基本データ
原作 向田邦子
文 角田光代
絵 西可奈子
発行者 小学館 (1,500円+税)
絵本について (感想)
この絵本は、向田邦子さんのエッセイがベースになっています。
(エッセイはこちらから→「字のないはがき」)
物語は原作とほぼ同じなのに原作とは別な感情が湧き上がってくるとしたら、それは西加奈子さんの絵の力が大きいでしょう。
物語の最初のページは玄関に一家六人の履物(草履)がきれいに並んだ玄関の絵です。
「わたしのかぞくは 六人。きびしくて、おこるとこわいおとうさん。いつも しずかなおかあさん。わたしが いちばん上のこども。下に、おとうと、おおきないもうと、それから ちいさないもうとがいます。」
この言葉も原作にはなく角田光代さんの筆によるものですが、絵はそれを不足なく表現しております。さらにきちんと並んだ草履や鼻緒の色に、厳格な父と子の関係、家族の生活なども想像できる絵となっています。
そしてこの玄関、草履の変化を辿るように物語は進んでいきます。
未読の方のために詳しくは記しませんが、ラストシーンは赤い鼻緒の草履を履いたちいさないもうとの足、そして裸足で飛び出した父の足です。
向田さんの原作「字の書けない妹の丸がだんだん小さくなって…」というエピソードが有名なので、ついその物語を読んでしまいますが、絵本版は原作とは別な切り口でも物語のテーマを語ります。
もちろんこの絵を喚起させたのは角田さんの文であることは間違いありません。
この絵本を紹介した記事
絵本で読むことの大切さ
この絵本は読み聞かせで使用されることが多いようです。戦争を素材にしてますしこのような体験を語り継ぐことはとても大切なことです。
しかし、読み聞かせではせっかくの絵の良さが伝わりにくいでしょう。向田さんの話をなぞっても絵の良さはわからないからです。
毎日忙しい大人のみなさん。絵本なら数分で読むことができます。
1日の終わり、眠る前の数分間を絵本を読みながら絵を感じてください。
1日1冊眠る前に絵本を読み、それが1年続いたら…。
今、想像できる以上に素晴らしい生活を送ることができることでしょう。
絵本を読む生活を始めてみませんか。