UnsplashのPriyanka Chechiが撮影した写真
さみしい夜の句会報 第225号(2025.6.8-2025.6.15)
第225号の参加者は42名でした。ありがとうございました。参加された方の1作品以上を掲載しました。掲載のない方、誤字脱字等ありましたらDMにてご指摘下さい。投句はテキストにてお願いします。テキスト以外の投句は週報に反映しませんのでご注意願います。
6月19日から29日まで神戸市にある自由港書店さんにて『海の川柳』と題した展示会が開催されます。以前募集した『海の川柳』から各選者の特選句、選者句、自由港書店セレクトの15句が展示されます。展示の様子は自由港書店Instagramにアップされる予定ですのでお楽しみに。
◆ 参加者(42名)
クイスケ、海馬、山田真佐明,、江口ちかる。、西脇祥貴、しまねこくん、笛地静恵、輪井ゆう、石川聡、水の眠り、まどけい、西沢葉火、雷(らい)、akao、涼閑、山田彩緒、宮坂変哲、カオルル、季川詩音、汐田大輝、舞風 奏、板里カエ、麻月、流離するおかん時々オクラちゃん桃瀬、JUNKY店主、鈴木正巳、苺、小沢史、蔭一郎、東こころ、つみき、しまりす、夜ポエム寄る?、池田 突波、なさわご、魔理沙(new)、何となく短歌、飯島雅史、名犬 ぽち、白石ポピー、早坂ユキオ、月波与生
◆ 川柳・俳句
ひんがしの脳に限りがありまして 海馬
五月雨の動く歩道が顔の中 海馬
志の低いところに溜まる砂 海馬
身の破滅を見学するレプリカ クイスケ
泣きながら大事にしてたゴビ砂漠 クイスケ
梅雨入りの首を寝違え待つ右折 雷
梅雨の窓顔だけがある検診衣 雷
出目金のサイズに魔王大魔王 しまねこくん
梅雨雲が荷台に積める運送屋 しまねこくん
息継ぎに出ては引つ込む今年竹 しまねこくん
雲丹同士喧嘩の時は刺し合ふか しまねこくん
睡蓮の花が出てくるトースター しまねこくん
見知らぬ山羊でつくる中島みゆき 西脇祥貴
臓器からデボン期になる走り梅雨 汐田大輝
オーロラになる直前にピンで刺す 汐田大輝
この大雨はハムスターの慟哭 汐田大輝
「押すな」ボタンが付いたくちなし 汐田大輝
サラ川をガールズバーで鎮火せよ 汐田大輝
るつぼさみしくてくるくる踊る闇夜です 江口ちかる
文鳥のはらとは知らず夜明けまで 江口ちかる
お裾分けされるバアムと秘め事と 東こころ
きみだけのもの睡蓮の解像度 蔭一郎
計量でさっそくあめふらしと喧嘩 蔭一郎
終活の本すてられぬへらず口 笛地静恵
減速はサステナブルな蝉しぐれ 笛地静恵
ギャグアニメテレビの前を皿が飛び 笛地静恵
円周率は信じない 西沢葉火
迷子でいいのとしゃがみこんだ社長 輪井ゆう
梅雨晴間今朝見し夢のなつかしく カオルル
*
知りたくてこつんと言葉あててみる 石川聡
サイダーも兵器と変わる時が来る akao
サヨナラと口が動いて駅ホーム 涼閑
ベタ付けの後ろの車パンクしろ 宮坂変哲
辰年や龍も降り立つハロン湾 季川詩音
家電量販店からも恋の味 山田真佐明
天井を 眺めるベッドの 上のバター 板里カエ
本棚の整理が大変、読書漬け JUNKY店主
軒忍窓に寄り添ふ力士かな 鈴木正巳
サファイアも真珠も噛んだ捨て子です 小沢史
わたくしも梅雨入りしたとみられます 池田突破
友達も選び選ばれてるのかな なさわご
*
関節を外しびっくり箱に入る 月波与生
◆ 短歌
本物になりたいけれど擬態する例えばスイカバーの味とか 水の眠り
にわか雨ちりぢりに散る1000の靴タンバリン打ち鳴らしたように 水の眠り
*
角がとれて 丸くなった でもそれは 私の一部が 欠けてしまった 麻月
あちこちに置き忘れ 毎日、宝探しで いと楽し 流離するおかん時々オクラちゃん桃瀬
隣人の生活音と除湿機の音だけ響く広すぎる部屋 苺
フォルダにはあの日のあなたが生きていて 火のない灰をまだ守ってる つみき
この辛い世を生きながらあなたとの一つ一つを心に刻む しまりす
トンネルを抜けた先で、 君と目を合わせることだけを夢に見る 夜ポエム寄る?
奪われて諦める事それだけが 生きることなら どうか殺して 舞風 奏-かなで-
何気無く 過ごす水無月 日曜は 二度の凶行 風化を防ぐ 魔理沙(new)
◆ 詩
猫の邪魔をする
ここは通れまい
わかっていて飛び越す
猫はどこまでも飛べる
猫の詩を書く
猫は詩だからして
一日追っかけ回せば
原稿用紙がうまる
あなたは猫かしら
遥か頭上でものを書き
原稿用紙をはらはらと
あなたが猫だったなら
ずっと傍にいてくれる (山田彩緒)
強くなれる弱音を吐けば
弱くなった心を折る
さみしさを仰山積んで
トラクターが田植えに向かう
青々の梅雨田に
私の苦役が呼ばれて
サッカーボールが飛んでいく
かなしみを背負った小雀が
友を呼ぶ声で
私もまた(山田真佐明)
◆ 作品評から
ギャグアニメテレビの前を皿が飛び 笛地静恵
~フライング・ソーサーですね。(飯島雅史)
息継ぎに出ては引つ込む今年竹 しまねこくん
~しゅぽっ!(名犬 ぽち)
サイダーも兵器と変わる時が来る akao
~サイダーが兵器に変わるとはとても面白い視点だと思います。パチパチという音なのか、それとも飲みすぎると体に悪いということなのか、色々考えることができて興味深かったです。(季川詩音)
市役所で詩集の朗読したいとき 山田真佐明
~〈ぎんこうのまえにまだいる やきいもや 高田寄生木〉を思い出した。掲句も朗読しちゃったほうが良くなるのでは。(月波与生)
右折して左折左折のまた左折つまり私の隣においで しまりす
~「私の隣においで」が深夜放送のつぶやきのようでササル。右折左折も寓意が感じられて面白い。「つまり」が大人。 (月波与生)
このペンだこの既視感は大乃国 汐田大輝
~大乃国に着地したのは見事。一本気な性格のようで現役時代は苦労され、親方の現在閑職に飛ばされている。ガンバレ大乃国。(月波与生)
雲丹同士喧嘩の時は刺し合ふか しまねこくん
~雲丹にトゲがあることについては馴染みがあるのに、喧嘩のときは刺し合うのかというのは考えたことがありませんでしたね。面白い問いかけだと思います。(季川詩音)
角がとれて 丸くなった でもそれは 私の一部が 欠けてしまった 麻月
~「角がとれて 丸くなる」というのは、本来であれば良いことだと認識していました。しかしながら、それは同時に、自分自身の何かを失うことであると作品を通して気付かされました。(季川詩音)
びっしりと円周率のアロハシャツ 蔭一郎
~「びっしりと」がアロハシャツの解像度を上げてくれている。円周率とアロハシャツの言葉のバランスもいい。うまい。(月波与生)
好きに生きろと言うズンドコベロンチョ クイスケ
~「ズンドコベロンチョ」って何のことかわからないが「ズンドコ」「ベロンチョ」に分けると意味らしいものは伝わる。無意味な音でも別に構わない。10句並べてみるのも面白いだろう。(月波与生)
なんとなく島ということだけわかるジャマイカみたいな距離感の人 水の眠り
~「ジャマイカみたいな距離感」いいね。最初の「島ということだけわかる」のすっとぼけ感もよい。川柳も書いてほしい人。(月波与生)
君という名前の天気があったら 季川詩音
~毎週たくさんの作品の評を書いていることが自作にも好影響を与えていると思います。「君という名前の天気」までは素晴らしいので下5を引き締めると句はもっと良くなりますよ。(月波与生)
鈴蘭や一人にひとつづつ孤独 カオルル
~さみしい夜の句会 の発足動機が孤独をかかえた知らないもの同士がぽつぽつを投稿し合う場をつくることだったのでこの句はとても句会に合っている。(月波与生)
睡蓮の花が出てくるトースター しまねこくん
~わはは。これは、おかしい。ポン。飛び出している。枯れて、茶色で、しわくちゃに、なっちゃった奴。パンを焦がしてしまった。臭いがするはずなのに。朝の忙しいときには、ついついやってしまいますよね。日常の決定的瞬間のスナップ。座布団一枚。(笛地静恵)
計量でさっそくあめふらしと喧嘩 蔭一郎
~「さっそく」というのが良いですよね。たとえば、出勤して早々、喧嘩をしてしまい今日も憂鬱な1日が始まったという気持ちを読み取りました。(季川詩音)
にわか雨ちりぢりに散る1000の靴タンバリン打ち鳴らしたように 水の眠り
~カラオケ行くと歌いますよー\(^o^)/詠んでくれて嬉しいです(白石ポピー)
~あぁ、いい短歌ですね〜ROSSO大好きですよ(早坂ユキオ)
この辛い世を生きながらあなたとの一つ一つを心に刻む しまりす
~人生で体験する喜びと葛藤を同時に上手く表現していると思いました。「あなた」というのもいろいろ想像が膨らみます。友人、恋人、親など、いろいろな人物を思い浮かべました。(季川詩音)