さみしい夜の句会報 第129号(2023.8.6-2023.8.13)
第129回の参加者は71名でした。ありがとうございました。参加された方の1作品以上を掲載しました。掲載のない方、誤字脱字等ありましたらDMにてご指摘下さい。何度か書いていますが投句はテキストにてお願いします。テキスト以外の投句は週報に反映しませんのでご注意願います。
川柳をやって何がいいかというとイヤなことはやらなくていいことです。イヤな人には会わなくていいし句会に行きたくなければいかなくていいし大会も義務じゃないので行きたくなかったら行かない。仕事じゃないのでとことんスルーしてもなんの問題もなくむしろ快適な活動(川柳ライフ)ができるところです。もしあなたの周りにあなたの作品を罵倒したりあなたの人格を傷つけてきたりありもしないデマを言いふらしたりする迷惑な川柳人がいるなら遠慮はいりません。ばっさりと切っちゃいましょう。あなたの川柳ライフになんの問題もありません。邪魔なだけです。そしてもし川柳について話したい人が必要なら本句会にいらっしゃい。歓迎します。
◆ 参加者(71名)
海馬、片羽anju 雲雀、石川聡、夏西マグマ、Moon、しまねこくん、何となく短歌、雪上牡丹餅、さー、syusyu、佐竹紫円、やは、凪ちひろ、水の眠り、西脇祥貴、しろとも、元さん、奥かすみ、おかもとかも、萬某、温(ハル)、Tatsuo Kanase、岡村知昭、古城えつ(さるとび)、花野玖、霧雨魔理沙、りゅうせん、西沢葉火、とるばどーる、石原とつき、みさきゆう、汐田大輝、天やん、馬勝、上崎、菊池洋勝、たろりずむ、蜜、もふもふ、輪井ゆう、まつりぺきん、星野響、ハヤカワ、雷(らい)、くらぽー、あやめ、涼閑、比島アルト、うたたね凛、1人用こたつ、森砂季、月硝子、雪夜彗星、しろとも、ATARI934、ひうま、蔭一郎、東こころ、ダリア220、こたろう、赤端 独楽男、梓川葉、水戸 充希、小沢史、白石ポピー、流天、、もん、宮坂変哲、ゆう(かっしー)、川合大祐、月波与生
◆ 7・7、5・7・5 (川柳・俳句)
重力のないときもある秋の風 汐田大輝
電柱が出過ぎた道で蛇になる 雷
永遠に割り勘であれきみとぼく 海馬
ニッポンの夏を擦り込む受信料 海馬
スキャットの終わりにああと吐く手紙 海馬
きれいな手を見せて乗車拒否に合う 海馬
洗濯しても色っぽい 西沢葉火
五章からあとは六時に降って来る 西脇祥貴
人間の顔には興味なくて夏 東こころ
ガチャガチャの森で甥っ子見失う Tatsuo Kanase
しあわせな猫をかじってみる 辛い 岡村知昭
かなかなやようこさんだけ返事して syusyu
家族をつくる マリオネットで まつりぺきん
西瓜西瓜、いつかあなたにあげた脳 上崎
ねり飴に絡まってゆくジギタリス みさきゆう
白く痴るダチュラの下に隠す靴 白石ポピー
靴紐に今日から秋と打ち明ける
コスプレと思へば擬態も苦ではなし 片羽雲雀
指示をだす初めて人を使う奴隷のように 石川聡
ちぃちぃと 小さき恋唄 蝙蝠や Moon
だうしても電話に出てはくれぬ桃 しまねこくん
夕飯のメニュー無人島が浮かぶ 雪上牡丹餅
夏蒲団祖父が居ないと探す犬 さー
とどかない観覧車からはじまった やは
秋に立つ黒雲だけで泣きはせず 水の眠り
違和感にレモンかけてもいいですか おかもとかも
根腐れの向日葵からのあかんべえ 岡村知昭
鳩吹やどこかに鳩の気配して 花野玖
長良川 花火は遠い 母の夢 霧雨魔理沙
色彩の雨に打たれしガラスぺン りゅうせん
ツインテールのカブトガニ 西沢葉火
天使のふりをすると悪魔になってしまう とるばどーる
エスプーマほどける息を食む夜更け みさきゆう
立秋やあの娘に初恋待ちぼうけ 天やん
歩けない蹠に飼ふ守宮かな 菊池洋勝
キャンセルのメールを入れる盆休み もふもふ
さあ祭り無いことにする咳と雨 輪井ゆう
華麗なるがらんどうあり灼かれつつ 星野響
幸せでいてほしいからさようなら ハヤカワ
愛しても愛しても枯野 くらぽー
注文の多きからだを活き〆る 泉水あやめ
まな裏に百合一輪を咲かせ夏 涼閑
カナブン食い逃げしていつもの朝 うたたね凛
金色の三羽が踊り待つ犬歯 森砂季
文革を縦糸に織る軟烟羅 月硝子
遠くまで歩いてきたよ流れ星 雪夜彗星
爽やかに右腕攣つてゐて鼻毛 ひうま
靴紐に今日から秋と打ち明ける 蔭一郎
辛いのは独りだからかな立秋 ダリア220
暑夜の井戸底まで這うや赤蠑螈(いもり) 赤端 独楽男
秋隣ことこと煮込む車椅子 小沢史
風熟れて盆が過ぎれば晩夏かな 流天
海底のサイ覗く単焦点レンズ もん
雷かあなただったか甘い風 かしくらゆう
そうめんの一本の「相手として合格ね」 石原とつき
Its a sunny day 家族のいない家族葬 月波与生
◆ 5・7・5・7・7(短歌)
爺ちゃんは初めましてが多いよね幼き姪がまっすぐ笑う こたろう
いつだってかけがえない日ごまかすなその日の価値は自分が決める 何となく短歌
頭上には数多の星がきらめいてここでは会えないあの人たちも 佐竹紫円
何日も夢見悪くて目が覚めるバクが食べたらお腹壊す系? 凪ちひろ
箱のバニラバー 一本だけ食べたたぶん今年もなにもない夏 しろとも
灼熱の焼けた路面に蜃気楼道標にし追いかけて行く 元さん
青くさいキュウリの匂い 薫風が抜ける畑で祖母ひとり立つ 奥 かすみ
今の僕 過去がなければ成り立たずでも恋だけは悔やむ人生 萬某
空っぽの気持ちを君は鼠蹊部に添わせて泣いてた。赤く脹れて。 夏西マグマ
夕食は言わずもがなの倹約でボリューム重視のお決まりレシピ 古城えつ
魔がささないまでなぞなぞなパントマイムを青い 石原とつき
甲子園がネーミングライツで茜丸どらやき球場になったらやだな たろりずむ
そのままの姿で枯れる紫陽花になりたくないわ蝉うるせぇ 蜜
自堕落に生き延びられたことでした それも一日、明日も一日 比島アルト
私たち終わりが怖く確かめるお互いの奥探り合う日々 ATARI934
最低なひとは開き直っているようで不自然なまでにトイレに長居 梓川葉
張り詰めた空気に割り込む風鈴の妙にうるさく涼しい音色 水戸 充希
私自身私のことがわからないだから私を演じ続ける 宮坂変哲
◆ 詩
妄想の中で帰省した
脳内の
思い出の中では
父も母も生きている (温(ハル))
◆ 作品評から
ニッポンの夏を擦り込む受信料 海馬
~回顧あり、野球あり、花火あり…今日明日あさってはまさにこうなる「ニッポンの夏」。金払って「ニッポン」の自分を確かめる。案外安い金じゃない、なのでもったいないからもっと「ニッポン」を擦りこんでおこうとする貧乏性な私。(岡村知昭)
百歩譲っても生八ツ橋止まり りゅうせん
~八ツ橋(焼き八ツ橋)が本流で生八ツ橋は後発らしい。頑張っても本家には敵わんと読むとあまり面白くない。そもそも京都の人が「百歩譲」るか「止まり」なんて謙遜するか?(月波与生)
海沿いの付箋が特に売れやすい 太代祐一
~「海沿いの付箋」ってなかなかおしゃれ。映画『コクリコ坂から』を思い出したがそういえばヒロインの名前が松崎海であった。それを「海沿いの付箋」だけで喚起させる言葉。(月波与生)
そうめんの一本の「相手として合格ね」 石原とつき
~世界合格して居り 「はつかり」を把えにゆく(川合大祐)
きれいな手を見せて乗車拒否に合う 海馬
~それは多分、泥に塗れた人しか乗れないバス。乗車している客の視線が昏くジロリときれいな手を睨む。手を汚した人間にしか心を許さない生き方もあるのです。(徳道かづみ)
弁当箸忘れ箸のためカップラ買う瞬間に身を灼く太宰治感 石川聡
~太宰治感って、切ない。旅行先で初めて入るコンビニは結構な確率で箸が入っていないけどあれは何感なんだろ。山口瞳感?(月波与生)
あめんぼうかれの破滅を望んでる ダリア220
~破滅を望む彼といかなることがあったのか。そういうことをおくびにも出さず暮らす。殺意が顔に出ないようにあめんぼのようにのほほんと。(月波与生)
矢のように過ぎ去るばかりの毎日をスピードガンで日々計測す 何となく短歌
~これは「スピードガン」を持ってきたのが勝利ですね。時の流れをスピードガンで測るというのは盲点でした。(月波与生)
対岸と時差があるのね、百日紅 上崎
~百日紅は名前の通り100日間花を咲かせるといわれる。百日紅が咲く時期がこちらと向こうでは違う世界。対岸は現世ではないところ、とも読める。(月波与生)
夕飯のメニュー無人島が浮かぶ 雪上牡丹餅
~ソースがヒタヒタになったお肉はちょっと小さな島のようですね。長崎の軍艦島を思い出したのですが、軍艦巻きが醤油皿からポコっと浮かんできても楽しいかもしれません。たった一人の食卓かなと思うのですが、寂しい感じがあまりしないのも面白いです。むしろおひとりさまを楽しみたくなります。(森砂季)
永遠に割り勘であれきみとぼく 海馬
~単純に読めば、飲み屋の代金の割り勘…と思いますが、それ以外の人生の辛さや幸せ、楽しみ、涙などすべてを分かち合っていきたい…という約束に思えます。「きみとぼく」は男女でもいいですが、少年期の友情を保った男同士の方が、わたしの好みです。(徳道かづみ)