さみしい夜の句会報 第272号(2026.5.3-2026.5.10)
第272号の参加者は42名でした。ありがとうございました。参加された方の1作品以上を掲載しました。掲載のない方、誤字脱字等ありましたらDMにてご指摘下さい投句はテキストにてお願いします。テキスト以外の投句は週報に反映しませんのでご注意願います。
今号は〈非常識犬猫苑〉さんが怒涛の投句をされ、その多くが掲載となりました。長く週報を発行していると、時々こういう方が現れます。初期の頃から投句されていた方がぽつりぽつりと御無沙汰になり、寂しくなったなあと感じる間もなく、新しい方が現れてはおもしろい作品をどんどん投じてくる。この繰り返しで、272週も続いてきた。句会の場は生きている、そのことをつくづく実感します。
◆ 参加者(42名)
クイスケ、七澤銀河、山田真佐明、鈴木正巳、しまねこくん、石川聡、山代甘倫・裕春、あしあと、もふもふ、田中美蟲角、汐田大輝、織部ゆい、銀星星郎、Nichtraucherchen、カオルル、非常識犬猫苑、あづみのマルコ、非常口ドット、青海波、水の眠り、akao、大山 晶子、つきの さかな、coma、桑原 雑、東こころ、季川詩音、山羊の頭、ケムニマキコ、しろとも、白水ま衣、空野つみき、川瀬十萠子、雨声、宮坂変哲、ホワイトアスパラ、まどけい、なさわご、帰ってきた笛地静恵、塩の司厨長、ビッケたん、月波与生
◆ 川柳・俳句
はっしゃびよーサロメも県民割かいね クイスケ
少しずついちじくになる親知らず クイスケ
掃除機の副作用としての拒食 クイスケ
ジャガイモの芽を目印に蜂起する 佐井杜有
童謡にキャベツ炒めと水煙草 空野つみき
鏡筒に昔からある注射痕 空野つみき
反射炉がネモフィラだった頃の空 空野つみき
だれひとり繁殖しない季節だよ 空野つみき
簡単な設定だけで詐欺にあう 山田真佐明
1日の3分の2で夢判断 山田真佐明
暗い部屋断捨離リストを読んでいる 田中教平
ぬるぬるを取つた蛙を客室に しまねこくん
胡麻塩を胡麻と塩とに分ける夏 しまねこくん
父の日を触れば何処も電子音 しまねこくん
ぼく以外みんな剥きエビ症候群 汐田大輝
右肩で聞かせてほしい後日談 汐田大輝
母の日の母の美顔器借りてをり カオルル
水瓶に水の満ちゆく立夏かな カオルル
虫歯からあふれ出て来るナポリタン 七澤銀河
スプーンを使えぬ国で出るプリン 非常識犬猫苑
寂しいと動かなくなる腕時計 非常識犬猫苑
町内の爺の下手くそな影絵 非常識犬猫苑
あ?お前見ない顔だな はいチーズ 非常識犬猫苑
浅漬けと呼ぶには少しアダルト か 非常識犬猫苑
庭先のおしべもふもふ Innocent 非常識犬猫苑
さっきから進まぬ箸と母の骨 非常識犬猫苑
パーソナルカラーガン無視パリピ夏 非常識犬猫苑
村長を尊重します やっぱ嘘! 非常識犬猫苑
泣きながらでも食べようか朝マック 非常識犬猫苑
人懐っこいから空き箱向きだね coma
地図上で言えば卑弥呼の夢の中 白水ま衣
*
微動だにしない論陣として初夏 石川聡
裁かれし蕾のままのカーネーション もふもふ
鶯や父の手塩の枝の先 田中美蟲角
心臓を増やして減らす 銀星星郎
千と一夜と三国志 Nichtraucherchen
母の日やもうシーソーは動かない akao
会えなくて今日も泣いてるリンドール 東こころ
股割りの稽古に泣くや柿若葉 鈴木正巳
蓮の香やフランス軍は降伏す 季川詩音
裏目でてハッと驚きかえるワシ 山羊の頭
ベーコンが真夜のシンクにしんでゐる ケムニマキコ
薫る夜サンダルは番い探してる しろとも
瑠璃金剛瑠璃銀と鳴る水琴窟 川瀬十萠子
紙色の月が綺麗だ君が好き 宮坂変哲
つまんで満足した ことに する ホワイトアスパラ
エヴァンスを聴いて眠るや立夏来る まどけい
黄金生活習慣病 塩の司厨長
みじめなり五月雨の中吸う煙草 ビッケたん
*
薫る夜を一滴(ひとしずく)舐め母を売る 月波与生
◆ 短歌
薫子《かおるこ》と言う字を裾に縫い留めて夜道に潜む河童を口説く 七澤銀河
曇ってる空を選んで鳥かごを開けて帰りを期待している 水の眠り
父親の遺品整理のメルカリにまあ大胆な値下げ交渉 非常識犬猫苑
地下室も煙突も屋根裏部屋も知らず私は死んでいくのね 非常識犬猫苑
シャバシャバのカレー部門はこちらです スープカレーは向かい側です 非常識犬猫苑
放送後5分以内に電話して ねえさみしくて耐えられないの 非常識犬猫苑
年末の冗談みたいな訃報を知らん振りして潜った鳥居 非常識犬猫苑
そうじゃないって言ってくれよきみだけは雄の一人じゃなくてきみだと つきの さかな
*
努力して がむしゃら駆け抜け 得たもの何? 顔は笑って心は虚っぽ 山代甘倫・裕春
カフェインとイブプロフェンに生かされて これが大人? それならいっそ あしあと
哀しみを拐う風すら気づかない 色を失くした わたしのこころ 織部ゆい
仕分けられぬ手紙のやうに胸にあり終電ごとの君への未練 あづみのマルコ
逆向きの電車を送り楽しげな終着駅の名前に浸る 非常口ドット
ほかほかのごはんで泣いちゃう日もあって噛み締めるほどに柔い甘み 青海波
「すいません、からすまるまるふとるまち、どう行ったらいいですか」 大山 晶子
行かぬ春 こけつまろびつ夏の花 聴く人ぞなき秋の風の音 桑原 雑
深い懐 時代を越える マツケンサンバの 盛り上がり なさわご
天国にいけますか?ヨル死ぬまでに 言葉のかけら貨幣で渡す 雨声
◆ 詩 ・ 短文
言葉を規制し
感情を規則化し
瑕疵を偽りと呼べ
原子力が
ナフサが呪い
禁書目録が
式神を飛ばす
今こそ
言葉を解き放ち
感情を自由から大空へ
瑕疵を振り返る権利を
原子力が
ナフサが慰め
禁書目録は
焼いて肥料にする
水田の一助とする (山田真佐明)
猫はかわいい
猫はうんちをした
お尻の穴を
舌でなめて
きれいにすると
その口で
ぼくの口に
キスをする
猫はかわいい (笛地静恵)
◆ 作品評から
海女小屋のパリリとハッピーターンかな カオルル
~伝統的な海女小屋に、ジャンクなスナック菓子である「ハッピーターン」が侵入する。「パリリ」は伝統文化がが大量消費社会に取り込まれていく音。(月波与生)
鴨川で和製英語が響き合う 汐田大輝
~京都・鴨川という情緒の象徴的な場所で和製英語が飛び交う。この偽物感の共鳴がインバウンド消費の空虚を写し取っている。(月波与生)
名言はそんなに人が好きじゃない 白水ま衣
~言葉に対する「不信」。「名言」を擬人化し、「名言」のメッキを剥がしそれが人間を拒絶しているとする洞察。(月波与生)
痛いとき右手を挙げる自傷癖 非常識犬猫苑
~自傷して右手を挙げるその先には誰もいないのかもしれない、という絶望的な静寂を感じる。(月波与生)
人と人声と声とがジュラシック 山田真佐明
~「ジュラシック」という言葉が現代のコミュニケーションを一気に野生の咆哮へと解体する。人間関係の裏側に潜む、制御不能な異物感。(月波与生)
サウダージ ダブルベッドは転る舟 七澤銀河
~「サウダージ」という重い郷愁を置きながら、ダブルベッドを「転(まろ)ぶ舟」と表現。安定しているはずの家具が不安定な漂流物へと変貌しシーツの海で溺れるような揺らぎを感じる。(月波与生)
ほかほかのごはんで泣いちゃう日もあって噛み締めるほどに柔い甘み 青海波
~ご飯を食べられることの有り難み。ベトナムのことわざに、「水を飲んだら水源を思い出せ」というのがあります。水には水源があるように、恩や感謝を忘れるなという意味だそうです。それを思い出しました。(季川詩音)


