さみしい夜の句会報 第292号を発行しました

さみしい夜の句会

Image by Manfred Antranias Zimmer from Pixabay

さみしい夜の句会報 第292号(2026.9.20-2026.9.27)

#さみしい夜の句会報 第292号(2026.9.20-2026.9.27)を発行します。

第292号の参加者は31名でした。ありがとうございました。参加された方の1作品以上を掲載しました。掲載のない方、誤字脱字等ありましたらDMにてご指摘下さい。投句はテキストにてお願いします。テキスト以外の投句は週報に反映しませんのでご注意願います。

以前も予告いたしましたが #さみしい夜の句会 300回(300週)突破を記念して誌上大会を開催いたします。 #さみしい夜の句会 らしく、俳句・川柳の部と短歌の部の2部門での募集となります。選者の方は第1回から投句されてる方の他、本句会を長期にわたり支えていただいた方にお願いしました。近日中には詳細を発表します。よろしくお願いいたします。

◆ 参加者(31名)

佐井杜有、カオルル、クイスケ、鈴木正巳、汐田大輝、七澤銀河、しまねこくん、もふもふ、雪上牡丹餅、田中美蟲角、Nichtraucherchen、ひよどりよりこ、花円まど、片羽 雲雀、鈴音りんか、Tohiki Horikoshi、塩の司厨長、石川聡、空野つみき、笛地静恵、蔭一郎、季川詩音、もふもふ、雨声、まどけい、なさわご、不思議な話のアイン、何となく短歌、青海波、ベルトランの泪、月波与生

◆川柳・俳句

かぎ針が妹ばかり刺している クイスケ

双子から内臓だけをより分ける クイスケ

コスモスの輪唱を解く白うさぎ 七澤銀河

恋歌のサビを逆さに歌う犬 七澤銀河

ヌリカベが四方を囲む留萌線 汐田大輝

浮かぶのが嫌で駄犬のフリをする 汐田大輝

食パンを水玉にする遅刻癖 佐井杜有

燦々 さみしい道に石ころ 空野つみき

仲良しと限らぬ犬と犬の秋 しまねこくん

ペン立てに蛇口を並べ秋の水 しまねこくん

ドアの無いレンジは鳥の帰る場所 しまねこくん

摩擦熱満月を産む試験管 しまねこくん

天高し箪笥を積めば我が古墳 しまねこくん

食材の季語に乏しき秋の道 しまねこくん

Aメロは蒲田行進曲のサビ 雪上牡丹餅

月影に草冠を奪われて 蔭一郎

敬老の日のたましいの量り売り 笛地静恵

利休とは郵便箱の中の風 汐田大輝

名月や赤子抱えて途中下車 田中美蟲角

満月に架けた梯子を外される 片羽雲雀

秋深し底なし沼の更年期 もふもふ

下の名で呼ばれ振り向く良夜かな カオルル

消去法に耐える三日月 鈴音りんか

   *

富士山をハグする近さ秋日和 鈴木正巳

さよならといふ接続詞 Nichtraucherchen

ハードルを飛べない空や雁わたる ひよどりよりこ

ねえ、並ぶとコンペイトウみたいだね 花円まど

色即是空絶句して 塩の司厨長

ぬけがらを再利用したフリルです 花円まど

天の川マレーシアは時差1時間 季川詩音

秋晴れに洗濯日和の姿あり なさわご

祝日に川柳ひとつ作りけり まどけい

カクテルに溶ける太平洋の夜 アイン

   *

首の関節をひとつずつ外す長夜  月波与生

◆ 短歌

仲秋の月を櫓で観る人を見上げているよ。短歌階層。 石川聡

窓越しに雲を眺めるそういえば今年の夏をろくに知らない 何となく短歌

さみしさも集めて練って熱したら 綺麗な石になるかもしれない 青海波

◆詩・短文  

※ 投稿作品なし

◆作品評から

満月に架けた梯子を外される 片羽雲雀
 ~あれっ、珍しい、政治的? そうじゃないでしょうね笑
いつも素敵な句を有難うございます。(ベルトランの泪)

トレモロは脳を明るくする薬 汐田大輝
 ~音楽用語トレモロを「脳を明るくする薬」と定義し直す比喩の飛躍が魅力。音の震えが神経に直接作用するという身体感覚的な把握で、音楽体験を医学的言語で語り直すユーモアがある。軽やかな知的機知の句。(月波与生)

絶望に月とおんなじ名をつける しろとも
 ~絶望という抽象名詞に固有名を与える行為自体が詩的暴力性を持ち、月という遠く冷たい象徴との等置が効果的。感情に「名づける」という距離化の身振りが、痛みを直接叫ばず静かに突き放す語り口を生んでいる。(月波与生)

1/fのゆらぎに裁ち鋏 砂のような
 ~科学用語「1/fのゆらぎ」と裁ち鋏という手仕事の道具を並置し、不規則な自然律と人為的な直線の切断という対比が鮮烈。抽象概念を具体物で受け止める川柳的操作が効いている。実験性の高い一句。(月波与生)

命日が積もり秋めく吸い殻や 片羽雲雀
 ~「命日が積もり」という時間の堆積表現が秀逸で、喪失の反復性を暦の重なりとして提示する。吸い殻という卑近な物象に秋の気配を託す取り合わせも自然で、生活実感を伴った無常観がにじむ。(月波与生)

1つずつアルファベットが折れていく 雪上牡丹餅
 ~アルファベットという本来抽象的で摩耗しない記号を、「折れていく」という物理的な損耗の対象として捉え直した発想が鋭い。「1つずつ」という漸進性が、一気にではなく確実に失われていく緊張を持続させ、言葉という秩序が徐々に解体されていく不穏さを漂わせている。(月波与生)

燃える象燃えない象はすぐわかる 岡村知昭
 ~「燃える象」という非現実の像を出しておきながら、「すぐわかる」と平然と言ってのける確信が可笑しく、また恐ろしい。何が燃えるのか、何が燃えないのか、その基準は示されず、読者は分かる側に立たされたような不安を覚える。分類し断言する語りの暴力性まで感じさせる、不条理のなかに批評性を秘めた一句。(月波与生)

白樺のスーヴェニールになりたいの 空野つみき
 ~白樺のスーヴェニール」は旅先の土産物を思わせる。つまり自分を、誰かに持ち帰られ、思い出の中に置かれる存在にしたいという願いだ。口語の「なりたいの」が少女めいた甘さと切実さを帯び、片仮名まじりの「スーヴェニール」の響きが北国の澄んだ空気を運ぶ。抒情の手触りが美しい句。 (月波与生)

ゆびきりの根をゆりかごへ持ってゆく 蔭一郎 
 ~「ゆびきり」に「根」があるという発想が独創的。約束は指の先でなく根を張るものであり、それを「ゆりかご」へ持ってゆくとは、生まれる前、あるいは生まれた直後の場所へ約束を運ぶことだろうか。始まりと契りの結びつきに、祈りにも似た重さがある。「ゆびきり」「根」「ゆりかご」と柔らかな語が続きながら、どこか執念めいた気配が漂う。(月波与生)

里芋の下半分は窓ですよ しまねこくん
 ~「窓ですよ」と、まるで案内人が説明するような調子で、里芋の見えない部分に別の世界への開口を与えている。土中に隠れた半分は暗がりだが、そこが「窓」であるという逆説が詩になっている。「ですよ」の親しげな語り口が読者を煙に巻きつつ引き込む。(月波与生)

5秒だけ生きるティーバッグの糸 石川聡
 ~ティーバッグを湯に浸す数秒のあいだ、糸だけが縁から垂れて外の世界に触れている。その「5秒」を「生きる」と言い切った飛躍が句の核だ。ただし悲壮さはなく、乾いた軽みがある。「だけ」の限定が切なさと可笑しみを同時に立ち上げ、日常の小道具から存在論へ抜ける現代川柳の手つきが見える。(月波与生)

がちゃがちゃのがちゃとがちゃとが分けてあり カオルル
 ~ガチャガチャという擬音語そのものを分解し、「がちゃ」と「がちゃと」に仕分けるという言葉遊びが徹底している。意味内容よりも音と表記のずれに焦点を当てた実験性が強く、雑然とした音の塊が整然と分類される心地よさがある。(月波与生)

サロマ湖に蒋介石の馬が浮く 汐田大輝
 ~北海道の実在の湖と、歴史上の人物の愛馬という取り合わせの飛躍が大きく、意味をなぞるより映像の異物感で押し切る一句。なぜそこに、なぜ蒋介石なのかという説明を拒む不条理さが、かえって読後に強い残像を残す。(月波与生)

白線の手前を探る西瓜割り 七澤銀河
 ~目隠しをして西瓜に近づく緊張感を、「白線の手前」という境界線への逡巡として切り取った点が丁寧。踏み越えれば反則という規則と、見えない不安が重なり合い、夏の遊戯の一瞬の静止画が浮かぶ。派手な打撃の瞬間ではなく「探る」手前の動作を選んだことで、緊張の質感が生きる。(月波与生)

順風満帆に見える木魚 クイスケ
 ~木魚の丸みを帯びた形を「船」に見立て、静止しているはずのものに「順風満帆」という動的な言葉を与える視覚的機知が魅力。実際には打たれ続ける受難の道具である木魚を、あえて順調そうに描く逆説が効いており、見た目と実態のずれを笑いに転化する川柳らしい諧謔が光る。(月波与生)

秋高しサンタルチアを口ずさむ 鈴木正巳
 ~「秋高し」という和の季語と、ナポリ民謡という異国の旋律の取り合わせが涼やかな効果を生んでいる。抜けるような秋空の下、無意識に口をついて出る異国の歌という何気ない仕草に、開放感と郷愁がないまぜになった心情が滲む。(月波与生)

ヤドカリの捨てたお家の相続人 佐井杜有
 ~ヤドカリが引っ越したあとの空き殻を「相続」と呼ぶ発想の転換が眼目。本来所有権も継承もない自然現象を、人間社会の制度語彙で捉え直すことでどこか虚しさが漂う。誰も望んでいない「遺産」を押しつけられる感覚は、現代の空き家問題や継承疲れとも重なり、軽い言葉遣いの奥に社会性を感じる。(月波与生)

さよならといふ接続詞 Nichtraucherchen
 ~別れたのに続きがあるような気がします。もしかしたら、さよならは接続詞なのかもしれません。それは希望なのか絶望なのかは分からない。だからこそ良い。(季川詩音)

食材の季語に乏しき秋の道 しまねこくん
 ~見つからなくて不安になってきたんです。どれを見ても季語にはならないような気がしました。(季川詩音)

さみしさも集めて練って熱したら 綺麗な石になるかもしれない 青海波
 ~綺麗な感情は、ネガティブなところから生まれるのかもしれません。まるでダイヤモンドのように。マイナスなことを知っているからこそ他人に優しくできるのかもしれません。それが集まればさぞかし綺麗な石でしょう。(季川詩音)

第292号句会報ダウンロードはこちらから

第292号句会報(PDF)

タイトルとURLをコピーしました