、蔭一郎、さー、藤井皐、木野清瀬、む~みんママ、高良俊礼、弌定住佳、まつりぺきん、かのん☆後半人生の途中、西沢葉火、しろとも、雪の空𝒮𝒪ℛ𝒜、雪上牡丹餅、Ryu_sen、雷(らい)、汐田大輝、夜間戦闘、kubotahiroko、澱粉、ともなう、電車侍、ぱさ、流天紳音(るてしお)、小松 百合華、なじゅな、ちゅんすけ、桔梗菫、涼閑、天やん、たかひさ、山田小太郎、みんみん、上峰子、さこ(砂狐)、森内詩紋、ESG、小沢史、星野響、輪井ゆう、蜜、金瀬達雄、春汰、ぽっぽ・水須ゆき子、人見弐一、マッキントッシュ、千春、crazy lover、ひなとと。、東こころ、日月星香、棚場田敦也、楢崎進弘、小羽、りょうちゃん、月波与生
◆ 7・7詩、5・7・5詩
またひとつ秘密が増えて冬の月 東こころ
生活をカルトと読んで赤い林檎 西脇祥貴
感動のけつ毛抜く中島みゆき 西脇祥貴
靴紐の影に寄り添うように泣く とわさき芽ぐみ
胃腸薬的な囲碁将棋部顧問 たろりずむ
だんだんと鍵が重たくなり独り 小沢史
棒読みにしたエサ代がかかるので 海馬
喫水がひたひた触るくちびるに 石川聡
一線を越えて貴方は氷点下 さこ
大雪の経理もこもこやさぐれる さこ
アドヴェント抽斗に小さな星座 星野響
焼芋や明るい記事で包みたる 菊池洋勝
車椅子の目線で被す冬帽子 菊池洋勝
防犯カメラの男や落葉散る 菊池洋勝
空港にたどり着けない平家蟹 岡村知昭
手袋にMiss Misery を詰めて行く おかもとかも
筆談が視界のかすむまでつづく 海馬
洗つたらおでんと分からない竹輪 しまねこくん
しりとりがんから始まる開戦日 しまねこくん
港区のドリンクバーに養命酒 蔭一郎
君の内輪差とってもキュートだね 太代祐一
原宿へ舟で行きたい十二月 蔭一郎
実写版般若心経への苦情 岡村知昭
マフラーを巻いた残りが顔らしい しまねこくん
おしぼりと一緒に羽化した蝉だった おかもとかも
ドンキでは買えないほうの月明かり とわさき芽ぐみ
手袋も浮いてコインランドリー とわさき芽ぐみ
駱駝から洗濯物の滝が降る 千春
『センセイの鞄』草臥る漱石忌 花野玖
クリスマスツリーに干されたる靴下 mugwort
思い出を並べて泣いたクリスマス ゆりのはなこ
悲しみも滑稽も煮る十二月 hyuutoppa
嘘ひとつきらりとついて冬の朝 徳道かづみ
雪嶺や天の戯れ降り来る syusyu
枯園(かれその)にフジコ・ヘミング立ち尽くす 水の眠り
近寄るな万年床は禁足地 鴨川ねぎ
廃屋の更地になりて黄の蜜柑 のこりか庵
生活を知らない人よ白障子 あ
暮早し軽めの風と口笛の口 雲上晴也
缶コーヒー両手で挟む冬銀河 宮坂変哲
わかもののりんちをふなむしはみてる 藤井皐
妓と云ふ一文字に縛られて椿 木野清瀬
何かしらの足枷手枷で生きていく む~みんママ
残照に波が囁く名は水夫 高良俊礼
待つでなく待たせるでなく雪の影 弌定住佳
金曜に忘れてきたの薬指 まつりぺきん
口で謳う平和のなんと虚しきか 鴨川ねぎ
空洞を埋めんとさがす寒昴 かのん
すきっぱの隙間からイエス降臨 しろとも
私も一件苦情入れよかな 雪上牡丹餅
全方位外交だからメロンパン Ryu_sen
しばらくは白鳥だったアヒルのオブジェ 雷
湯豆腐の崩るるようにけつまずく 汐田大輝
建前をクリーニングに出したまま kubotahiroko
満月の 世を照らしけり 開戦日 電車侍
雪が降る寂しさ積もる静もれる 流天
わたくしの空をゆっくり齧る紙魚 ちゅんすけ
茜色満ちる曙眩して 黎明
日暮には猫の形でいる孤独 涼閑
才能の出涸らしがいて鏡 天やん
眠れずに痛みにたえる夜半の冬 たかひさ
ビスケット国の儚いエピローグ 西沢葉火
養命酒 4回転半のエンジェルダスター みんみん
手袋が落ちてるここは水の中 上峰子
冬野風 皆南無阿弥陀 皆梵唄 森内詩紋
くちびるに失ひし人の名冬薊 ESG
にくいろの筒から肉にもどりをり 小沢史
日を浴びて微睡むクリスマスツリー 輪井ゆう
火の神の子の水神の雫です 金瀬達雄
夏に浮く砕氷船がごと徒労 人見弐一
告知の夜ポインセチアの緋の無情 マッキントッシュ
照らす月すりガラス越し光る雪 crazy lover
滑子料理を食べたいとごねる子等 日月星香
どうしようもなくてさかさまの乾電池 月波与生
◆ 7・7、5・7・5以外の短詩
HBとHを使う彼女からもらった先の尖った2B 風池陽一
「最悪!」と書いたページを破り捨てるとただ真っ白が待っていたのだ 水の眠り
こくこくと日々機能するコンビニは街の子午線標識となる みさきゆう
言葉より音の途切れた数秒が心動かす銀幕の雪 みさきゆう
これからも凍える雨はふるだろう虹と夜空の傘をあげるよ みさきゆう
パラレルパ ラレルパラレル パラレルパ 世界は廻るねじれて廻る みさきゆう
ツーツーツー 君がいないということを音にされれば余計にさみしく 小松百合華
ぐるぐると紙を縛った針金をじっと見つめるシャープペンシル 蔭一郎
いろいろなひとの手足で鬱蒼としている山を登りつづける 蔭一郎
卵とじにされる覚悟があります少しの熱で固まりきらない 夜間戦闘
寂しいと呟く途端にミルク色の雨、世界が柔らかく死ぬ 野々原 蝶子
失恋を乗り越えてとは云うけれど今日は一歩も外に出てない えのきさん
あまりにお辞儀するとセニョリータ割り箸がいるよ 石原とつき
消えてゆく星が一粒ちからなく夜明けの街のさみしい時間 元さん
細道の奥松ぼっくりの公園で好き勝手する練習してる さー
怒っても許してくれた何度でもそれが終わる日来ると思わず 雪の空𝒮𝒪ℛ𝒜
冷たさに刻まるゝ身の伸はす手の見えぬ宵にも月は猶満つ ぱさ
明日になる直前にふと自己嫌悪に陥りそっと目をつむる 山田小太郎
映画館 エンドロールで席を立つ貴方は早くにこの家を出て 春汰
いま猫が右回転して座ったけど地軸のずれとか関係ないよね ぽっぽ
寝覚めして眦濡らす夢寐の間に抱ける猫は去年身罷りし のこりか庵
湯たんぽを抱えて眠るハリネズミ棘が邪魔して抱き合えない ひなとと。
諦めを枕の下に敷きながら泥に変わって深くへ深く 棚場田敦也
◆ 詩
碧い風 今なお君は そこに居る
僕は思う
風速40mの 疾さと一緒に
会いに行けたら。(澱粉)
開戦日とジョンレノンの命日と
今は一緒に歳を重ねて行けない
同級生の誕生日は12月8日の満月(ともなう)
何してんだろうな
君も僕も
駅前のカフェでセットのコーヒーの200円にためらって
家や車には到底届かない
欲が嫌いだ(なじゅな)
そんな真上から私を見下ろさないでよ
ひとりぽっちだって嗤ってるの
名前の通り冷たいのね日が変われば満ち満ちて
もっと冷えた月光で見下ろすつもりね
甘いわよ
私はひとりぽっちを凍えた指で愉しんでるのよ
私はひとりぽっちをたまに手に入れられるのよ
羨ましいでしょ (蜜)
◆ 作品評から
forget‐me‐not 尾崎より年下だった時もあったんだよな しろとも
~尾崎は尾崎豊のことだろうか。享年27歳。存命であれば今年57歳。30年経って尾崎とは違うかけがえのない物語をつくれただどうか考えている。(月波与生)
感動のけつ毛抜く中島みゆき 西脇祥貴
~中卒で町工場に就職したばかりのころ「楢崎、変なこと聞くけど肛門に毛ェ生えてるか?」と聞かれ「うん」と答えると安堵している先輩のすがたがあった。(楢崎進弘)
いろいろなひとの手足で鬱蒼としている山を登りつづける 蔭一郎
~不穏さと酷い徒労、果たして登ったところで本当に頂上があるのだろうかという絶望が漂いますね…後味の悪い小説みたいです。蒼の文字がうまくはまっています…蒼、蒼、もう少し考えてみますね。ありがとうございました。(小羽)
どの技も受けきってこそ年の暮 宮坂変哲
~いいなあ、年末らしくて。現実受けきれるかどうかは別にして「受けきる」決意が大事。さて年の暮れ、やり残しを持ち越すかリセットするか、決意しなければならない。(月波与生)
これからも凍える雨はふるだろう虹と夜空の傘をあげるよ みさきゆう
~好きです(森内詩紋)
しりとりがんから始まる開戦日 しまねこくん
~ンゴロンゴロ自然保護区→黒揚羽→敗戦。(楢崎進弘)
防犯カメラの男や落葉散る 菊池洋勝
~防犯カメラの前を行き過ぎる人たち。ちょうど落葉も映り込んでいる。疑いの目で見れば、一枚の葉も不審に思えてくるのだ。無数の人々と、無数の落葉の中にいる、そいつ。(西沢葉火)
わたくしの絶対数がわからない 水須ゆき子
モンキチョウの倍数に甘えてしまった 石原とつき
~数を詠んだ句がふたつ。数とは「ある」ことの証明するであり、わからなくても甘えてしまってもわたくしはここに「ある」。(月波与生)
練乳を吐き出すだけの性行為 菊原綾子
~ドキリとさせる内容で川柳はこういうことを書いてもいいのかと思われる人もいるだろうがいいのである。自分の中の開けにくい扉を川柳の力を借りて開いてみるのもいい。(月波与生)
大雪の経理もこもこやさぐれる さこ
~こんにちは。はじめまして。りょうちゃんと申します。
いい句ですね。また、拝見致します。(りょうちゃん)
キスだった 確かにあれはキスだった 豆腐に唇つけたよなキス 小松 百合華
~「豆腐に唇つけたよな」と言われると今後豆腐を食べる度にこの句を思い出してしまう。「豆腐は健康に良い」というのはそういうことなのだろう。(月波与生)
マサ斎藤だらけの鏡店 石原とつき
~いかつい風貌ながらマサ斎藤についてのエピソードはお人柄が偲ばれるほんわかしたものが多い。鏡店なのでだらけが倍々である。そんな人に囲まれて暮らすのもいいなと思う。(月波与生)
「美人すぎる」は 言い過ぎかもね 電車侍
~「美人すぎる」は美人だし「美味すぎる」も美味しいが過ぎるほどではない。だだ「私にあなたは過ぎだ人です」はその通りの場合が多い。過ぎた人になろう。(月波与生)