さみしい夜の句会報 第106号(2023.2.26-2023.3.5)
第106回の参加者は97名でした。ありがとうございました。参加された方の1作品以上を掲載しました。掲載のない方、誤字脱字等ありましたらDMにてご指摘下さい。
青森もようやく春めいてきました。桜の開花予定日は例年より1週間ほど早く4月15日頃のようです。となると桜の満開が23日頃、それから1週間で林檎の花が咲くので連休中は林檎の花満開になります。5月4日は寺山修司の忌。林檎の花と修司記念館訪問、5月の青森はいいですよ。
◆ 参加者(97名)
はかなし、syusyu、何となく短歌、みおうたかふみ、みくるたん、千春、屑乃ハコ、鴨川ねぎ、水の眠り、石川聡、かのん、たろりずむ、雪上牡丹餅、弌定住佳、秋鹿町、カゲキ・ちゃけぞう、天やん、しまねこくん、元さん、みさきゆう、石原とつき、西脇祥貴、しろとも、najimi、雷(らい)、おかもとかも、海馬、西沢葉火、上崎、汐田大輝、海月漂、Ryu_sen、菊池洋勝、蔭一郎、鷺沼くぬぎ、らいる、hyuutoppa、霧島あきら、とるばどーる、片羽anju 雲雀、岩瀬百、流天、月硝子、crazy lover、蜜、岡村知昭、電車侍、まつりぺきん、ちゃんまり、さー、和泉明月子、太代祐一、凪ちひろ、Emily Flan、fuu_、花野玖、輪井ゆう、抹茶金魚、馬勝、Eureka、donkey、すずしろゆき、藤井皐、涼閑、雲心、Somekawa Yukio、雪夜彗星、のんのん、しま・しましま、ゆりのはなこ、mine、瑠璃雲雀、小沢史、こばやし南子、宮坂変哲、みんみん、しろとも、and、PERCHES、水須ゆき子、紅志野パワーみのり、うめたかな、Tatsuo Kanase、Tomo、蟻男(アリヲ)、涼、まどけい、ヤナ・ヤヌー、森内詩紋、高良俊礼、ふにふにヤンマー、山桜桃えみ、徳道かづみ、月波与生
◆ 7・7詩、5・7・5詩
春のゆめ退屈な日のドビュッシー Tomo
雲よりも浮雲に乗る長い列 蔭一郎
明日各位ズボンのひもはしまいなさい 西脇祥貴
市民課にこの身は果てるけど、ばにら? 西脇祥貴
猫が来て死者が蘇らなくなる 抹茶金魚
好きな子に見せるたんぽぽ食ふところ たろりずむ
満ち欠けをしているエビとエビの骨 秋鹿町
母音にも哀しみがある秋葉原 秋鹿町
早朝のオブラアトのごと春の月 とるばどーる
ウエストは作るものです二月尽 しまねこくん
風じゃなく友が動いている景色 西沢葉火
時々晴れる美術館 西沢葉火
マフラーを冬の尻尾として仕舞う 上崎
もしもしのもをモクレンに吹きかける 秋鹿町
芳一のLINEを既読スルーする 蔭一郎
湯気立てや飲込めぬ病名を聞く 菊池洋勝
確定申告 野焼の跡を踏みしめる 石川聡
巨大な金槌ガブリエル春の夜ル 石川聡
ぬいぐるみじゃなきゃおかしいくらい絵本 おかもとかも
子どもらがヨリミチと呼んでる施設 おかもとかも
笹かまになれそうな石鹸ばかり 上崎
雛祭に生まれてちよつと恥づかしい たろりずむ
春色の電波塔から来る祈り 秋鹿町
お別れの準備をしようBoyz Ⅱ Men 養花天 片羽雲雀
婦人部の揉めごと公民館に春 岩瀬百
もうTLに流れてこない犬のしっぽ 海馬
百本の土筆を元の穴に差す しまねこくん
怪獣が出たら名前を付ける部署 たろりずむ
くるっとまつ毛ぷるるっとおぼろ月 海馬
加湿器を抱いた地球を抱いている 千春
啓蟄や玉子焼の玉子売切れ syusyu
ミモザ咲く紛れるほどのプロポーズ 雲心
眠れない夜があるのを知らぬ人 みおうたかふみ
春夢想 私の彼は 左利き みくるたん
猫の恋「シャー」と鳴かれて悲しいニャ 屑乃ハコ
こんにゃくとひじきを知って川わたる 水の眠り
段下りて しなやかに女雛 旅に出る かのん
関白宣言かかあ天下に矛盾せず 雪上牡丹餅
思い出す歌もないまま過ぎる冬 弌定住佳
我独り君は誰かと酔い臥所 カゲキ・ちゃけぞう
ゆく春やヴァイオレットな恋心 天やん
繊月は昨日の爪の屍か しろとも
空欄に薔薇の芽置けば女の子 najimi
顔も出てこぬ人の怪談だけ出てくる 雷
三月はロビーで待つよ老いるまで 汐田大輝
輝きは日付変更線に乗る 海月漂
三年の歯列矯正ピカレスク Ryu_sen
春遅々の小夜の微熱や小さき棘 鷺沼くぬぎ
明けない夜がないことが救い らいる
風の無き空しか知らぬ雛かな hyuutoppa
雛壇の裏で仕丁の与太話 しろとも
しばらくは言葉の沼に落ち込んで 流天
雛出せば官女の閨に右大臣 月硝子
蜜蝋の弥勒菩薩を持ち帰る 岡村知昭
紙雛や 図書館の窓 空青し 電車侍
終わらない利用規約の生姜焼き まつりぺきん
春一番清掃員の磨く空 ちゃんまり
春の川光るを見つめ私と影 和泉明月子
海と空の間には 僕だけがいる fuu_
目を瞑る亀鳴く声に耳澄ませ 花野玖
暗がりをはさむまつ毛とつけまつ毛 輪井ゆう
異文化に放流されて鯥五郎 馬勝
ミモザ咲く窓辺のふたり分かち合い Eureka
始終くしゃみ鼻水喉鼻眼掻 donkey
恋知らぬ猫とアリアを聴く月夜 すずしろゆき
森の影から水疱を潰す音 藤井皐
約束を違えぬようにふと黙す 涼閑
文字化けと 忘れる記憶 雪消水 雪夜彗星
もう一度生まれてみたいエトピリカ のんのん
いっせいに椿の人が席を立つ しま・しましま
ピュアなのは私じゃなくてマヨネーズ ゆりのはなこ
船上や紫煙の還る冬銀河 瑠璃雲雀
春泥や人形の靴見つからぬ 小沢史
蓮華草ミツバチ待てずフライング こばやし南子
くよくよと無駄も人生つづら折り 宮坂変哲
五体満足不自由を飼う 紅志野パワーみのり
小心ペンギン翔の失楽園 Tatsuo Kanase
灯油を入れてあげない ストーブへの意地悪 蟻男
屋根の上猫か何かが歩いてる 涼
エヴァンスを聴いて眠るや虎落笛 まどけい
手紙には時効はないと書いてある 月波与生
◆ 7・7、5・7・5以外の短詩
スカスカの腹にイチゴをはめてみるちょっとピースが合わないけれど さー
この線は曖昧なままにしておこう終わりたいとか死にたいだとか mine
寂しさに色を塗るならできるだけ鈍くぎらつく色にしてくれ 鴨川ねぎ
「きょう嘘をつかれた人は5億人」ジョンズ・ホプキンス大学調べ 霧島あきら
早朝のホームに流れる空気すら少し眠たげ3月なんだね はかなし
マグカップ乳成分が渦を巻く母なる大地が産まれた生命 何となく短歌
微笑みを風に紛れて隠す意味季節替わりと呟く別れ 元さん
「じゃあね」より「またあとでね」と終わらないままでいようよ朝に旅立つ みさきゆう
「ニ人羽織ってさ、ふきのとうに遠慮してるね」お手並み拝見するよ 石原とつき
ふくふくし土鈴の雛と桃の花医院の棚にも春が来ており 凪ちひろ
チョコレート溶け始めるよな気温だと窓の外を見て気にせずにいる君 Emily Flan
恋やまい寝ても覚めても溺れたり愛撒き散らし忘却に落ち Somekawa Yukio
定点の空の模様に春兆し足元の影少し軽やか みんみん
最近は入手困難らしいです三岳のボトルキープしました PERCHES
二度寝する元気がなくて起き上がる午前三時のしづくのピアス ぽっぽ
靴下をバッテン印に置いてみて後から意味を考えている うめたかな
◆ 詩
自己評価高い人
自己評価低い人
従えて教育を
同じレベルなり得ない
こころの貧困切実
我がために何を?
求むものは何? (crazy lover)
時が止まればいい
時が早く過ぎればいい
時が戻ればいい
………
無限ループする
無限ループする
無限ループする
………
あと幾つ
深呼吸したら
凪になるんだろう (蜜)
小さな幸せとは
レンガのようなもの
重ね続けるのは
今からでも
遅くない (ヤナ・ヤヌー)
◆ 作品評から
「じゃあね」より「またあとでね」と終わらないままでいようよ朝に旅立つ みさきゆう
~好きです(森内詩紋)
市民課にこの身は果てるけど、ばにら? 西脇祥貴
~可愛く書いているのに、句からちょっと怒りのようなものを感じてしました。誰のため、何のためなの、ばにら? (まつりぺきん)
子どもらがヨリミチと呼んでる施設 おかもとかも
~寄り道を施設と見立ててみる。その程よいズレ感。「ヨリミチ」というカタカナ表記で、異質なものにしているところも効いていて、面白い句だなぁと思いました。(まつりぺきん)
早朝のオブラアトのごと春の月 とるばどーる
~この句素敵です!(高良俊礼)
雛出せば官女の閨に右大臣 月硝子
~「別々にしまったはずなのに!」
お隣さん「ピンポーン(ドアチャイム)これおたくの左大臣じゃないかしら?」(ふにふにヤンマー)
雛祭に生まれてちよつと恥づかしい たろりずむ
~実話かと思ってプロフィールのお誕生日確認しちゃいました笑(山桜桃えみ)
ああ犬が大好きなんだなあとわかるあなたの作る猫の短歌で たろりずむ
~わが家の猫が死んで半年が経つ。年齢もあり育てきれないのでもう猫を飼うことはないだろう。犬も猫も道で見かけたら励ますくらいになった。(月波与生)
猫の恋アーリオ・オーリオ食べに行く 花野玖
~猫の恋とアーリオ・オーリオは語感もいいし組み合わせも面白い。そういう刺激的な季節がまもなくやってくる。(月波与生)
時々晴れる美術館 西沢葉火
~言われてみると、美術館は雨か曇りのイメージがあります。誰もが無言で自分の観賞を楽しむからでしょうか。時々晴れる美術館、さてどんな作品が展示されているのでしょう?(徳道かづみ)