UnsplashのSimone Roederが撮影した写真
さみしい夜の句会報 第245号(2025.10.26-2025.11.2)
第245号の参加者は52名でした。ありがとうございました。参加された方の1作品以上を掲載しました。掲載のない方、誤字脱字等ありましたらDMにてご指摘下さい投句はテキストにてお願いします。テキスト以外の投句は週報に反映しませんのでご注意願います。
アンソロジー「さみしい夜の句会」4集を10月に発行しました。今まで1年に1冊発行してきましたが第5集は300回(週)を記念のイベントとして発行したいと思います。以降400回、500回と100回ごとに句集発行を計画します。もちろん継続していればの話ですが。
◆ 参加者(52名)
クイスケ、しまねこくん、非常口ドット、空野つみき、御藩亭句会、ひいらぎ、片羽 雲雀、水の眠り、石川聡、笛地静恵、汐田大輝、山田真佐明、藤岡あや、Nichtraucherchen、佐井杜有、ゆうたま、リンネリンク、何となく短歌、都まなつ、塩の司厨長、美蟲角、雷(らい)、蔭一郎、onIce、安藤 蜜豆、水井良由木、ねるのいつ、三明十種、みや、鈴木正巳、西脇祥貴、岡村知昭、季川詩音、月階柚、縞田 径、霧雨魔理沙、石原とつき、東こころ、しろとも、鯖詰缶太郎、akao、まどけい、長尾伊織、西沢葉火、こっちゃん、牛田悠貴、カオルル、つきかけ、堀川朽葉、やぶ、月詠、月波与生
◆ 川柳・俳句
竹野内豊のだるま落としする クイスケ
あなたってたどたどしくて地獄だね クイスケ
あなたっていつも王室御用達 クイスケ
賛美歌に保護フィルムを重ねて貼る クイスケ
靴ひもとパスタに化ける 都まなつ
古代魚のテンションになる 都まなつ
ほろよいの宵ほどがよい 都まなつ
つめきりをあたためません 都まなつ
くもの巣にすむ季節たち 都まなつ
こげパンはもみじに近い 都まなつ
ごまあんまんの点鼻薬 都まなつ
なぞり書きしてみるとんぼ 都まなつ
舞台にて糸だけ垂れる 都まなつ
ヘレン・ケラー的パーマネントで集いあう 江口ちかる
ドアを開けたらいつも立っている 江口ちかる
エアリプを伝つて鶴が来てしまう しまねこくん
サポートが切れても柿は吊るすもの しまねこくん
正倉院中の空気を全部抜く しまねこくん
正面を決めてから剥く青蜜柑 しまねこくん
神無月ヒートテックは洗はない しまねこくん
日の丸の〇がハンガーストライキ 牛田悠貴
ふたりして向日葵の痕跡になる 牛田悠貴
秋麗の折れ目に溜まる菓子の粉 蔭一郎
茹でたての港区栗に並ぶ列 蔭一郎
あつまってきた栗たちでねむれない 蔭一郎
寒夜には人工的な犬になる 汐田大輝
思春期の排気でふかす紅はるか 汐田大輝
駅長は白鳥座から来ています 汐田大輝
五分後の世界を走る自警団 汐田大輝
この味がいいねと乾燥肌を剥く 汐田大輝
風景の一部にしたいアナコンダ 汐田大輝
淋しいと語らぬ人に届く鈴 akao
私とは何か記憶と違う文字 雷
調弦を終え秒針を聴いている 雷
どこそこのサルビア的な落とし物 石原とつき
公式の見解を待つ冥王星 山田真佐明
仕事から帰ってみそを溶くマダム 山田真佐明
手を繋ぎなおすため咲くシクラメン 片羽雲雀
柊に触れて流した血が笑う 片羽雲雀
クレープに包まれている蒸気船 佐井杜有
ふたりして向日葵の痕跡になる
*
地衣類のトランペットは銀めっき 空野つみき
焦げた秋に焼きそばパン 御藩亭句会
青空を裏返しにした秋時雨 ひいらぎ
秋の時雨に啜ってゆくか 石川聡
同担拒否の三国志 Nichtraucherchen
ペギー葉山蔦を刈りつつ説く正義 ゆうたま
野の錦熊手の音がなってゐる onIce
月光をひとつぶ拾った帰り道 安藤 蜜豆
秋時雨や濡れて体は浄められ 水井良由木
襲名の候ふねをこぐ ねるのいつ
虚栗骸とみなす無体かな 三明十種
熱燗や差しつ差されつ寒おすな! 鈴木正巳
十月が手をふりながら舌をだす 蔭一郎
広場からずり落ちた中島みゆき 西脇祥貴
馬主かもしれないアルマジロ眠る 岡村知昭
茉莉花や一夜限りの恋でした 季川詩音
ぬいぐるみにじきなるでせう風の部屋 縞田 径
駐屯地 恋の予感が 年の瀬に 霧雨魔理沙
実らせた恋をなぞってクロワッサン 東こころ
カフェインにほおずりをして秋夜長 しろとも
クレバーな 例えもなくて ただ、苅田 鯖詰缶太郎
淋しいと語らぬ人に届く鈴 akao
隙の無いカステラ気質 西沢葉火
雪ふって 道民のこころ 荒れ始め こっちゃん
短い秋に風邪を引き午睡 まどけい
島と手を買い戻す中島みゆき 西脇祥貴
キンドルや金ドル円のあきんどを笛地静恵
玄関出たら五秒で熊さん怖い世間となりにけり 笛地静恵
*
消したのは仲間はずれにした仲間 月波与生
ふんわりな歌丸がいて冬来たりなば 月波与生
◆ 短歌
ふうふうと雨吹き払い週明けの空は我らに光届ける 何となく短歌
不足分、切手を貼って補えば耳なし芳一みたいな封筒 『封筒』 水の眠り
*
ママの子育て 楽しそうには見えなかったよ 赤いレールは私で終点 藤岡あや
夜毎に冴え渡る星のひかりが 冬が近いとささやいている リンネリンク
夕化粧する女あり別れあり 秋暮れて物の怪のゐる時空(とき)となり 美蟲角
清らなる夜の中にあって生と死のひとしく詰め込まれた箱 みや
/ぎんまくがささやくさいしょのしーえむ/ 「よるの(ぱんけーき)かいは、いつでもめんばーぼしゅうちゅう」
月階柚 冷たい闇夜に泳いだ熱帯魚お前は辛いかひとりぼっちで 長尾伊
◆ 詩 ・ 短文
※ 作品なし
◆ 作品評から
この味がいいねと乾燥肌を剥く 汐田大輝
~好きです。剥いた乾燥肌をサラダ記念日的に味わう作中主体はかなりキャラが立っていて面白いです。 季語的視点なら、秋の空気の乾き「秋澄む」感を乾燥肌剥けのコミカルな人間諷詠の切り口で川柳的に捉えているとも読める。愉快(石川聡)
仕事から帰ってみそを溶くマダム 山田真佐明
~マダムだって普通に生活するんです。食べたら出すし起きたら寝るんです。そこに区切りがあるのは、やはりマダムだからなのでしょう。(つきかけ。)
柊に触れて流した血が笑う 片羽雲雀
~「血を笑う」ではなくて、「血が笑う」。凄いな。(堀川朽葉)
あつまってきた栗たちでねむれない 蔭一郎
~栗が1つ、栗が2つ、、、と数えていたらなんだか気持ちが悪くなってきたのかもしれません。あるいは気持ちが良すぎて寝れないのかもしれません。羊にせよ栗にせよ集まりすぎたら気になります。(季川詩音)
みぞおちはカボスとしては否定的 石原とつき
いとしきはとがりしところ櫟の実 カオルル
~少し前までツーシームは魔球であったが今やピッチャーなら投げ方はみな知っている。この構文も少し前までは魔球であったが今や………。 (月波与生)
二の腕が時計になってゆく時間 蔭一郎
~こういうふうに感じることは確かにある。蔭一郎句の言葉は肉体の実践が伴っていることが多くて詩的。(月波与生)
カタツムリ食べるマダムの鑑定士 山田真佐明
~「の」と書いた壊れっぷりが楽しい。カタツムリの鑑定かマダムの鑑定か? (月波与生)
茨城県民九割がテクノカット 汐田大輝
~そんなことはないと思いながらもそうだったらオモシロいな思う。県民性を茶化すのがハラスメントと言われる時代は目の前に来ている、とも思うが。(月波与生)
玄関出たら五秒で熊さん怖い世間となりにけり 笛地静恵
~嫌な世の中になりました。家すら出れない。闇バイトに、熊。家に引き篭もるしかないのかもしれません。リモートワークで良いような気もしてます。(季川詩音)
アジのひらきに鍵をさす 都まなつ
~都まなつさんが #ジュ二ーク の表現を広げてくれたので #ジュ二ークの山文学賞 の応募作品がとても楽しみだ。ブルーオーシャンな領域は作るのも読むのも楽しい。(月波与生)
愛液が満ちて重力から匂う アイン
~こういう面白い句が黙殺されない句会を続けていきたい。どんどん書いて(月波与生)
秋がある音叉としての詩をもって 雷
~よく考えられた句。「秋」「音叉」「詩」の3つを使ってどう川柳に仕立てていくか、をしっかりクリアしている。常套句的にいうと「ネット句会なんかに出すのはもったいない句」である。 (月波与生)
秋声に熄む人類の発情期 星野響
~「人類の発情期」がいい。川柳も発情期に戻るべきだし、授業のような句会はするべきではない。主宰者は教師ではない。(月波与生)
半分でいいから柘榴ここに居て 片羽雲雀
実柘榴の裂け目に入る自主規制 しまねこくん
~柘榴2句。どちらも面白いし書き手の個性がしっかり句に乗っている。(月波与生)
白百合をほどよく押し戻す付箋 クイスケ
~「ほどよく」が効いてますがぼんやりして使い悪いにくい言葉ではある。「白百合」「付箋」とくっきりした具象を置くことで強弱がほどよい響きになった。(月波与生)
ふんわりな歌丸がいて冬来たりなば 月波与生~「ふんわりな歌丸」というワードがすごく好きです。歌丸さんを見ると場の雰囲気が一気に楽しくなります。ゆるキャラ的な存在だったようにも思います。あの人を見ると、どんなに寒い冬でも乗り越えられるぐらいの存在です。(季川詩音)
風景の一部にしたいアナコンダ 汐田大輝
~「風景の一部にしたいアナコンダ」。苦手な人もきっといるのかもしれません。でも、風景の一部として紛れていれば意外と怖くない。そう思いました。後から気づいては絶叫です。(季川詩音)
キンドルや金ドル円のあきんどを 笛地静恵
~三笠なる 奈良のあの娘(コ)は 横須賀へ どら焼き食べし 秋の夕暮れ(やぶ)
秋の時雨に啜ってゆくか 石川聡
~しぐれてゆくか が… 啜ってゆくか…… パロディ面白かったです(月詠)


