大会評(選者として振り返って)
2024年4月21日に佐賀県吉野ヶ里町で開催された「吉野ケ里川柳大会」は参加者約138名ながら10代~90代までのすべての年代が参加するという珍しい川柳大会であった。老人に若者の川柳はわからない(その逆の然り)と言われるが、今大会の各選者の選による上位句を並べると、とても興味深い結果が見えてくる。
例えば選者Aの選句を面白いと感じた人は選者Bが選句した句は意味不明だったろう。
また、選者Cの選句を面白いと感じた人は選者Dの選は退屈に感じたかもしれない。
そして、その逆もまた真であるのだ。
どの句も川柳であるしその選の幅こそが川柳の面白さと言える。
ひとつの大会でこれほどの幅を見せることができたのは稀有なことだし、過去のもっと規模の大きな大会でも叶わなかったことだ。肝心なのはどの句も否定しないでほしいことだ。
「わからない」「川柳観が違う」云々という否定は何も生み出さないから。
このような全世代参加型川柳大会が今後も増えることを期待したい。
第42回吉野ケ里川柳大会から上位句(抜粋)
※ 全入選句は今後発行されるであろう大会発表誌をご覧ください。
「走る」横尾信雄 選
人賞
個人的資産へジャッカルが走る くんじろう
地賞
山脈が走り文化を二分する 西村正紘
天賞
手花火の玉から走り出す去来 梅崎流青
「瓶」 川合大祐 選
人賞
カラフルなごはんですよがめっちゃ好き 松井あもん
地賞
サーモグラフィーにセクシュアリティな瓶 藤井智史
天賞
ゴーリキーもハルキも瓶の底である 月波与生
「許す」 藤田めぐみ 選
人賞
しかたないライトシアンなひとだから いわさき楊子
地賞
鉛筆の芯が尖ったまま許す 藤井智史
天賞
許されたあとも立ちたい良い廊下 雨月茄子春
「変身」 月波与生 選
人賞
繭を出る鏡も辞書も捨てちゃって 藤田めぐみ
地賞
よく聞いて昔あなたは象でした いなだ豆乃助
天賞
白鳥になった私を見せに行く 宮川さつ子
「雑詠」 梅崎流青 選
人賞
いのちとやぽっかり浮いている金魚 古賀喜句生
地賞
見上げれば銀漢独りじゃなかった 月波与生
天賞
大根を煮ているやわらかい時間 小代千代子