さみしい夜の句会報 第81号を発行しました

さみしい夜の句会
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さみしい夜の句会報 第81号(2022.9.4-2022.9.11)

第81回の参加者は94名でした。ありがとうございました。参加された方の1作品以上を掲載しました。掲載のない方、誤字脱字等ありましたらDMにてご指摘下さい。

今回週報が10ページを超えました。参加数、投稿数が増えているのと、批評コメントが増えて賑やかになっているのだと感じます。堀本吟さんが『にぎやかでさみしい集まり』と評してましたが、渦の中にいる人間も賑やかさを実感しています。さて、何度か迫りながらまだ越えられない参加100人の壁。その時が来ることを楽しみにしながら編集を続けます。

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◆ 参加者(94名)

参加者:空瓶、月硝子、しまねこくん、さー、白水ま衣、太代祐一、Ryu_sen、ぽっぽ、風池陽一、syusyu、Tomoko、汐音葉月、水の眠り、菊池洋勝、西脇祥貴、なゆた、おたま、宮坂変哲、おかもとかも、最中妙、石川聡、花野玖、しろとも、雲上晴也、天やん、海馬、あ、まつりぺきん、生・存、ちゅんすけ、岡村知昭、mugwort、蔭一郎、コネコノビッチ、さぶきち、ともなう、電車侍、森内詩紋、弌定住佳、桔梗菫、伽羅、しもじょう、星野響、najimi、高田月光、−恷庵−、べ、Tomo、ソウシ、そよ花、斌、鴨川ねぎ、さこ(砂狐)、抹茶金魚、雷(らい)、夜間戦闘(れん)、涼閑、hyuutoppa突破、小沢史、日下昊、日下踏子、阿笠香奈、旦悠輔、HAKUBIKI、せば、石原とつき、山田小太郎、いずみ、東こころ、ゆりのはなこ、西沢葉火、鷺沼くぬぎ、古都梨衣子、池田吉記輝、木野清瀬、日月星香、あお、落合魯忠、我矢-Gaya、睦月ヨシ、輪井ゆう、kiyoka、陽菜ひよ子、たろりずむ、Hina、白猫、津島野イリス、6 Roku!、業、楢崎進弘、ファイファイ、名犬ぽち、川合大祐、月波与生

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◆ 7・7詩、5・7・5詩

ヘアサロン帰りの猫とすれ違う 空瓶

どうしても踊ってしまうサバサンド Ryu_sen

とんぼ坂の“ちちんぷいぷい”の誘惑 石原とつき

嘘ついていちばんかたいグミになる 小沢史

電線のなかを通って着く野原 蔭一郎

きみにだけ点呼をとってみる真昼 蔭一郎

速乾性涙(過剰かもしれないが) おかもとかも

野葡萄や蔓に流るるイエスの血 菊池洋勝

戒名を少し文字って島流し さこ

カルビー食べて森永食べて明治食べて資生堂パーラー 斌

歳時記がなくて名前のない今夜 ソウシ

暗がりとして歩く蟹二、三匹 太代祐一

雄の梨違ふ籠には雌の梨 しまねこくん

梨代の代わりに置いて来る次男 しまねこくん

サキュバスの夢の快感秋涼し 菊池洋勝

まつり縫い大きなことを言う前に 西脇祥貴

毛の生えた抽斗 鶏とする 西脇祥貴

十五夜は奥歯が痛む河馬の群れ 蔭一郎

週休が七日で重陽の手相 蔭一郎

鳴き声で洗濯ばさみだとわかる 岡村知昭

わたくしが軋むメレンゲにはなれぬ ちゅんすけ

夏空に六番ショート西の雨 まつりぺきん

クレーム ウインナーのタコだわ さっき まつりぺきん

台風の目でも賢くなれますか まつりぺきん

実際お札とか家来とかどうよ まつりぺきん

人の世やスロットマシンの壊れかた 海馬

演算についていけない川下り おかもとかも

朝刊のビニル袋へ白露かな 菊池洋勝

ぜんしんにあなあいておともれている 太代祐一

藪枯らしすっからかんは光なり 日下踏子

電線に小松政夫が泊まってた 石川聡

マンドリン月食いながら揺れ続け 石川聡

迷路からポロリと落ちて嘘になる 石川聡

アンメルツつるつる肩に受験生 Tomo

断薬を諦め眠る虫の闇 Tomo

十六夜を溶く薄墨で詠む挽歌 月硝子

目の裏に月を隠して寝る五歳 さー

売れている方の心が寿司を撮る 白水ま衣

飲み会は雨天決行名月や 風池陽一

十六夜や時代が一つ消え去りぬ syusyu

中秋の名月 天に冴え冴えと Tomoko

かぐや姫 月面地図描く 月見かな 汐音葉月

聡明な月は一面だけ見せて 水の眠り

断末魔菊人形の首落とす 宮坂変哲

情熱を映して白き月昇る 花野玖

良夜には詩一篇と冷やの酒 雲上晴也

紫煙たつ辞表の帰りの名月や 天やん

秋を媒介している赤とんぼ あ

望月を鏡としては叩き割る 生・存

名月やおぼろに矢庭魄あらわ mugwort

眠らない猫たち不安という贈りもの コネコノビッチ

月だけ先に満ちてひとりぼっち しろとも

雲流る 彼方になびく 稲穂かな 電車侍

追いかける自分の背中追う自分 弌定住佳

庭の菊花の手入れは九月だけ 黎明

待宵や香焚きしめる紅をさす 伽羅

幽霊がもっちり肌でクリケット しもじょう

月草へ吸い寄せられる漸近線 星野響

贋作の夜を紋切りして遊ぶ najimi

南瓜って呼ばれたこともない彼女 高田月光

シリンジとコットンロープ菊の酒 あ

街灯の下私は私の影に立つ べ

夜の静寂にレコード針を落とす そよ花

赤橙の光に抱かれ君は消ゆ 鴨川ねぎ

家具が不在に垂らす尻尾 抹茶金魚

号泣した映画があると思い込んでいた 雷

神隠し隠した神を問い詰める 涼閑

夜に触れし校舎は夢の中白露 hyuutoppa突破

ちらほらと朝日に桜が咲いている 流天

白露の露払いは私の務め爪先の冷たさ 日下 昊

こころの図書館で居眠り そよ花

桃の缶ずめと粘り勝つ子供等 桔梗菫

バファリンの優しさだけが欲しい夜 阿笠香奈

コモンズが燃える遠くに鳥が飛ぶ 旦悠輔

何となく って言うやつは 不確実 HAKUBIKI

美しきかな羽付けておる餃子 せば

ねるねるねるねを寝がなら練るね 山田小太郎

傷痕をなぞれば父母ヶ浜日暮れ いずみ

顔以外好きになれずに捨てていく 東こころ

りんご噛むふるさと訛り取れなくて ゆりのはなこ

瓶詰めのジャムに置き去りの小指 西沢葉火

眼裏に表情筋の解剖図 西沢葉火

好きだよと言えないままで吸うタバコ 古都 梨衣子

色鳥や父は祖父母に愛されず 木野清瀬

選んだ言葉で盆荒れ案じる 日月星香

ただいまと小声ため息部屋独り 我矢-Gaya

足跡を確かめたくて本に問う 睦月ヨシ

積み上がる雲の圧力を抜く雨 輪井ゆう

掻き乱された後のこころ kiyoka

埼玉に作る千葉ディズニーランド たろりずむ

心ごとスモーキーブルーに染まる秋 Hina

野葡萄の数珠 吾は輪廻を数え 白猫

黒猫が目に飼つてゐる銀の蛇 ぽっぽ

シーフードヌードルはまだ海を知らない 月波与生

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◆ 7・7、5・7・5以外の短詩

さよならが「う」を除外した原因をわたし以外はみんな知ってた 蔭一郎

いいこだねと言はれ続けて野良猫の眉間の傷は少しずつ癒ゆ ぽっぽ

染みを焼くたび指先に傷増えてわたしは染みに祝はれてゐる ぽっぽ

眠れない 夜は新聞配達の バイクの音に さえ慄いて なゆた

秋の夜空 白く輝く 円い窓  この世界からの 出口のような 最中妙

千切りのリズムで今日を熟(こな)せばたらふく食べても腹はくちない しろとも

しなやかに湾曲する猫に触れ死ぬわけないさとハチワレを嗅ぐ さぶきち

萎るるを肯ふごとく貴船菊 露の世をゆく我もまた露 森内詩紋

月に行き連絡とれない宇宙飛行士「ああすいません 眠ってました」 夜間戦闘(れん)

窓開けて雨音を聞く秋の宵治りかけてる火傷が痒い 鷺沼くぬぎ

持ってきた全てに花丸つけてやる文字もぬり絵もこの鼻糞も あお

貴方の顔は 忘れても 忘れられない 煙草の香 陽菜ひよ子

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◆ 詩

こっちゎくもって月がみえなかった
心にもずっともやがかかってるよう
いちねんで
1番綺麗な月でさえ
くもりガラスの
奥みえない (おたま)

BluetoothをTOKYOタワーがジャックした
同じあやまちをしては駄目だと囁いた
ボクはもう後戻りはしない
さみしいふりはやめなさい
君ほど生命力の強さと守られて居る人を
ボクは知らないよ
どうやら道は分かれたようだね (ともなう)

人と人 簡単の様で難しい。
家族でも。
友達でも。
夫婦でも。
リアルでもSNSでも。
無理せんといこ!
無理したら ぶっ壊れるから。
離れてった人がおるなら、それまでの関係。
自分に優しく
大丈夫、きっと味方は必ずおるから。(−恷庵−)

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◆作品評から 

忍ばせた胸ポケットのバカヤロー 鷺沼くぬぎ
 ~川柳に「バカヤロー」が入ると何故が(憎めない)を前に付けて読んでしまう。掲句も胸ポケットに忍ばせるのだからまんざらでもないのかもしれない。(月波与生)

黒猫が目に飼つてゐる銀の蛇 ぽっぽ
 ~こんにちは。詠まれている景がとても素敵なのですが、助詞「が」、語順、少し散文的な気もします。「目」という語には「眼」「瞳」「眸」など類語がたくさんありますから、表現したいことに最も合っている語を検討されるのもひとつの手、かと。(津島野イリス)

朝刊のビニル袋へ白露かな 菊池洋勝
 ~夏から段々冷えて来る秋の体感。(月波与生)

夏空に六番ショート西の雨 まつりぺきん
 ~六番ショートがいいですね。読み手にとって思い出の六番ショートが立ち上がります。(月波与生)

脅迫の材料としてのティンパニ 太代祐一
 ~ティンパニはプロダクトではなくパーツなのだ。他のパーツはあなたかも知れないし隣の犬かも知れない。世界はパーツで出来ている。 (月波与生)

深夜二時まだ見たくないメールあり 空瓶
 ~時間を句に入れる場合その時間が妥当かという問題がある。といっても個人的認知もあるので絶対はないしすべての時間は句では「動く言葉」になる。その場合時間以外の言葉がどれだけ魅力的であるかが生命線となる。(月波与生)

十六夜や時代が一つ消え去りぬ syusyu
 ~追悼 エリザベス女王 (6 Roku!)

週休が七日で重陽の手相 蔭一郎
 ~「週休が七日」と「重陽の手相」の連絡がうまくいってるか。さらに「週休」「七日」「重陽」「手相」と分けたとき各言葉でひとつの世界が構築されているかどうか。 (月波与生)

カルビー食べて森永食べて明治食べて資生堂パーラー 斌
 ~カルビー、森永、明治までは楽しい日常なんだけど、最後の資生堂パーラーで一気に高級感のある非日常へ飛ぶ (石川聡)

電線に小松政夫が泊まってた 石川聡
 ~電線、小松政夫はわかりますが、「『泊』まってた」ときますか…勉強になりました!(まつりぺきん)

野葡萄や蔓に流るるイエスの血 菊池洋勝
 ~野葡萄の色が様々であるように、イエスの癒しの力も様々に現れる。ワインはイエス・キリストの血の象徴。掲句はワインになる前の、更に葡萄として実る前の、蔓のなかの養分に既にイエスの力が流れていることを詠んでいる。根元的な把握に説得力を感じる句。(石川聡)

クレーム ウインナーのタコだわ さっき まつりぺきん
 ~「さっき」終わり方が散文的です。ウインナーのタコとクレームとの繋がりも機能してないように感じます。(月波与生)
 ~わたしは終わりかたが散文的でもまったくかまわないと思うんです。作者にはなんらかの思いがあると思うのですが、表現的に確かにもやもやします。カタカナとひらがなだけで構成されているのは、見た目カッコいいです。短詩って、デザインも重要だと思うので。(蔭一郎)

女子だけのドッチボールは芋嵐 さー
 ~男子が混ざるのと女子だけのドッチボールは緊張感が違うらしい。助詞「は」が効果的か考える。(月波与生)

聡明な月は一面だけ見せて 水の眠り
 ~永遠に暴かぬ横顔秘めて(業)

毛の生えた抽斗 鶏とする 西脇祥貴
 ~抽斗に毛が生えているだけでもじゅうぶん異常事態だけど、この句はそれを鶏として認識・宣言する。朝になったら鳴いたりするのかな。抽斗としての機能を保ちつつ鶏の振る舞いをするそれは奇異というより自然にすんなりと受け入れられている。二重に不可思議を抱えているようだ。(太代祐一)
 ~『毛の生えた拳銃』を思い出した。(麿赤兒が良かった)(楢崎進弘)

瓶詰めのジャムに置き去りの小指 西沢葉火
 ~ジャム瓶のなかに半透明の美しい小指が漬かっている。そんなシュールな読みが好きです。が、ひとりぐらしのひとがちょっとペクチン少なめの硬いとろみのジャムをひと掬いした跡が綺麗にのこっている。というような読みもよいかなと。林檎ジャムの黄色がいいかな♪ (石川聡)

眼裏に表情筋の解剖図 西沢葉火
 ~眼裏ってあるのに、解剖図まできて、下の瞼まわりの筋肉がピクピク痙攣してしまった読後感。眼裏だと、故郷、おっかさん、なんかが類想沼で付く感印象だが表情筋で二段ロケット、解剖図で三段ロケットの飛躍が流石! (石川聡)

台風の目でも賢くなれますか まつりぺきん
 ~まったくわけのわからない、わたしの読みですが、台風の目を自分の顔の目のどちらかに移植するのではないかと考えた。その台風の目は衰えることなく、ずっとわたしたちは台風の目に見られ続けるのだ。(蔭一郎)

迷路からポロリと落ちて嘘になる 石川聡
 ~「迷路」と「嘘」がすこし付いてしまった感。「嘘」ではなく「瀧」とか、デタラメなものを置くと面白そうですが、お題が「嘘」だし、石川さんが「嘘」に重きを置いている場合はこのままでも。変えるとしたら「迷路」のほうかな?(蔭一郎)

終電の窓が日めくりカレンダー まつりぺきん
 ~終電に映るのは街の灯りと疲れ果てた自分の顔。24時ちょうど、先頭車両から物凄い勢いで曜日が変わっていく。 (月波与生)

さよならが「う」を除外した原因をわたし以外はみんな知ってた 蔭一郎
 ~わああああ、すてきだ…! (古都 梨衣子)

断薬を諦め眠る虫の闇 Tomo
 ~え。なんだかすごく怖い。なんでだろ(ファイファイ)

野葡萄乃1つは白にする規則 しまねこくん
 ~野葡萄の、あるいは野ぶどうの、でいいと思うが「乃」には作者が拘りたい意味があるのだろう。同様に1つ→ひとつ。提出の仕方を読み手は考える。(月波与生)

梨代の代わりに置いて来る次男 しまねこくん
 ~に、兄ちゃん・・ (名犬ぽち)

実際お札とか家来とかどうよ まつりぺきん
 ~「実際お札」って言う超現実的な〈お札〉として読みました。ドラえもんの道具みたいな? でもどんなお札なのかわからずに「どうよ?」って訊かれると、自分がいま立っている地点がどのあたりか分からなくなって、ちょっと眩暈が来ました。だから「家」に「来」るのか。妄想読み失礼。 (川合大祐)

染みを焼くたび指先に傷増えてわたしは染みに祝はれてゐる ぽっぽ
~ぽっぽさんこんにちは。染みに祝はれてゐるという明るい歌の着地が素敵だなと思いました。指先に増える傷が、戦った証のような勲章のようにも思えました。短歌外から失礼致しました (Tomo)

そういうことは分母に言ってくれないか 白水ま衣
 ~面白い。自分も分母のひとつであることを忘れている鈍感さ。どこにでもいるあなたに似た人。(月波与生)

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