さみしい夜の句会報 第230号(2025.7.13-2025.7.20)
第230号の参加者は44名でした。ありがとうございました。参加された方の1作品以上を掲載しました。掲載のない方、誤字脱字等ありましたらDMにてご指摘下さい。投句はテキストにてお願いします。テキスト以外の投句は週報に反映しませんのでご注意願います。
川柳は不条理を表現する。〇〇川柳の〇〇がなんであれそこに作者が表現したい不条理が書いてあれば川柳として「立って」いた。生活が安定して社会的地位もあり体制を支持する多くの人の川柳がまったく面白くないのはそこに「不条理」がないからだ。この時代に不条理を感じないとはなんと幸せな人たちだろう。
◆ 参加者(44名)
クイスケ、海馬、しもじょう、彩葉(いろは)、菊池洋勝、石川聡、カオルル、なさわご、蔭一郎、笛地静恵、もりや、しまねこくん、しんいち、西脇祥貴、水の眠り、江口ちかる。、都まなつ、ひいらぎ、季川詩音、宮坂変哲、空野つみき、西沢葉火、須賀 好晃、月硝子、汐田大輝、アリタ別館、nes、しろとも、まどけい、ぺろぼっこ、tokito褆、冬野志奈、山根あきら、4wD、よしぴこ!、雷(らい)、何となく短歌、西沢葉火、山田真佐明、ゆりのはなこ、ひいらぎ、コマさん、さちの扉、月波与生
◆ 川柳・俳句
鼻息を押し曲げて直線にする クイスケ
舌の裏にある水のにおいをさらう クイスケ
涼やかな挽歌サロメは爪を塗り クイスケ
負け犬に遠吠えられて木を揺らす 海馬
友だちは架空の蠅をして遊ぶ 海馬
プラシーボ柄のパンダの無表情 海馬
茄子として茄子に寄り添う昼の雨 蔭一郎
行列のわたしの前後には土偶 蔭一郎
真夏日のこども銀行で悲鳴 蔭一郎
友達がいる孤独なり夏休み 蔭一郎
お辞儀するときなすびだけ帽子とる 蔭一郎
好きな子を抱きしめている映画館 山田真佐明
ねこの目に映るすだれは那智の滝 汐田大輝
耳だけが大きく見える虫眼鏡 汐田大輝
右脚に昆布を巻いて土俵入り 汐田大輝
予報では西から徐々にいちご味 しろとも
トゲトゲのぬいぐるみが見守る世界 空野つみき
唇の番人としてラメシャドウ 空野つみき
判決へ「ね」を足せる中島みゆき 西脇祥貴
あえて産まれてみせる中島みゆき 西脇祥貴
鎌首を斬っても斬っても夏の葛 冬野志奈
万年雪や思春期の影長し 菊池洋勝
フルートの連符軋んで孕み鹿 nes
かき氷売りはインコの羽根である nes
風鈴で遊ぶな巡礼が迷う 西沢葉火、
いつはりの言葉ゐもりの腹赤し カオルル
枯れさうな鉢に名のある夏休み カオルル
日曜の午後水無月の水の音 カオルル
炎昼の渋谷花束捨てられて カオルル
果汁ゼロという自己愛 しんいち
モナリザの奥に山小屋一つある しまねこくん
十個ある茄子のどれかが家の鍵 しまねこくん
でも家の茄子とそつくりだつたので しまねこくん
蝉時雨地下アイドルの定義とは 季川詩音
しがむたび真綿をひとつ産みおとす 江口ちかる
あの頃は月は欠けないものだった 江口ちかる
朝焼の中へ戻せるストレッチャー 菊池洋勝
*
本読めぬ/言葉の海で/溺れてる 彩葉
アスファルト君も溶けたか遠い山 なさわご
禁忌地方のある場所について語らず 笛地静恵
君に届ける前に溶けきってしまったかき氷 もりや
朝から酷暑だ中高年ぞろぞろ投票所 石川聡
廃校の校舎を包む蝉時雨 宮坂変哲
物陰に小蟹隠れる半夏生 須賀 好晃
溺れたき声彼方の日 アリタ別館
蓮の花 花瓶の中に 生きている tokito褆
背泳ぎで 脇の毛ひょろり 乙女かな 山根あきら
ファミコンが死語となりけりファミコンの日 まどけい
迎えるも送るもリモート魂祭 鈴木正巳
指切りを破った人よ星涼し 4wD
音楽に溢れて冷蔵庫から出る よしぴこ!
無灯火の驟雨を走る水飛沫 雷
唯一の話し相手は母と医者 ゆりのはなこ
*
夏祭り痒い股間に塗る薬 月波与生
◆ 短歌
シュンシュンシュン シュララ輪転機の印字キリトリセカイはないから届け 水の眠り
腹部からたまらず逃げる傷あともわたしの傘に入っておいで 都まなつ
さっきまで聴いてた花火もうじきの祭りできみとふらふらしたい 都まなつ
*
蝸牛のろまでいいよよく見たいきみの見ているホントを見たい ひいらぎ
切り絵師のネイルはいつも艶やかで爪痕ばかり記憶に残る 月硝子
ごゆっくりどうぞと水を置く君の視線を避けて僕は俯く
何となく短歌
◆ 詩
ことばにできないきみを ことばにしたい ぼくは、(ぺろぼっこ)
◆作品評から
彼女らは蛸のくるぶしまで触る 蔭一郎
~テレビで「触れる魚屋さん」というのをやっていた。子供たちに興味を持ってもらうためらしいが、幼い女児たちに無邪気に全身くまなく、どこだか分からぬくるぶしまで無遠慮に触られるというのは蛸の死骸には少し残酷だ。(クイスケ)
あの頃は月は欠けないものだった 江口ちかる
~月は比喩だと思いました。家庭とか仕事、趣味かもしれない。それは読み手がそれぞれに持っているもの。順調な時はそれが欠けるかもしれないなんて思わないから(いずみ)
~「あの頃」とは、子どもの頃かもしれません。月は丸いイメージがあり、欠けないものだと思っていた頃ってあると思います。そして、理科の授業だったり、何かのきっかけで、「月って欠けるんだ。」と気づく。(季川詩音)
蝉時雨地下アイドルの定義とは 季川詩音
~誰にも気づかれぬまま、誰が鳴いてるのかわからない集団の蝉。 世間に届かぬまま、必死にステージに立つ地下アイドル。 重なるものがある。(コマさん)
廃校の校舎を包む蝉時雨 宮坂変哲
~ああ、いいですねえ。廃校の敷地に入っていく。校舎に近寄っていく。いきなり蝉しぐれがふってきた。炎天下の田舎道を歩いてきた。今まで、きこえなかったのに。ここだけ、空気が違う。包み込まれている。虫が古い木造の校舎を守っているのか。涼しくなれます。(笛地静恵)
禁忌地方のある場所について語らず 笛地静恵
~あの有名な作品を思い出しました。しかしながら、近畿地方ではなく、禁忌地方ですから、これは語らないのがベストかもしれません。語ってしまったらなにか不幸が起きるのかもしれません。(季川詩音)
あいまいさ回避はしても雨は雨 都まなつ
~Wikipediaでよく見かける「あいまいさ回避」。もとは経済学の用語。とは言え、何をどうしても「雨」という現実は変わらないのだ。(月波与生)
おつさんが三人寄れば一人蝉 しまねこくん
~蝉は寿命が短いので捕っても虫かごに入れず逃がしてやれ、といわれていたのに逃がさず虫かごに入れてすべて死んでしまった、という経験がある。あのときおじさんも何人か死んだのかも。(月波与生)
蟬時雨スワンボートの無表情 カオルル
~「蟬時雨」というからそろそろシーズンも終わりに近い頃の行楽地か。賑やかだったスワンボートもお疲れ気味の無表情。(月波与生)
トゲトゲのぬいぐるみが見守る世界 空野つみき
~素敵です。どんな人であってもその人が見守る世界ってのがあると思います。それはぬいぐるみにおいてもきっと同じだと思います。そして、ぬいぐるみと聞くと、ふわふわしてるイメージが強いですが、「トゲトゲ」とすることで、「優しさや、冷たさ」の整合性を感じました。(季川詩音)
お辞儀するときなすびだけ帽子とる 蔭一郎
~ヘタの部分のことを帽子にたとえているのかもしれません。お辞儀をするときに礼儀として外す。それは、野菜の世界においても同じなのかもしれません。(季川詩音)
炎昼の渋谷花束捨てられて カオルル
~花束に、訪ねたい。どうしたのって。(さちの扉)
でも家の茄子とそつくりだつたので しまねこくん
~「でも〜だつたので」とすることで、何かをしたことに対して言い訳をしてるように感じました。農家同士のやり取りなのか、主婦同士なのか。色々想像ができて面白いです。(季川詩音)
背泳ぎで都営大江戸線をゆく 汐田大輝
~「背泳ぎ」ってのが大江戸線らしくてよい。あの辺りは江戸時代までは海だったらしいし。(月波与生)
彼女らは蛸のくるぶしまで触る 蔭一郎
~「蛸のくるぶし」いいね。どこがくるぶしかわからないが彼女らはそんなデリケートゾーンでさえわちゃわちゃ触るのだ。(月波与生)
精神世界たとえば雷雨のスギ薬局 よしぴこ
~面白い。が、中8、ここは7にしてほしい。7,8,6はさすがにリズムが悪い。(月波与生)
ごろつきのピアノをノーヒントでおこす クイスケ
~ごろつきだけに問答無用なのか。「ノーヒント」が効いている。言葉のベクトルに工夫を感じる。(月波与生)
半分に裂けて昆布が遺伝する しまねこくん
~なぜ半分に裂けるのかな?何に遺伝するのかな? 謎なところがおもろいです(石川聡)


