さみしい夜の句会報 第281号を発行しました

さみしい夜の句会
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画像提供:ジル・ウェリントン( Pixabayより)

第281号の参加者は41名でした。ありがとうございました。参加された方の1作品以上を掲載しました。掲載のない方、誤字脱字等ありましたらDMにてご指摘下さい。投句はテキストにてお願いします。テキスト以外の投句は週報に反映しませんのでご注意願います。

今日から毎日歩いた風景を撮っておくことにしました。題して『光の採集』。特別な風景を求めるのではなく、日々の暮らしの中で、ふと立ち止まった光を一つずつ持ち帰っていきたいと思います。そんな小さな採集をしばらく続けてみます。

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◆ 参加者(41名)

クイスケ、七澤銀河、小沢史、佐井杜有、空野つみき、しまねこくん、カオルル、山田真佐明、笛地静恵、Nichtraucherchen、ナル、松本清展、ひよどりよりこ、川瀬十萠子、しろとも、雷(らい)、非常識犬猫苑、真白(ましろ)といいます。、鈴木正巳、汐田大輝、桑原 雑、あづみのマルコ、石川聡、非常口ドット、田中美蟲角、安藤 蜜豆、牛田悠貴、片羽 雲雀、山代甘倫、そうこにし、まどけい、うつわ、砂のような、季川詩音、東こころ、水の眠り、akao、不思議な話のアイン、宮坂変哲、麻乎a.k.a踊る最下層、月波与生

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◆ 川柳・俳句

心電図政治批判の代弁者 七澤銀河

嫌っている人に小指を差し出され クイスケ

好き嫌いしない主義だがデモ隊へ クイスケ

出し尽くす歯磨き粉から関西弁 クイスケ

ウクレレをサッカーしても離さない 山田真佐明

タマシイのつぎは大事な昼休み 山田真佐明

夏型の気圧配置が猫を飼う 山田真佐明

腹筋の割れ目を埋める心太 しまねこくん

親一人蚊一人誤植ではなくて しまねこくん

朝顔に架かる命の電話だよ しまねこくん

向日葵に首輪を嵌めてお散歩へ しまねこくん

テレビから出てまた戻る揚羽蝶 しまねこくん

暴力は生椎茸の味がする 汐田大輝

無医村がカリブの色に染まる頃 汐田大輝

湯たんぽの半島に住む代理母 汐田大輝

新しい朝が来るなら鰐を飼う 汐田大輝

AIがアライグマなら告訴する 汐田大輝

地頭のおいしいとこに甘い印鑑の朱をおくれよ 牛田悠貴

また来たよと言ったきり動かない防人たちの合唱コンクール 牛田悠貴

混ぜないでペッパーランチ食べる父 非常識犬猫苑

地獄めくものをひっそり裏返す 雷

梅雨明のモネの池なるところかな カオルル

大夕焼伸びる渋谷の自撮棒 カオルル

茹でたての牝ライオンを刮げ取る 空野つみき

撥条・こころが・こころがせまい 空野つみき

すこしずつ余白ふやして霧になる 小沢史

内耳からはみ出てしまう油蝉 佐井杜有

落ちていた顔に付け替え消退期 片羽雲雀

   *

売り切れた眠れない夜 Nichtraucherchen

激痛の好みは造幣局の札119番今でも呼べる 松本清展

死にゆけば祭囃子の微かなり ひよどりよりこ

しわしわの肯定感よ雨が降る しろとも

凌霄花は凌霄花だけの ( 午の陽の )色 石川聡

暑いねとつぶやいてゐる抱き枕 田中美蟲角

懐いたらもう美しくない尻尾 そうこにし

七月の厚さを知らず白天井 うつわ

七夕の夜彦星にLINEする 東こころ

七月七日ピース揃わないまま恋 akao

コンビニで傘を買い急ぐ七夕や まどけい

ツクヨミだったポテトチップスだった アイン

「寄り添う」とはなんにもしないこと左翼 宮坂変哲

   *

抽象画になって光るのをやめる 月波与生

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◆ 短歌

豪雨来るガメラの彼方轟轟と戦場降水帯前線 笛地静恵

暗がりのスマホに増えるTLは電波の先のそれぞれの夜 ナル

愛すとは22センチその一歩 陽炎もえて 夏終わりゆく 真白

夏肌の少女の黒き目の縁に虫の脚めく睫毛も濡れて 桑原 雑

炎天や道の向かうに影ひとつ追えば残れる蝉の抜け殻 あづみのマルコ

ハイボールたらふく呑んでそのまんま寝る幸せか不幸せな日 非常口ドット

君の目にうつる私があまりにもきれいで見惚れてしまっただけよ 安藤 蜜豆

ビルの上 独りでに立つ 夜の街 最期に聞こえたごめんなさい 山代甘倫

瑠璃色を粉々に割り空へ撒く度数の合ったとんぼのめがね 砂のような

水槽の底のビー玉苔むしてすっかり居着いたメダカの泳ぐ 水の眠り

自分がとても嫌すぎて 自分を死なすように送信を消す 麻乎a.k.a踊る最下層

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◆ 詩 ・ 短文

幸せな人ほど幸せを語らず、 不幸な人ほど幸せを語る。 【季川詩音】

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◆ 作品評から

テレビから出てまた戻る揚羽蝶 しまねこくん
 ~きっと間違えてしまったんですよ。行く方向または、出る方向だと思ったら、全く知らない人の家だったんです。(季川詩音)

枯枝の隙にあばらを刺しておく 汐田大輝
 ~あばらと枯枝の置き換えによって意表を突かれる。 あばらの隙に枯れ枝を刺してみたくなる!(石川聡)

羽根のないホールトマトに自惚れる 汐田大輝
 ~言葉の連結というフェーズにおける、二段階のズラしテクニックに痺れる!(石川聡)

夕刻は来世を想う油淋鶏 汐田大輝
 ~夕刻のユウと油淋鶏のユーの響きあい。韻律。 夕刻は、の助詞「は」によって、夕刻は油淋鶏であると結構する言い切りに川柳的特性が。 夕刻というリアルな時間と来世という非日常の時間帯の対比に感覚のズラしが顕れる。(石川聡)

今どきのブロッコリーは爪を塗る 汐田大輝
 ~昔ってブロッコリーあったっけ?と惑わされる。 ブロッコリーに爪があるとする発想の意外な楽しさ。 言葉が言葉の連結を産んでいく「言葉派」の匂い。 〈いけにえにフリルがあって恥ずかしい 暮田真名〉 の発想との通奏低音。(石川聡)

薬玉に蛍を仕込む老スパイ 佐井杜有
 ~お祝いの席で割られる「薬玉(くすだま)」に、あえて「蛍」を仕込むという、ディテールが映画的な一句。(月波与生)

恋をしてパセリもぐもぐしたりして カオルル

~恋という一大事を前にして、なぜか料理の隅っこにある「パセリ」を「もぐもぐ」と無心に食べているという、カメラワーク。恋の初期衝動の瑞々しさと滑稽さが愛おしい。(月波与生)

水槽にエンドルフィンを二匹飼う しろとも
 ~脳内麻薬(快楽物質)である「エンドルフィン」を、まるで熱帯魚のように「水槽で二匹飼う」という発想が、現代的で少し病み気味なエゴイズムを感じる。(月波与生)

どんぐりを王様にする未来人 空野つみ
 ~現代人にとってはただの秋の落とし物である「どんぐり」が、「未来人」にとっては、失われた古代の聖遺物か王様のように崇められている。その時間的なギャップが切なくもチャーミング。(月波与生)

裏切りの津軽海峡 Nichtraucherchen
 ~ジュ二ーク。 昭和の歌謡曲が持つ哀愁漂うパブリックイメージを、「裏切り」というドラマチックな単語でひっくり返す。ワイド劇場のタイトルロゴがドーンと画面に現れたかのような句。(月波与生)

母子像に抱きしめられて眠くなり 岡村知昭
 ~無機質な作品である「母子像」から、ぬくもりや包容力を生身の体で受け取ってしまったときの無防備な心地よさ。「眠くなり」という素朴な着地が、鑑賞者の緊張をふっと解きほぐす。(月波与生)

業務用筋力と家庭用胆力の在庫 coma
 ~社会の歯車として消費される「業務用筋力」と、地味な日常のトラブルに耐えるための「家庭用胆力」。そのどちらもが「在庫」として目減りしていくという感覚は現代人のリアルな疲弊感を捉えている。(月波与生)

樹海から届く即身仏の鈴 七澤銀河
 ~ 不穏でありながらもどこか静謐な世界観を持つ一句。生と死が曖昧に混ざり合う「樹海」というトポス(場所)から、本来そこには存在しないはずの「即身仏の鈴」の音が聴こえてくる。この幻聴のような響きが読む者の耳奥に残る。(月波与生)

否定から入らないでよ夏至ぶるの?  クイスケ
 ~口語のリアルな響きと「夏至ぶる」という造語のセンスが絶妙にマッチした一句。「否定から入らないでよ」という日常的な人間関係のコミュニケーションの摩擦から、一年で最も昼が長い夏至の、どこか湿度を孕んでジリジリと引き延ばされるような空気感を瑞々しく表現する。(月波与生)

蛍から生まれた蛍だけが死ぬ 白水ま衣
 ~トートロジー(同義語反復)の形式を用いながら、生と死の本質的な哀哀を突く抒情的哲学的な句。「生の本質はそのまま死の理由でもある」という絶対的な自然の摂理が読む者に迫る。(月波与生)

本棚にたくあんだけは置きなさい 山田真佐明
 ~ 知の象徴である「本棚」と、あまりにも生活臭の強い「たくあん」という、対極にある二つの要素の衝突。本を読んで頭でっかちになるなという戒めか、あるいはカビ臭い知識のなかに一切れの生命力(あるいは強烈な匂い)を仕込んでおけというユーモア溢れる批評性か。(月波与生)

清盛の袖から線状降水帯 汐田大輝
 ~ 歴史上のビッグネームである平清盛と、近年の気象用語である「線状降水帯」という時空を超えた言葉の取り合わせが非常にダイナミック。平家物語の持つ無常観やダイナミズムを、「線状降水帯」という現代的語句で蘇らせる。(月波与生)

日傘から日々傘へ日々日々傘へ しまねこくん
 ~「ひがさ」「ひびかさ」「ひびひびかさ」という、音の連続性と増殖が心地よいリズムを生み出している一句。最初は熱中症対策の「日傘」だったものが、連日の猛暑で手放せなくなるにつれて、文字通り「日々の傘」となり、最終的にはゲシュタルト崩壊を起こすように生活のすべてを侵食していく。(月波与生)

売り切れた眠れない夜 Nichtraucherchen
 ~買えなかったんですね。先着順だった?抽選だった?寝れない人が多いのは、それが原因なのかもしれません。(季川詩音)

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