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さみしい夜の句会報 第269号(2026.4.12-2026.4.19)
第269号の参加者は51名でした。ありがとうございました。参加された方の1作品以上を掲載しました。掲載のない方、誤字脱字等ありましたらDMにてご指摘下さい投句はテキストにてお願いします。テキスト以外の投句は週報に反映しませんのでご注意願います。
先日、青森市の川柳大会で「川柳は素人なので」と断る映画批評家が選者を務めるという場面に居合わせ、選者の資質と任命責任について考えさせられた。参加者も選者もハッピーになれない披講とはああいうものか、と。
そのつぶやきに対し、尾藤川柳氏から丁寧なコメントをいただいた。
規模に関わらず、選者を選ぶ際の一考としていただければ幸いです。
※尾藤川柳氏のコメント※
もちろん素人でも選をすることは可能です。特に一芸に優れた方は、その専門のモノサシを川柳に使っていただければ、専門川柳家の高点とは異なる面を見出していただける可能性があります。ただ、句会では鑑賞力と批評力なくして選者を務めると、映画批評家という素人よりもむしろ悪い——「私の好みでいただきました」という選に陥りかねません。選は、明日の川柳の在り方をも左右しかねない行為です。「句会ごっこ」であれば楽しめればそれでよいのですが、意識を持った組織では、選者を選ぶ際にも組織自体が責任を持たなければなりませんね。
記事の全体は https://shinyokan.jp/senryu-blogs/issen/652/ に詳しいので、気になる方はご参照ください。
◆ 参加者(51名)
クイスケ、七澤銀河、しまねこくん、鈴木正巳、汐田大輝、憚譚之傍見、なさわご、ホワイトアスパラ、akao、岡村知昭、白薔薇、Nichtraucherchen、銀星星郎、山田真佐明、月階柚、空野つみき、ふくろうたかこ、蔭一郎、カオルル、涼、田中美蟲角、宮坂変哲、あづみのマルコ、coma、松本清展、桑原 雑、しろとも、東こころ、田中教平、天然石アクセサリーkiki’s、雷(らい)、白水ま衣、水の眠り、笛地静恵、胡椒 黒、織部ゆい、雪平千星、非常識犬猫苑、まどけい、雨声、上野、つきの さかな、季川詩音、非常口ドット、Tohiki Horikoshi、塩の司厨長、つきかけ。、三明十種、ふさえ、すぅ、月波与生
◆ 川柳・俳句
たらこスパゲティが絡む右手首 クイスケ
早寝とはシリコン製の型である クイスケ
ウルトラの母もおそれる引き落とし 山田真佐明
登山口吹き出る汗と山マダム 山田真佐明
なまず撮る髪をかきあげ小栗旬 山田真佐明
パッシング済ませて通るバスツアー 山田真佐明
肩書きの多い抹茶と逃避行 山田真佐明
ロールパン中毒海峡の波高し 汐田大輝
火口まで来たのに山形牛ばかり 汐田大輝
ラケットの下半分がジンバブエ 汐田大輝
腐海まで走りつづける東京マラソン 汐田大輝
水牛がオーボエを吹く真似をする 汐田大輝
スマホへとインしてるとき皆無言 田中教平
現場にて風の音聞く仕事かよ 田中教平
どのベン図から抱擁を受けてきた 胡椒 黒
ぺんぎんは番号順にもえあがる 蔭一郎
たいがいは弱火で焦げるお友だち coma
陽炎の先にうつすら切り取り線 しまねこくん
チューリップ寝かせる時は花瓶ごと しまねこくん
浮上した海女のタルタルソース和え しまねこくん
赤いから祀つて貰へない綿毛 しまねこくん
遠足の靴より砂が砂丘ほど カオルル
時計屋に白い網タイツの気配 空野つみき
だってだってだって河馬にも親不知 岡村知昭
バザールで人は祈りを買い漁る 七澤銀河
*
AIは友達ぐらいがちょうどいい なさわご
何者かになりたくて買う春キャベツ ホワイトアスパラ
あめんぼう「大丈夫よ」を背負ってる akao
永遠に来ぬバス待てりかひやぐら 萠叶
咲いてゐたのは泣き桜 Nichtraucherchen
ハイウェイの救急車去る ふくろうたかこ
生きてても 仕事ばかりで つまんない 涼
筍の一本有りてこの孤独 田中美蟲角
どちらかといえばキスよりチューが好き 宮坂変哲
胸痛の老舗に迫るのれん分け 松本清展
不貞寝する九回表金曜日 しろとも
会えたので今日は優勝コインチョコ 東こころ
待つしかないことが薄れる春に残る 雷(らい)
「地球儀の歩き方 パリ」 白水ま衣
私こそ死ぬべき命 ポテト食み 非常識犬猫苑
手放せぬ 風船握り 花曇り 上野
鱵とは決別をした母ありて 季川詩音
入学の子らは賑やか記念写真 まどけい
どう足掻いても夜は夜 塩の司厨長
蕎麦殻のマクラ、波打ち際を石 つきかけ。
花の雨すこしばかりか先の居る 三明十種
*
Googleに教えたくない穴の奥 月波与生
◆ 短歌
「つづきさん」と空耳される名を持って、前世で月を築いた気がする 月階柚
虹色の色鉛筆を買うだろう 記憶修正主義者の僕は 憚譚之傍見
*
思い出を継ぎ足すように目をつむる21世紀で果てるまで 銀星星郎
助走とはいまだ触れざる距離なれど胸の奥にて今ぞ跳びゐる あづみのマルコ
後悔がことばの端切に虚を穿ち 糸がもつれて こぶになりけり 桑原雑
無表情という表情を貼り付けて スマホに感情を投げ付ける 天然石アクセサリーkiki’s
ひとりでも並木のように立つ人をかき分けめざす人気のランチ 水の眠り
やっぱりなそういうことか認めつつ喉につかえる朝のトースト 笛地静恵
待ってるの言葉にやっとただいまを告げた日に知る消された居場所 織部ゆい
少しずつ置いてかれてく恐怖とか隠して生きてみる、くるしい夜 雪平千星
きみの言う「みんな」のなかに私などいるわけないのに期待するから つきの さかな
天使なら図鑑で見たよ 替え時の箒もどきが温くてキモい 非常口ドット
春雨に相合い傘の肩寄せて 袖擦り合わせ心和らぐ 登志喜
◆ 詩 ・ 短文
魔法についての話をしていた。
この世界では龍になることも、龍を飼うこともできないらしい。
僕はプラフォークを三分割した。
鏡に息を吹きかける。
君との声を姿を約束をぼんやりと眺めている。
咳払いが不機嫌の合図だってことも知らないまま、僕たちは大人になった。(空野つみき)
◆ 作品評から
赤いから祀つて貰へない綿毛 しまねこくん
~祀られるべき綿毛が「赤いから」祀ってはだめとされる。「赤い」綿毛に怯える人たち。「だめといったらだめ」との答えにならない答え。赤いのは綿毛のせいではないのに。このままでは「祀つて貰へ」なかった綿毛の恨みが、この世を赤く染めかねない。今から祀っても、遅くはない。(岡村知昭)
朧夜の陰毛ゆらりゆらりかな カオルル
~「朧夜」という古典的な美意識に、生々しい「陰毛」を投げ込む大胆さ。エロスを崇高な自然現象へと昇華させており、身体のパーツが風景に溶け込んでいくような陶酔感がある。(月波与生)
水牛がオーボエを吹く真似をする 汐田大輝
~「水牛がオーボエを吹く真似をする」。水牛と聞くと東南アジアを思い浮かべます。オーボエとの意外性も面白いです。いまにも騒がしい街並みが見えてきそうです。(季川詩音)
ロールパン中毒海峡の波高し 汐田大輝
~わはは。笑いました。「ロールパン中毒海峡の波高し」。ロール(役割)が、ねじれている。バンズも、中身のドナルドダックも。中毒にもなります。ウマい。山田君、休まずに、座布団を一枚、やっちくれ。(笛地静恵)
きみの言う「みんな」のなかに私などいるわけないのに期待するから つきの さかな
~さ、刺さるわーそーなの……きっともうあの人のなかに私はいないの……でもまだ期待しちゃうの……バカね、私って(ふさえ)
肩書きの多い抹茶と逃避行 山田真佐明
~「肩書きの多い抹茶と逃避行」。「〜賞を受賞」、「(国名)国民からも高評価!」、「あのアスリートも飲んでいる!」のような評価を得ているのではないでしょうか。多すぎてなんなのかわからないものもあります。(季川詩音
筍の一本有りてこの孤独 田中美蟲角
~伸びれば竹藪、大家族 (すぅ)
バス停のキリンがいなくなっていて春になったと納得をする 月階柚
~キリン(重機か看板か、あるいは虚構か)の不在を季節の変わり目として受け入れる。風景の欠落を「納得」の根拠にする感性が現代的。春という季節の空虚さ、を詩的に捉えている。(月波与生)
秒針の狂った兄と飲むホッピー 佐井杜有
~「秒針の狂い」という表現が面白い。精神の変調や社会生活のズレを、否定的にではなく、単に「刻むリズムが違うだけ」として受け入れてる。安価なホッピーという具体物がそのズレた時間軸を優しく肯定する。(月波与生)
人形の前後左右に汽車を置く 空野つみき
~「前後左右」という幾何学的な配置が人形の持つ不気味を際立たせている。汽車という動くものに囲まれながら中心で動かない人形。その閉塞感が日常のふとした瞬間に現れる狂気を描写している。(月波与生)
ジェンダーが分かれる前のむつごろう しまねこくん
~「むつごろう」という、泥にまみれ原初的な生命力を感じる生物を起点に、性の未分化な領域を突いた一句。社会的属性が固定される前の、混沌としてる生命の在り方を表現。分類への静かな抵抗が感じられる。(月波与生)


