さみしい夜の句会報 第291号を発行しました

さみしい夜の句会

さみしい夜の句会報 第291号(2026.9.13-2026.9.20)

#さみしい夜の句会報 第291号(2026.9.13-2026.9.20)を発行します。

第291号の参加者は38名でした。ありがとうございました。参加された方の1作品以上を掲載しました。掲載のない方、誤字脱字等ありましたらDMにてご指摘下さい。投句はテキストにてお願いします。テキスト以外の投句は週報に反映しませんのでご注意願います。

川柳を始めた頃、句会に行くと「酒を呑むために来た」的なおじいさんが数人いて、句会の中身はともかく話は面白く、句会後の懇親会を盛り上げていた。十数年経ってそういうおじいさんたちが句会から遠ざかり、コロナの影響もあって句会は句を勉強する場になり、懇親会もなくなったりした。川柳を論理的に語れる人は増えたが、居酒屋で箸袋を句箋にしてグダグダ句会を始める川柳バカはいなくなった。きっと今の方がまともなんだろうが、川柳バカ達と酒を呑みながら夜がふける迄袋まわしをやっていた頃が懐かしいし、戻りたい。

◆ 参加者(38名)

佐井杜有、クイスケ、七澤銀河、汐田大輝、鈴木正巳、カオルル、代本版、雪上牡丹餅、しまねこくん、岡村知昭、もふもふ、砂のような、Nichtraucherchen、ひよどりよりこ、まどけい、つきのさかな、しろとも、田中美蟲角、雷(らい)、宮坂変哲、snuddle、片羽 雲雀、水彩、笛地静恵、田面木擬き、空野つみき、雨声、蔭一郎、砂原妙々、何となく短歌、季川詩音、桑原 雑、石川聡、不思議な話のアイン、殺処分、青海波、12:02am_青森公務員、ユリ、月波与生

◆川柳・俳句

ヤドカリの捨てたお家の相続人 佐井杜有

秋高しサンタルチアを口ずさむ 鈴木正巳

順風満帆に見える木魚 クイスケ

カフェラテは全身痛で助からず クイスケ

ゴキブリを潰した指のキーホルダー クイスケ

白線の手前を探る西瓜割り 七澤銀河

もて余す夜のさざ波てのひらに 七澤銀河

オムレツの匂いを纏う元亭主 七澤銀河

トレモロは脳を明るくする薬 汐田大輝

無害だと説得されて飲む毛針 汐田大輝

ドッコ沼に沈めた金八先生の夢 汐田大輝

サロマ湖に蒋介石の馬が浮く 汐田大輝

がちゃがちゃのがちゃとがちゃとが分けてあり カオルル

5秒だけ生きるティーバッグの糸 石川聡

里芋の下半分は窓ですよ しまねこくん

目で追へば二匹に秋の蚊が増える しまねこくん

秋湿りパンツと共に夜を更かす しまねこくん

あじさいは雨の図面をひいていた 陰一郎

ふうふうと木のニュアンスの漏れだしぬ 陰一郎

ゆびきりの根をゆりかごへ持ってゆく 陰一郎

片眉の反対側に干すタオル 陰一郎

ネクタイの硬さになってゆく鼠 空野つみき

白樺のスーヴェニールになりたいの 空野つみき

今日までがひよこに髭を描く期限 岡村知昭

燃える象燃えない象はすぐわかる 岡村知昭

高配当株が本能で交尾 雪上牡丹餅

気分だけキハダマグロの日本人 雪上牡丹餅

1つずつアルファベットが折れていく 雪上牡丹餅

総理だと思ってたのはぬいぐるみ 雪上牡丹餅

命日が積もり秋めく吸い殻や 片羽雲雀

1/fのゆらぎに裁ち鋏 砂のような

絶望に月とおんなじ名をつける しろとも

秋寂しハンカチ落としにエントリー しろとも

   *

真っ白な名刺はきっと反抗期 もふもふ

シャンソンだけを背負つてゆく Nichtraucherchen

秋うらら天使にわかに伊達めがね ひよどりよりこ

初恋のひとに背を向け芋煮食ふ 田中美蟲角

半分は捨て身になってかるくなる 雷

屍になっても加齢臭がする 宮坂変哲

秋寂しレンジの音に返事する 水彩

6月が真っ逆さまになっただけ 田面木 擬き

黒い家を消去します ドアの裏 アイン

敬老や祖母に使いを頼まれる まどけい

星屑の overdose 独り寝る 殺処分

   *

肘の角でつつく世界の不備  月波与生

◆ 短歌

火をつけて 暖をとろうよ思い出で戻らぬ日々が灰になるまで つきの さかな

弱いままそばにいようよ孤独さえ君がいないと感じられない snuddle

投影図 雨の世界を語ってる少し甘ったるいジャムの窓蓋雨声

目に映すガラクタだらけの部屋に似た自分を大事に思うなど無理  何となく短歌

さみしさも集めて練って熱したら 綺麗な石になるかもしれない 青海波

窓を開け水槽みたいな夜を入れカーテンの影ゆっくり泳ぐ 砂原妙々

ぬばたまの髪のしづくに花一輪薔薇のかほりの返り血浴びて 桑原 雑

◆詩・短文  

遠距離恋愛って、いま居ることのできる最短距離だったりしませんか? 季川詩音

◆作品評から

秋湿りパンツと共に夜を更かす しまねこくん
 ~夜更かしはつい誘惑されちゃうよね!でも、健康にも気を付けて。(12:02am_青森公務員)

み仏の片目うっすらセミクジラ 汐田大
 ~仏像の半眼を「片目うっすら」と読み替え、そこから海のセミクジラへ飛ぶ大胆な取り合わせ。「セミ」の音が蝉や「半」を連想させ、言葉遊びの層も重なる。飛躍の面白さは大きいが、なぜ鯨なのかの必然は読者の補完に委ねられ評価は分かれるか。(月波与生)

コロッケに金木犀が混ざる昼 佐井杜有
 ~匂いの混淆を「混ざる」の一語で成立させた、生活感のある句。揚げ物の匂いと金木犀の甘い香りが、昼の街でふと重なる。秋の到来を嗅覚で知らせる。景は鮮やかだが提示で完結しており、人間への視線や皮肉といった川柳的な切り口は薄い。(月波与生)

命日が積もり秋めく吸い殻や 片羽雲雀
 ~「命日が積もる」という把握が独創的。亡き人の日々が灰のように堆積し、その先に吸い殻の山が現れる。「積もり」の複数性が、一つの死ではなく重なる弔いを感じさせる。ただ「や」の切れ字で詠嘆が閉じ、川柳としては情の主張がやや強い。「吸い殻」で止める形も検討できそうだ。(月波与生)

坂道は秋になつても坂のまま しまねこくん
 ~旧仮名の「なつても」が、とぼけた古風な口調を生み、季節が移ろっても坂は坂だという頑固な事実を淡々と語らせる。一方、上五の「坂道」を下五で「坂」と言い換える運びは、読者の理解を先回りして説明している。「のまま」の部分に別の意外性を預ける余地があるかもしれない。(月波与生)

バファリンの半分だけを作る店 雪上牡丹餅
 ~「バファリンの半分は優しさ」という広告コピーが下敷きにある。優しさではない側の半分、つまり効能だけを商う店が現れ、可笑しみと薄ら寒さが同居する。誠実な分業とも、優しさ抜きの合理とも読める両義性が魅力だ。ただし元ネタを共有する読者に強く働く句。(月波与生)

秋霖や海女ばかり来る美容室 鈴木正巳
 ~潮の匂いを纏う海女たちが、非日常のはずの美容室に日常のように集う。その取り合わせの奇妙さが眼目。「秋霖」の陰々とした天候が、海女という力強い生業のイメージに湿り気と物寂しさを与え、明るい美容室との対比を際立たせる。(月波与生)

荻窪は十二単衣の群生地 汐田大
 ~地名「荻窪」に「群生地」という植物・生態系の語を接続し、そこへ十二単衣という宮廷装束を配する飛躍。まるで植物図鑑の記述のように土地を分類する視線が、現実の街に幻想的な奇観を出現させる。言葉の異種配合。(月波与生)

秋場所や不味き飯なきとんかつ店 カオルル
 ~相撲の秋場所という季節感の中に、「不味き飯なき」どれを食べても外れがない店へ信頼を詠む。大きな否定を重ねて肯定に転じる語法が軽妙で、力士的な満腹感・豪快さとも響き合う。読後に実際に食べたくなる、素朴な実感の強さが魅力。(月波与生)

短刀を抜き出すまでの社交術 七澤銀河
 ~抜刀という暴力的行為の手前に「社交術」を置く逆説が眼目。礼儀・段取り・体面といった人間社会の作法が、殺意や決断をむしろ丁寧に飼い慣らしていく。刀を抜く瞬間ではなく「抜くまで」に焦点を当てた構成の妙。(月波与生)

家老が値上げされていく音 クイスケ
 ~「家老」という身分・格式を持つ語に「値上げ」という即物的経済語をぶつける飛躍。雛人形や置物としての家老像を想起させつつ、実は物価そのものの不穏な軋みを描く。「音」で終える処理により、目に見えぬ値上げの過程を聴覚化している。(月波与生)

敬老や祖母に使いを頼まれる まどけい
 ~人への親切もあと何回できるのか分からなくなってきました。頼まれるというのは幸せなことかもしれません。(季川詩音)

秋高しサンタルチアを口ずさむ 鈴木正巳
 ~明るい句がすきです(ユリ)

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