さみしい夜の句会報 第91号(2022.11.13-2022.11.20)
第91回の参加者は79名でした。ありがとうございました。参加された方の1作品以上を掲載しました。掲載のない方、誤字脱字等ありましたらDMにてご指摘下さい。
『さみしい夜の句会』合同句集の参加者を募集しております。句会に一度でも投句された方は参加できます。締切が12月31日なのでこれから参加しても間に合います。句集は作品20(短歌の場合は10首)とエッセイ(任意)が載ります。参加表明はDMへ連絡を。
◆ 参加者(79名)
おかもとかも、石原とつき、橘月子、しまねこくん、正念亭若知古、IZU、MIYA、日下踏子、さー、小沢史、風池陽一、syusyu、鷺沼くぬぎ、とるばどーる、星野響、菊池洋勝、西脇祥貴、元さん、森内詩紋、輪井ゆう、てくてく、岡村知昭、雪上牡丹餅、まつりぺきん、海馬、しろとも、mugwort、花野玖、人見弐一、宮坂変哲、池田吉輝、徳道かづみ、ぽっぽ、斌、白水ま衣、みや、弌定住佳、馬勝、のこりか庵、雲上晴也、あ、たろりずむ、蔭一郎、涼閑、鶴子、木野清瀬、水の眠り、内山晶生、鴨川ねぎ、和泉明月子、ゆりのはなこ、hyuutoppa、Tomoko、西沢葉火、Ryu_sen、ゆふなみ、ESG、あこせみ、須藤はる、日下昊、まつもとともこ、桔梗菫、ゴトー、梓川葉、藤井皐、霧雨魔理沙、PERCHES、望月 華(もちづき はな)、石川聡、千春、高木タツオ、cissa possa芥川美香、思雨(スイ)、Asura’s Haiku、新出既出20、原恵子、白石ポピー、月波与生
◆ 7・7詩、5・7・5詩
あとがきに家出と書いて金木犀 千春
泣きながら口紅としてきぜつする 藤井皐
医者ガチャに外れる胸や破芭蕉 菊池洋勝
後ろにもきちんと顔がある案山子 しまねこくん
出さない手紙に無我夢中でした 石原とつき
笑窪さえ歩道橋では禁止され おかもとかも
六本木 いったん無かったことにします おかもとかも
木枯は好き、待ち人に会えるから IZU
陸と海、兎と鮫と嘘と歯と IZU
諦めが悪い女のスクワット 徳道かづみ
さめはだのきょうはさむくてらっぱ吹く 岡村知昭
郷ひろみいつなんどきでも郷ひろみ 水の眠り
石鹸の消費期限が過ぎた家 西沢葉火
予想ではパン屋のパンが動きだす 海馬
ウォッカに浮かんだ海は冷たいか 蔭一郎
透明は最も難解な言語 白水ま衣
自宅ではマスクを外すカメレオン 雪上牡丹餅
Twitterよりも世界が終わりそう たろりずむ
旧姓で呼ぶしかなくて湯冷めかな 馬勝
湖面には浮動小数点の群れ まつりぺきん
喧嘩して一人ぼっちが二人いる 宮坂変哲
la maison dievとどめなら自分で刺す しろとも
わかってはくれない蠍座のキリン 岡村知昭
しんどさの果てはスナック泥恵比寿 西脇祥貴、
置き去りにされた三拍子のリズム MIYA
隼が飛ぶよ夢よりずっと先 IZU
北風と砂場に残る三輪車 IZU
ポケットの中にも牡蠣があるだらう しまねこくん
パンドラの箱もあしたは資源ごみ 橘月子
はなさへん びりけんさんの うしろがみ 正念亭若知古
母のコツホットケーキはテフロンで! さー
沸いているからだのおくのみずたまり 小沢史
待たされて膝を崩しぬ実千両 syusyu
枯蓮の沼に缶空眠る寂 鷺沼くぬぎ
君と行く縁切り寺の冬紅葉 とるばどーる
凩が胸の歯車吹き抜ける 星野響
クリスマスソングで霞んだ霜月 輪井ゆう
静寂とスノーピークの灯油の香 てくてく
月曜に向かって走るオートバイ まつりぺきん
神渡めける幻想即興曲 mugwort
モノクローム綿虫の舞ふ坂の町 花野玖
まだ暗き温泉上がり朝寝する 流天
届かない言葉を折って鳥にする ぽっぽ
かわいいワッフルのこたつぶとん毛羽両目に 斌
やめてくれやめてくれったらやめてくれ 弌定住佳
寝そびれて猫を懐炉にサブスク見 のこりか庵
冬茜残務は星となりにけり 雲上晴也
見納めの世界北窓塞ぐ夜 あ
すき焼きの肉の薄さや給料日 宮坂変哲
闇の手に渡す答えのない未来 涼閑
この先は吾ひとりゆく冬の道 鶴子
二つ星せめて一つの川面にて 木野清瀬
インク切れ私のアカウントどこへやら 内山晶生
心臓にりっしんべんを付けてやる 鴨川ねぎ
ハロウィンで転んだ先の天使の輪 ゆりのはなこ
落葉朽つ高瀬舟には成りきれず hyuutoppa
トンネルも鉄橋もゆく墓参り 風池陽一
赤い月 ビデオ通話で父母と見る Tomoko
枕辺に狩人の段取りを聴く あ
七五三行は佳い良い帰りはハラハラ 日下昊
平穏になるまで荒地踏めば瞬く まつもとともこ
知恵しぼる駐在仲間のワル三人
中華店鱶をねだった冬始め 桔梗菫
君がため ウイスキー棚 品定め 梓川葉
インスタントラーメン型ペットベッド 霧雨魔理沙
新幹線で喉とイドに響く魔王 石川聡
あかねさすもみじの向こう青い空 池田吉輝
飼い主が戻って来ない/籠の鳥 高木タツオ
三丁目冬薔薇薫るシーン4 芥川美香
顔をあげたら 昨日が見えた 思雨
笑点をわらうファントムシンドローム 月波与生
◆ 7・7、5・7・5以外の短詩
木々たちの香りを吸って吐き出せば私も森の一部と思う 望月 華
スタンプで 隠す本音が分からないごめん私は金田一じゃない しろとも
半世紀生きてもわからぬことだらけ 8分かけて歯磨きをする 森内詩紋
単三を買えど入れれば単四のリモコンだったような職場だ 風池陽一
罰としてカップ麺へと湯を注ぎ消極的に痛めつけてる ゆふなみ
階段は歩きたくないのになぜかエスカレーターでは歩きたい 雪上牡丹餅
紫煙吹き足立区民より届きし不幸の手紙を読んでいる 人見弐一
静寂な夜に妖しい夢の中女神と出会う奇跡信じて 元さん
優しくてやさしくしててさいごまで許されるならわかれのときまで みや
投げられた針は未だに刺してくる常世にわたし住まわせたまま 和泉明月子
もうおやすみよ枕元に外した眼鏡の瞼もそっと下ろして ESG
何キロよ?いくら問ふてもこう答ふ458だよてめー重いな あこせみ
柿と栗葡萄と秋の夜の孤独静物画にす筆の柄(え)冷たき 須藤はる
私のカムパネルラになってくれない?大丈夫分かっているくれないのは ゴトー
イルカイラヌカニジイルカソラヲナガメテミヤシャンセ PERCHES
ひらひらと暖炉は燃える夜明けまで それまで生きているのだろうか 望月華
◆ 詩
蛸壺を買った
10センチほどの蛸壺
この蛸壺に入れる立派な
蛸にならねばならない (日下踏子)
◆ 作品評から
逃げ腰は新生活に欠かせない Ryu_sen
~「逃げる」ということが卑怯と言われなくなったのはとてもいいことだ。『石の上にも三年』をいう老人もまもなく絶滅するであろう。(月波与生)
陸と海、兎と鮫と嘘と歯と IZU
~land and sea
and rabbits and shark
and lies and teeth (Asura’s Haiku)
喧嘩して一人ぼっちが二人いる 宮坂変哲
~真理ですね、明日には仲直りしたいものです。(花野玖)
北風と砂場に残る三輪車 IZU
~好きです。(新出既出20)
漬物になる瞬間を見逃した おかもとかも
~漬物になる瞬間を見逃したって生きて行く上でどってことないのだがたくさんのどってことない現場の当事者でいることが豊とも言える。さて今日ぼくたちは何を見つけるのだろう。(月波与生)
この先は吾ひとりゆく冬の道 鶴子
~Me too! 私もです(原恵子)
六本木 いったん無かったことにします おかもとかも
~「六本木」まで言いかけて、リセットしようとしているのか、「六本木」自体をリセットしようとしているのか。「無かったこと」=無効化を、ゼロではなくやり直しの意にする「いったん」が効いていると思います。こういう句、好きです。(まつりぺきん)
ニ枚ずつ枯葉を留めるホッチキス しまねこくん
千の手で千の枯葉を裏返す しまねこくん
~枯葉二句。どちらも数字を用いているのが創作のデッサンを見ているよう(月波与生)
予想ではパン屋のパンが動きだす 海馬
~やはりそうか。街の危機に真っ先に反応するのはパン屋のパンだ。続くのは肉屋の肉か魚屋の魚か。酒屋の酒はいつでも寝返る準備をしている。ケーキ屋のケーキは泣きじゃくるばかりだ。(徳道かづみ)
カーテン越しの泣く声秋の金魚かな 菊池洋勝
~相部屋の入院室。見舞客が帰った後、静かな嗚咽がカーテン越しに聞こえてくる。「秋の金魚」に立ち入ることのできない哀しみを感じる。
僕らには古賀新一がついている! 徳道かづみ
~古賀新一のホラーを怖いと思わないのは黒井ミサによって物語が落着するからであろう。彼女は不確かな生と死を落ち着かせてくれる妖精なのだ。エコエコアザラク。(月波与生)
新幹線で喉とイドに響く魔王 石川聡
~新幹線で魔王呑んでる方はなかなか見ないですよー!笑 これはイドに響きますねー!(白石ポピー)
君と行く縁切り寺の冬紅葉 とるばどーる
~良い句ですね…(雛子)