さみしい夜の句会報 第243号(2025.10.12-2025.10.19)
第243号の参加者は63名でした。ありがとうございました。参加された方の1作品以上を掲載しました。掲載のない方、誤字脱字等ありましたらDMにてご指摘下さい。#さみしい夜の句会 にて検索してもセレクトされない方がいらっしゃるようです。掲載のない方は管理人まで連絡を。投句はテキストにてお願いします。テキスト以外の投句は週報に反映しませんのでご注意願います。
アンソロジー「さみしい夜の句会」第4集を発行しました。参加者34名の短詩作品の他、エッセイ12編を収録しました。句評は参加者であるnesさんか書きました。川合大祐さんの川柳を書き始めて間もない頃の作品や、黒川孤遊さんの戦時中のカミカゼ特攻隊の隊員が出撃前夜に残した川柳の紹介など、読みどころの多いアンソロジーとなっています。購入いただければ編者としてとても嬉しいことです。
◆ 参加者(63名)
クイスケ、水彩,、空野つみき、笛地静恵、しまねこくん、乙女の海外文学案内、片羽 雲雀、三明十種、何となく短歌、美蟲角(びちゅうかく)、太田葵、西脇祥貴、おがけん、水の眠り、安藤 蜜豆、ねるのいつ、Nichtraucherchen、都まなつ、蔭一郎、西沢 葉火、ひいらぎ、山田真佐明、片羽 雲雀、nes、石川聡、汐田大輝、夜ポエム寄る?、souko守宮、池田 突波、岡村知昭、砂原妙々、カオルル、鈴木正巳、塩の司厨長、天然石アクセサリーkiki’s、季川詩音、仲野キキョウ、古城えつ、宮坂変哲、おがけん、Tatsuo Kanase、非常口ドット、夜ポエム寄る?、胡椒 黒、アリタ別館、松本清展、ゆうたま、雪平千星、リコシェ、よしぴこ!、石原とつき、川合大祐、まどけい、ナル、青海波、ぺろぼっこ、マミ、なさわご、しのき美緒、堀川朽葉、アトロポス、月波与生
◆ 川柳・俳句
あなたっていつも王室御用達 クイスケ
子どもでも鞭の色味に泥を塗る クイスケ
サッカー日本代表に催情部位をそれ以降言ってはいけない 川合大祐
融けた鏡はネイル用 都まなつ
星あてのおてがみ届く 都まなつ
睡眠時水泳選手 都まなつ
朝をもいだら腹が減る 都まなつ
スマホに指をかじられる 都まなつ
動かないけど螺子をまく 都まなつ
雨ざらしにはからあげで 都まなつ
路地の眼を串刺しにせよ天魔王 Tatsuo Kanase
地底湖に沈みきれないファニーボーイ 片羽雲雀
真夜中に受精した誤字の墓標 片羽雲雀
白獅子のムスペルヘイムへ焦がれゆく 片羽雲雀
フィルターは方便ほどで始発待ち 片羽雲雀
玉葱の中は正気でいられない 汐田大輝
霊魂をカーブミラーで引き伸ばす 汐田大輝
晩年のトマホークなら雲に鳥 汐田大輝
歯ぎしりで埋め尽くしたい十二音 汐田大輝
地球儀の右半分が蒸気船 汐田大輝
致死量の言葉を浴びて詩人死す 汐田大輝
口癖会議はひみつにしておいて nes
楊貴妃の舌打ち踏んでしまったの nes
字が消える。消しゴムのせいじゃない。Nes
人生を語って笑うマダムの手 山田真佐明
カーテンを開けて夜風はマダム色 山田真佐明
マダムなら息を殺した日々もある 山田真佐明
野良猫とじゃれるマダムの薄化粧 山田真佐明
こっそりとコキアもまざる鼓笛隊 蔭一郎
とんぶりやおにぎりといふ小宇宙 カオルル
雨の日は傘を持たせて柿を干す しまねこくん
団栗の余生は土に落ちてから しまねこくん
飴ちやんは黙れの合図 Nichtraucherchen
借金を思ひつく日や紅葉忌 美蟲角
背負われた婿そっと巣へ 乙女の海外文学案内
囲炉裏から旧デザインのミドリムシ 空野つみき
肩に乗るアップルパイがぐずりだす 空野つみき
三日月の影の部分に手を伸ばす 水彩
君がため本と四つ葉を盜ませる ねるのいつ
*
立ち読みのハタキに負けぬホコリかな 笛地静恵
古うるかくさみ紛らす傳へなし 三明十種
中島みゆきという素描画の膿 西脇祥貴
影がくる 手をのばしては 消えていく おがけん
あまりにも無力な金魚とわたくしと 安藤 蜜豆
覆水盆に喫茶店 西沢葉火
月を乞ふ見果てぬゆめの幸ひよ ひいらぎ
晴天の半透明の象に乗る 岡村知昭
ミサンガの切れてコキアの色付ゐて 池田 突波
上高地夜明けの色を包む霧 鈴木正巳
釣竿の先に旧態依然とした骨 塩の司厨長
音楽と鳩は走るや蓮の花 季川詩音
茸籠被って吹いたリコーダー 宮坂変哲
今にも堕ちてきそうなバス避けながら空にのる 塩の司厨長
空腹は 孤独の夜の スパイスよ 美蟲角
約束のしかた忘れた神無月 アリタ別館
サイダーの流れ星にもなれる感 西沢葉火
ふた役を演じてにぎやかな我が家 松本清展
さようなら酸えた匂いの紅白帽 ゆうたま
きらきらの油汚れの水たまり 岡村知昭
秋雨の画布を撫でれば実物(がち)の岩 よしぴこ!
仲人はあけびで絵皿割る気配 石原とつき
閉幕や猫の肉球もて遊ぶ まどけい
おはようとおやすみ 今日も良い夢を ぺろぼっこ
何ですか好きなおにぎりの具材は なさわご
*
未来から来た猫にじゃんけんで勝つ 月波与生
◆ 短歌
朝ごはんにドーナツを食べる みぞおちにどうして白薔薇を溶かしたい? nes
十月の湿気を腕に纏わせて来てごらん目隠ししてあげる nes
うたた寝をしたり食べたり悩んだり外階段は軌跡の現場 水の眠り
hysteriaガラスのグロスで笑う月唇よりも冷たいdawn 砂原妙々
あなたから見れば谷折りでしたわね souko守宮
*
来た道を戻ることなどできなくて分かれた先でできることをする 何となく短歌
カチャカチャと皿が擦れる音がしてすぐ死にそうで眠れなくなる 太田葵
ノーマルな着ぐるみを着て家を出る知られたくない僕の正体 夜ポエム寄る?
立ち上がるには薄暗い程度で良い 明るすぎては目が眩む 天然石アクセサリーkiki’s
通知音鳴るたび駆けて見つめては一喜一憂ナイトルーティン 仲野キキョウ
デトックス言い換えるなら断捨離をして気付くのは大きな一歩 古城えつ
浅すぎて夜と呼べずに深すぎて朝と呼べないためらいの傷 非常口ドット
手も足も輝き剥がすウィーク・エンド今のわたしは星になれない 雪平千星
名作が積まれた隣に枕おく眠れる夢で読めますように リコシェ
秋の夜に吾に触る風君の手か 吾は返そう虫の音借りて ナル
頭骨の内で育った花達が割らんばかりにキリキリと叫ぶ夜 青海波
星のうた聞き取れなくて歌えない 狼じゃないスニフの気持ち 青海波
ガリンペイロにガリガリ君を差し入れるみんなガリガリンペガリイロだ 石川聡
一番が好きなあなたは最期すら私より先 に逝ってしまう季川詩音
◆ 詩 ・ 短文
声、カフェに声、声
昼すぎのカフェで
声の洪水を浴びている
ミソギのような
朝日のような
意味にならない音素を浴びて
祝詩(のりと)を
ノートに書き連ねる
カップの音が
カラカラ踊る
不意識の
真っ暗闇に落としてきた
声を拾った
魂の最初の言葉を
紡いだ
秋晴れが夕暮れに代わる前
私はカフェに居た(山田真佐明)
◆ 作品評から
立ち読みのハタキに負けぬホコリかな 笛地静恵
~懐かしい。はたきとか、本を並べにくる、とかありましたね。負けないホコリでしたが笑 (しのき美緒)
団栗の余生は土に落ちてから しまねこくん
~となると、子どもたちに拾ってもらって工作に使ってもらうときには既に天国にいるのかもしれません。次の人生ですかね。(季川詩音)
白獅子のムスペルヘイムへ焦がれゆく 片羽雲雀
~ムスペルヘイム? 検索しました。北欧神話なんですか。昔、昔、読みましたけど、覚えていません。この黒い缶はビール? どこのお酒ですか?(堀川朽葉)
排水口から小父さんが覗いてる souko守宮
~怖い&面白いです!(石川聡)
致死量の言葉を浴びて詩人死す 汐田大輝
~詩人でも受け止め切れる言葉には限界があるのでしょう。私もそうです。誰でも浴びすぎると耐えられません。適量って大切です。(季川詩音)
社会性しかない豚肉しかない アイン
~豚肉と社会性があればこの世は渡っていけます。豚肉と卵の丼を他人丼というのは青森だけか。大手牛丼屋のメニューにはないもんな。(月波与生)
週末まで亀と競争 天然石アクセサリーkiki’s
~なかなか決着がつかない亀との競争。土日はもちろん馬の競争。(月波与生)
止まってる心臓よそに蕎麦啜る ゆうたま
~蕎麦啜ってる場合じゃないんだけどね。川柳はこの「~している場合じゃないのに別なことをする」という人が頻繁に出てきます。(月波与生)
ガリンペイロにガリガリ君を差し入れるみんなガリガリンペガリイロだ 石川聡
~ガリガリンペガリイロ!発音すると本当にガリガリ君食べてるみたいです。ありがとうございます。ポピーのおっぱいならいつでもレンタルします!(白石ポピー)
湖面にて極道どもの豆腐市 汐田大輝
恐竜の骨で夜空を埋め尽くす 汐田大輝
~「極道どもの豆腐市」とはよく言ったもの。「恐竜の骨」の句はありそうでないゾーンの句。言葉に斡旋の妙。(月波与生)
フィルターは方便ほどで始発待ち 片羽雲雀
~フィルターを、煙草のそれと読みました。それは、方便 。実際は、両切りのニコチンの強いのでないと、俺にはうまくない。口にくわえる。マッチで火をつける。紫煙がたなびく。山男。山間のバス停。まだ早い。始発のバスを待つ。昨日は、いのちびろいした。危なかった。山に、遅い夜が、明けていく。(笛地静恵)
朝ごはんにドーナツを食べる みぞおちにどうして白薔薇を溶かしたい? nes
~朝ごはんがドーナツ。白飯でもパンでもないせいか、いつもと違う高揚感があるみたい。「みぞおちに~」からの問いは、答えを求めていなさそう。「どうして」と言いながらすでに白薔薇は溶けていそう。胃にドーナツ、みぞおちに白薔薇。どちらもたっぷりご馳走様。お腹いっぱいの朝。(岡村知昭)
サッカー日本代表に催情部位をそれ以降言ってはいけない 川合大祐
~言ってはいけないことほど言いたくなるのは「王様の耳はロバの耳」以来ずっと。でも、わかりました。言いません。この一句で大切なのは「以降」。「それ以上」ではなく「それ以降」。長律でありながら定型律を失わないのは「以降」あってこそ。これは…言ってよかったですよね。(岡村知昭)
朝をもいだら腹が減る 都まなつ
~朝をもいじゃうっていう発想が、新鮮でおもしろいです。なんか、フレッシュなトマトの映像がうかびました♪(石川聡)
秋の夜に吾に触る風君の手か 吾は返そう虫の音借りて ナル
~あら、粋なお返し(アトロポス)
何ですか好きなおにぎりの具材は なさわご
~まさか川柳形式でこんなことを聞かれるとは笑 私は、鮭、いくら、昆布あたりが好きです。ふと出た言葉が575とかになってたりすることってよくありますよね。いまの575やんけと思うときあります。(季川詩音)
一番が好きなあなたは最期すら私より先 に逝ってしまう季川詩音
~人間の中には、どうやら生まれつき、行き急ぐ者が混じっているらしいです。小生の友人にも、なんにでも全力で突っ走る奴がいました。二十代で亡くなりました。未完という感じがありません。それなりに完成している。短い寿命がわかっていたように。いのちの不可思議です。(笛地静恵)


