さみしい夜の句会報 第69号を発行しました

さみしい夜の句会
スポンサーリンク
スポンサーリンク

さみしい夜の句会報 第69号(2022.6.12-2022.6.19)

第69回の参加者は85名でした。
ありがとうございました。参加された方の1作品以上を掲載しました。掲載のない方、誤字脱字等ありましたらDMにてご指摘下さい。
19日が句会報発行日でしたが文学フリマ盛岡に参加していたため発行が遅れました。遅れましたが句会報の範囲は12日〜19日の一週間分で変わりません。19日の夕方ご投句分以降は来週の公開となります。また、画像によるご投句はNGとさせてください。Twitterにテキストにて入力をお願いします。御了承ください。 

スポンサーリンク

◆ 参加者一覧

茶碗酒一杯、蔭一郎、馬勝、片羽雲雀、茶熊さえこ、ちゅんすけ、菊池洋勝、石川聡、岡村知昭。小沢史、藤井皐、syusyu、najimi、む~みんママ、水の眠り、電車侍、汐音葉月、弌定住佳、旦悠輔、西脇祥貴、楽園、木野清瀬、以太、高瀬二音、西沢葉火、海馬、徳道かづみ、涼閑、汐田大輝、めい、玖々泉ろか、雲上晴也、輪井ゆう、雷(らい)、haruwo、月硝子、棚場田敦也、星野響、おたま、富永顕二、mugwort、上峰子、日下踏子、みんみん、ゆりのはなこ、高木タツオ、落ちる星々、玖、hyuutoppa、ふわふわにゃんこ、宮坂変哲、日の出、東こころ、Moon、高良俊礼、天やん、抹茶金魚、ジロー、Tom、ヘルわんこ、白蛇、生存、海月漂、石原とつき、芹澤雨、おたま、はりはかる、立木由比浪、日下昊、星野るるめ、琴華、せば、たろりずむ、鷺沼くぬぎ、太代祐一、大江信、内田、蜜、ダブルート、とつかあ太、須藤田参四郎、とるばどーる、蔦きうい、月波与生 (八五名)

スポンサーリンク

◆ 7・7詩、5・7・5詩

骨盤を揺らしがちゃがちゃ啼いている ちゅんすけ

梅雨の砂時計の砂に足とられ 蔭一郎

梅雨の家そこいら中にオムライス 汐田大輝

ONLY YOU(YOUは複数形のYOU) たろりずむ

林檎からぜんぶをひいて風邪をひく 芹澤雨

カバならば回覧板に従って 西沢葉火

聴き飽きた曲を消してもまだねむい 東こころ

初孫をかぼちゃと呼んだ祖母の墓 高木タツオ

各停を『浜昼顔』と名付けたい石川聡

ふるさとの河馬はとっくにスケルトン 岡村知昭

くちびるがこの世に少しはみ出てる 海月漂

湖に生殖だけが浮いている 旦悠輔

戦争がのび太の奥で泣いている 以太

おれの顔はタッチパネルやないで 海馬

惑星の痒いところにカブトムシ 海馬

身勝手に聖書を引ける夜である 高木タツオ

暴動の裏にはいつもみのもんた 富永顕二

いい匂いする濁った川の裏の店 雷

蚊の夢を叩いて遠いバイク 雷

壁掛けの絵の相貌も嘔吐音 藤井皐

冴えない魂を愛せよ 鹿より 藤井皐

爪と髪だけ正確に生きている 輪井ゆう

選挙区を出て肉厚の傘開く 以太

眠れずに頸動脈の歌を聴く najimi

正しくは雨じゃない青の方眼紙 najimi

とうすみや網の届かぬように飛べ めい

桃を擦る壊れた音のする手首 高良俊礼

青空はカーブミラーのまがいもの 以太

少年の初恋拾う百合の影 ジロー

「応答セヨ、上水増水!」桜桃忌 石川聡

桜桃忌ふやけたままの足のうら 小沢史

あやめたきひとありし日の浜昼顔 小沢史

そんな殺し方があつたか氷噛む hyuutoppa

バスケットゴールもくちなしも錆びて hyuutoppa

苔の花ヘップバーンの胸の内  水の眠り

回路図に兄とカンナが組み込まれ 抹茶金魚

父の日は乳毛白髪の乳の日ね 茶碗酒一杯

中から遠ざかっていく積ん読ら 茶熊さえこ

暮の春結果待たせるベッドかな 菊池洋勝

父の日や500Wで5分半 馬勝

きみが先あなたが先よ桜桃忌 syusyu

食うか食われるか進歩のために死んでいく む~みんママ、

穂を撫ぜる 風を想えり 麦酒飲む 電車侍

貴方の書物を 火に焚(ク)べる 桜桃忌 汐音葉月

当たり前世界は君に無関心 弌定住佳

むかし見たドラマのヒロイン名は紫陽子 木野清瀬

精子6円/ℓ ベンツを買いに行く 西脇祥貴

独り酔えば好きだよなんて宛もないのに 高瀬二音

神様になりたい雨の午後三時  かづみ

この世ではいつもあなたとすれ違い 涼閑

さざ波に揺蕩う私水死体 玖々泉ろか

梅雨空も貢げばもつかもたないか 雲上晴也

竹植えて竹に突き出される家主 月硝子

走梅雨つい改行の乱舞する 星野響

渇きった心に染みるBABY’S おたま

朴の葉の裏に寝息の雨蛙 mugwort

次の方透き通る浜昼顔と 上峰子

幸せのまあるい月はつくるもの みんみん

火事現場花壇のユリも焼けていた ゆりのはなこ

自分では届かないところに触れて去る人 落ちる星々

あと少し甘さ控える茹小豆 玖

結婚や事後報告で燃えるゴミ 白蛇

香りだけ残して君は部屋を出る 宮坂変哲

6番線にティーカップ来て乗り込む 日の出

五月晴れを食べたような人と会う 生存

あんみつをかくしたしかく姉は泣く 石原とつき

紫陽花や掃除機に吸われず生きている 天やん

赤く赤く新種西瓜の孕まざる はりはかる

コラージュの人生だったのかと指 立木由比浪

瑞々しい五月闇で夏至向かう羊歯の花 日下昊

青空の下でも梅雨入り宣言され 琴華

テーブルの傾きつつも地鎮祭 せば

あの家のポトスライムは情報通 太代祐一

優しさに狸寝入りも笑い出す 大江信

蝉になる前に下着を取り替える 月波与生

スポンサーリンク

◆ 7・7、5・7・5以外の短詩

きみと云う本の栞になりたくて邪魔にならない薄さで生きる   片羽雲雀

流れゆく星が欠片にあくがるる吾の心臓は闇さまよひて      Haruwo

天使になれず泣いている君は誰より美しい僕の永遠の思い人     Moon

少年のシュワシュワ放つ初恋は心を零れ弾けて甘く       ジロー

退屈に 煽られまいと 山葵噛む狂った変人 無理した凡人     星野るるめ

正しさを押し付けてくる君だけど誰かにすれば非常識人     めい

メッセージAI、孤独な夜だから君の即レスだけが欲しくて    内田

青色の葉をくわえてる白鳩を見たら足から石化が進む      蔭一郎

スポンサーリンク

◆ 詩

(日下踏子)
きいたはなしじゃ 
ここのとこ
月では小麦がだいにんき
おだんごぱんに おうどんに
おやすみ中の生地だらけ
やすめば生地はうかぶので
その間月ではたくさんの
月がうかんでいるそうだ            

 (ふわふわにゃんこ)
梅雨時
気怠い湿度が身体を覆う
人もまばらなホーム
各駅停車を待っている
風は時折吹くものの
オレンジのベンチだけが
夏へ期待を膨らませている
ふと
耳元に雪が降り残ると
其れら全ては軽やかに弾け跳んだ

(楽園)
信じると力
人に心が宿った理由
自分を信じるようにするため
根本中の根本は自分を信じること
ですが生きる上で最も難しい
ですがこれを失えば
他になにがあっても一切駄目です 

(ヘルわんこ)
紫陽花を前に立つ人の影は濃く
アスファルトの染み照り返す日差し揺れる空気
とうとうと近づく夏の足音   

(蜜)
老いてゆく髪も指も唇も
でも
それがいいのよ
それでいいの 

スポンサーリンク

◆ 作品評

きみと云う本の栞になりたくて邪魔にならない薄さで生きる  片羽雲雀
 ~よき(ダブルート)

「応答セヨ、上水増水!」桜桃忌  石川聡
 ~応答せよ!応答せよ!こちら太宰(とつかあ太)

桜桃忌ふやけたままの足のうら  小沢史
 ~ふやけたままの足の裏湯舟で入水の夢をみる(木野清瀬)
 ~ふやけた足裏はメロスの足裏。太宰の足裏。結局、幾度もスクロールしてこの句に戻った。
  戻る度僕の足裏もふやけてしまった。 (hyuutoppa)
 ~怖いです…。(鷺沼くぬぎ)

きみが先あなたが先よ桜桃忌 syusyu
 ~こっちも怖いなぁ。俺もすぐ後を追うから、とか…?(鷺沼くぬぎ)

蝉になる前に下着を取り替える  月波与生
~いざという時の為にパンツを履き替えておく。汚れていない物に。穴が空いているなど問題外。できれば新品が望ましい。せっかく成虫になるのだから。古い殻は脱ぎ捨てて、新しいサナギを履いておこう。蝉になるのだから。蝉になればもうすぐ、死ぬのだから。(西沢葉火)

骨盤を揺らしがちゃがちゃ啼いている  ちゅんすけ
 ~ガチャガチャうるさく鳴くのはクツワムシ。翅を震わせて音を出す。わたしは骨盤を揺らしなが啼く。大きな声で。うるさいと言われる。わたしの骨盤の間から生まれた子供たちがガチャガチャ泣いている。うるさいなあ、もう。(西沢葉火)

爪と髪だけ正確に生きている  輪井ゆう
 ~自由意志の通用しない部位として心臓のほかに爪と髪がある。わずかでも随意な脳や手は正確どころか失敗つづきなのに対し、不随意の心臓や爪や髪は各々の規則を正確にまもる。正確さを追求し、他者の些細な失敗を弾劾したい社会への批評精神が「だけ」に凝縮された。(以太)

あやめたきひとありし日の浜昼顔 小沢史
 ~気立良き女にこそ殺意のリアル。
スカーレットよりメラニーの方が怖いんですよ。(木野清瀬)

冴えない魂を愛せよ 鹿より  藤井皐
 ~17音なのですが、全節句跨がり+字あけの為、自分は自由律俳句として読んじゃいます。命令調のキレ。そしてなぜ鹿がそんなことをいうのか?理由は隠されています。不思議な雰囲気の句で惹かれます。(石川聡)

惑星の痒いところにカブトムシ  海馬
 ~惑星というスケールのデカい語彙から入って、惑星に比べると極小さなカブトムシの結語。フォーカスが効いてその上、季節感もあります。2つの要素を繋ぐ中七が「痒いろころに」と意表を突いてきます。例えば中央構造線やフォッサマグナは惑星の引っ掻き傷的で痒いかも知れませんね。色々妄想読み可。(石川聡)

湖に生殖だけが浮いている  旦悠輔
 ~生殖器ではなく生殖、だけ、である。それはもう音のみが湖上に響いている絶景。飛び交う鳥は自ら翼を折り、やがて湖底の魚たちは透明な瞼を塞ぐだろう。(以太)

くちびるがこの世に少しはみ出てる  海月漂
 ~唇だけが此岸にはみ出て本体は彼岸にある。唇亡則齒寒の逆となろう。歯を未だ伴わない唇の存在は物を喰らうためでも、言葉を発するためでもない、ただ唇同士で触れ合うためだけに。(以太)      
 ~以太さんの素晴らしい評がありましたが、自分もこの句好きです。だいぶ出ちゃうと、あの猛烈な松本清張になっちゃいますね。「少し」だからいいんだろうなあ。なんか慎ましさとか優しさを感じます。(石川聡)

ふるさとの河馬はとっくにスケルトン  岡村知昭

 ~お国自慢である。都会の河馬はまだ半透明になりかけているくらいなのに、ふるさとの河馬は「とっくに」スケルトン。「とっくに」が強い、強すぎる。そういえば河馬はhippopotamusであり、自然水路状の馬、或いは天の川銀河状の馬の意味もあった。その素質はすでにあった。(以太)

バスケットゴールもくちなしも錆びて  hyuutoppa
 ~象牙がかった白いくちなしの花が朽ちた様、確かに錆びを感じます。鋭い観察眼。取り合わされたゴールリングの錆びは雨の多い季節を仄めかして、付き具合が絶妙の距離感。サラッと詠まれていたいますが、言えそうで、実はなかなかいえない巧さを秘めた句だなと思いました。(石川聡)

青色の葉をくわえてる白鳩を見たら足から石化が進む  蔭一郎
 ~終句がユニーク。(須藤田参四郎)

蚊の夢を叩いて遠いバイク   雷
 ~蚊は叩かれずに、道際の薮の葉の裏でうとうとしていた蚊の、夢だけを叩かれた。ナナハンのエンジンの音圧に。蚊が目覚め、慌てて飛び出した時には、バイクは遥かに遠ざかっていたのだった。          (石川聡)

苔の花ヘップバーンの胸の内  水の眠り
 ~この御句、好きです。      (とるばどーる)

回路図に兄とカンナが組み込まれ 抹茶金魚
 ~兄は真空管にカンナと名付け恋をしました兄は上野の塔から身を投げて回路図に入り込みました。私は兄とカンナが手をつなぐ回路図を風呂敷に包み汽車で日本海を旅しています。
大好きな句(蔦きうい)

スポンサーリンク

◆ 第69回句会報  ダウンロードはこちらから

第69回句会報 (PDF)

タイトルとURLをコピーしました