さみしい夜の句会報 第232号(2025.7.27-2025.8.03)
第232号の参加者は43名でした。ありがとうございました。参加された方の1作品以上を掲載しました。掲載のない方、誤字脱字等ありましたらDMにてご指摘下さい。投句はテキストにてお願いします。テキスト以外の投句は週報に反映しませんのでご注意願います。
戦後80年の今年、それを意識した川柳は出てくるのかと全日本川柳神戸大会へ行った。がっかりした。不毛な戦争に抗議した句はいくつか一次選で聞くことはできた。しかしそれらの句は二次選でことごとくはねられていた。残ったのはいつも通りの(日川協が好む)毒にも薬にもならないような川柳。いったい二次選者の役割とは何なのか。国文祭長崎大会の二次選者の方々には期待を裏切らない選をしてほしいものだ。
◆ 参加者(43名)
クイスケ、しもじょう、西沢葉火、ぺろぼっこ、カオルル、しまねこくん、海月漂、ひいらぎ、空野つみき、菊池洋勝、山田真佐明、涼閑、宮坂変哲、西脇祥貴、しんいち、何となく短歌、笛地静恵、鈴木正巳、汐田大輝、しろとも、東こころ、季川詩音、蔭一郎、夏風、岡村知昭、なさわご、もりまりこ、涼、yuto_pachypodium、よしぴこ!、水の眠り、ひいらぎ、まどけい、古城えつ、神無、ゐで保名、もりや、snuddle、都まなつ、非常口ドット、名犬 ぽち、オジサン、月波与生
◆ 川柳・俳句
粗相したしらす霊媒師の真夏 クイスケ
口輪をし児童相談所を賛美 クイスケ
バリアを張るとヒゲが剃れない しもじょう
ひまわりの当て所なき中島みゆき 西脇祥貴
少年のつむじで迷う黄金虫 蔭一郎
靴下をどちらから履く別世界 蔭一郎
幽霊に崩されてゆくかき氷 蔭一郎
山脈に宇治金時を奉る 蔭一郎
ざっくりとパンがあふれてくるメロン 蔭一郎
ぼんやりと蝮に間違えられている 蔭一郎
象と別れて消しゴムの木を探す 岡村知昭
てんと虫背中に一つ動く星 しまねこくん
トイレにはトイレのマークグラジオラス しまねこくん
知つてゐるメロンの味は皮の味 しまねこくん
向日葵に襟を付けたら会社員 しまねこくん
ぬるま湯にずつと浸してゐたメロン しまねこくん
夕焼けの焼け損なひを拾ふ箸 しまねこくん
元号を三つ丸呑みして蝮 しまねこくん
パーティーの外はヘモグロビンの森 空野つみき
皮膚科でも歯科でも遠い白昼夢 空野つみき
シャーベット溶ける 声にしなくていい 空野つみき
人生のレモンサワーに映る雲 汐田大輝
高気圧からナルシシズムの香り 汐田大輝
裸眼では右半分が玉子焼 汐田大輝
致死量になるさみしさ 海月漂
ほほづゑをつかぬ手で汲む冷酒かな カオルル
昼寝覚まだたましひの戻らざる カオルル
*
老人が複数形の水を飲む 西沢葉火
本当に必要なものは バズらない ぺろぼっこ
月下美人見えぬ患者のコールかな 菊池洋勝
風にまた流されてゆく木曜日 涼閑
おっぱいの日も大人しく薬飲む 宮坂変哲
天国でローカル線を増やしたい しんいち
夜の秋ドラマ佳境にスマホベル 鈴木正巳
まなうらにサンタクロース御一行 しろとも
手を繋ぐだれかの夫であるひとと 東こころ
石榴忌やあなたきれいな顔ですね 笛地静恵
侮るな飲み込まれるぞ真っ白に なさわご
油淋鶏 小蝿溺れて 御臨終 涼
秋めいて吾励むなりアマチュア無線の日 まどけい
眠いなか飲む珈琲や夏座敷 yuto_pachypodium
呑み込めば大暑の森の闇の中 よしぴこ
セミ並に長生きできないハイポニキウム 神無
だい色に照らす光や田水張る yuto_pachypodium
真理の核割れて飛び散り肉となる ゐで保名
一丁目三番地冷奴 もりや
*
真夏 宇津井健の眼差しで過ごす 月波与生
金魚売り残らずマネーロンダリング 月波与生
◆ 短歌
琥珀色のなにかをそっとそそがれて あなたの言葉がすきになるあなたが言葉 もりまりこ
ゆくあてもなくてUNIQLO入り浸り頼まれもせずTシャツたたむ 水の眠り
*
朝露のいのち短く夜のことば舞いたる蜂に幽かに乗せて ひいらぎ
やさしさに飼い慣らされて 僕たちは問いすら一人で立てられなくて 何となく短歌
語り部の 肩に纏はる かすみ闇 み霊おぼろや 影魂染まむ 夏風
忘れたと思っていたが触れられて痛みは奥で息をしていた 古城えつ
三日月と味に余白のあるスイカ塩をかけるか君を食べるか snuddle
ささくれにちろちろうつるあのひとのうしろ姿はいつもさみしい 都まなつ
歌なぞり缶ビール手に夜散歩ふたりじゃなくてひとりだけれど 非常口ドット
◆ 詩
屋根からコンビニを臨む
一匹は毛繕い
一匹は残飯をにらむ
西が光りながら
地平線にかくれる
闇が向こうで開眼する
鳥はねぐらへ
散っていく
そこかしこで暖を取る(山田真佐明)
世の中綺麗じゃないから。世の中綺麗じゃないからこそ、我々は綺麗なことを書きたいと思うわけで、世の中そんなに綺麗じゃない。だから綺麗事にすんな。(季川詩音)
◆ 作品評から
元号を三つ丸呑みして蝮 しまねこくん
~元号ごと食べてしまった。それは歴史の改ざんかもしれません。過去を無かったことにしてしまったのかもしれません。(季川詩音)
自転車のサドルは海の日もあつい 蔭一郎
~真夏に自転車に乗った人なら誰もが経験する(あの)サドルの熱さ。似た感覚は他になく真夏のサドルならではの体感なのだろう。何でもないけど特異な日常を切り取るのもまた川柳。(月波与生)
アサガオの蔓を正しく巻き直す あきの つき
~ここでの正しさは自分にとっての正しさでありアサガオにとってはなんの問題でもない。巻き直されたアサガオの将来はアサガオの問題であって巻き直した人には問題ではない。正しさのゲンカイ。(月波与生)
金魚売り残らずマネーロンダリング 月波与生
~「金魚を売っている人が、売り上げをマネーロンダリングしているのか。」、「金魚そのものを不法に流してる姿をマネーロンダリングにたとえているのか。」など色々考えられて面白いです。怪しい夏を感じますね。(季川詩音)
天国でローカル線を増やしたい しんいち
~天国というのは宗教的な話であって、「そんなものはない」という考えもあるのかもしれません。しかしながら、もしあるとすれば、仲の良かった人と会いたいと思うのかもしれません。そんなときにローカル線があればさぞかし嬉しいでしょう。(季川詩音)
ぼんやりと蝮に間違えられている 蔭一郎
~ぼんやりとだからなかなか指摘しにくいんですよね。 「私、蝮じゃありませんよ。」って。「そんなのわかってるわよ。」って言われる気がしてなかなか言えないんですよね。(季川詩音)
人類にサヨナラをいうエベレスト 汐田大輝
~ある日突然「お前らもう降りろ!」とか怒ってそれから人類を拒絶してしまいそうなエベレスト。富士山もすでにその域かも知れない。世界中の山々が人類を拒絶する。(月波与生)
万札を崩す友だちが消える 鈴木雀
~「万札を崩す」とは遣って万札が無くなることであるが遣いすぎて小銭だけになったのだろうか。「友達のひとり諭吉が消えていく」という川柳はどこかにありそうだがこちらは本当の友だち(と思う) (月波与生)
老人が複数形の水を飲む 西沢葉火
~英語の性質的に「水」の単語の扱いは厄介です。ただ、複数形とありますから、海や、河などの規模の大きい水域レベルの話なのかもしれません。それを飲むのですから、この老人の能力は凄まじいです。(季川詩音)
夕焼けの焼け損なひを拾ふ箸 しまねこくん
~こちらが大腿骨ですね。(名犬 ぽち)
石榴忌やあなたきれいな顔ですね 笛地静恵
~遺影に話しかけているのかもしれません。「よく喧嘩してたし、仲悪かったけれども、よくよく見たら綺麗な顔をしているじゃないの。」って。(季川詩音)
朝露のいのち短く夜のことば舞いたる蜂に幽かに乗せて ひいらぎ
~ハチって刺されると痛いけど綺麗なんですよね(オジサン)
真実のしめ鯖サロメを一新し クイスケ
~クイスケは「サロメ」が付いた川柳を毎日投句している。「サロメ」自体はイメージが湧きにくい言葉なので他の14音字でいかに魅力的な嘘を付くかがポイントだ。「しめ鯖」がいい。(月波与生)
ボディーランゲージ あなたは あなたは ここ ろ 空野つみき
~ボディーランゲージで始めてきあらの言葉の置き方が刺激的。あなたはのい空白とこころの空白。勇気のある空白。(月波与生)
サーカスのバスのタイヤの空気入れ(♀)西沢葉火
~作者にしては正攻法の本格的川柳。
さっぱりわからん。特に(♀)、どなたか読んでほしい。(月波与生)
幽霊に崩されてゆくかき氷 蔭一郎
~最近、やたらと溶けるのがはやいと思っていたのですが、あれは幽霊が崩していたのかもしれませんね。(季川詩音)


