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さみしい夜の句会報 第221号&第222号(2025.5.11-2025.5.25)
第221号&第222号の参加者は82名でした。ありがとうございました。参加された方の1作品以上を掲載しました。掲載のない方、誤字脱字等ありましたらDMにてご指摘下さい。投句はテキストにてお願いします。テキスト以外の投句は週報に反映しませんのでご注意願います。
このところ参加者、投稿数とも増えているようで嬉しく思います。だたその分、選、週報の取りまとめには時間がかかりやはり1週間分でまとめないと大変なことになることを実感しました。次回からは多少遅れてもできるかぎり1週間ずつ句会報をまとめていきたいと思います。
◆ 参加者(82名)
クイスケ、成瀬悠、宮坂変哲、しまねこくん、汐田大輝、蔭一郎、カオルル、もん、水の眠り、匂蕃茉莉、砂原妙々、まどけい、涼閑、西沢葉火、ちゅけ彩緒、鈴木正巳、西脇祥貴、石川聡、山羊の頭、窓花、あやな、季川詩音、西沢葉火、左右ねる、東こころ、或十、桂月、しまりす、山田真佐明、牛田悠貴、ゆりのはなこ、アリタ別館、円山すばる、雷(らい)、nes、岡村知昭、塩の司厨長、なさわご、何となく短歌、ひともじ庵、内海千智、冬野志奈、しろとも、片羽 雲雀、輪井ゆう、魔理沙(new)、本藤美賀、suzume suzuki、ひいらぎ、黒木悠希、舞風 奏、もん、akao、古城エッ、もず、季川詩音、笛地静恵、夜ポエム寄る?、宮坂変哲、汀、ゆう、Nichtraucherchen、石原とつき、流離するおかん時々オクラちゃん桃瀬、憚譚之傍見、ひいらぎ、シャムローズ、呪街管理人、白石ポピー、松本桃英、猫塚れおん、なさわご、名犬 ぽち、シャムローズ、ぐりこ、JUNKY店主、さちの扉、くさのけいこ、たかぎぷりん、森内詩紋、森こずえ、月波与生
◆ 川柳・俳句
舌を出す頃には花が咲くでしょう しろとも
ずぶ濡れで蜥蜴の穴に招かれる 蔭一郎
国産の宇宙の果てにある楽譜 蔭一郎
最後には毒親に振る味の素 蔭一郎
てのひらの線も転売されてゆく 蔭一郎
真っ黒いカードが早乙女に届く 蔭一郎
よく見たら鹿の子斑がみな梵字 蔭一郎
水はいう 薔薇が足りないこの世の薔薇が 蔭一郎
ペリカンの減らない部屋の蓄音機 岡村知昭
どうしようシロツメクサの啼く朝だ 岡村知昭
新聞の十一面で観音経 山田真佐明
鷲は潰れてジムノペディはジムノペディ nes
かんてんの見えない部位が聳え立つ 汐田大輝
こんとんを夢みていたい脱穀機 汐田大輝
つま先が美しくなる穴子飯 汐田大輝
人を斬る前にはずっと壺だった 汐田大輝
月末のローソンが吐く天花粉 汐田大輝
くるしまずにのりまきになる方法 汐田大輝
オクラホマミキサー全員死刑囚 汐田大輝
野いちごが竜宮城で目を覚ます 汐田大輝
小刻みに標本となり漏れる音 左右ねる
おへそにたまる仮の国を拭い取る 左右ねる
電動の食パンに能力を問う 牛田悠貴
麻酔から覚めて二時間ほど蜥蜴 しまねこくん
覚悟から遠い所に熱帯魚 しまねこくん
学年が同じ鵜だとは思へない しまねこくん
対岸もたぶん五月の川だらう しまねこくん
いいわよね勉強できてぼうふらで しまねこくん
狼煙にはならずに焼き芋が焼ける 西沢葉火
傘を差せ仮性包茎だとしても 西沢葉火
恐竜の尻尾の先っぽまで地球 西沢葉火
ズル休み電話の声のビブラート 宮坂変哲
闘魚とも呼ばれ静かな水の居間 雷
降りればいつもの足もとある渡船 雷
からくりも風も大事もこぼれ出る 牛田悠貴
報いと色違いの中島みゆき 西脇祥貴
卒業後いまだ新鮮な後悔 輪井ゆう
生前の林檎酒ばかり削除する 成瀬悠
座標から左瞼が分からない 成瀬悠
シャコ貝が動機を語るはずもなく 成瀬悠
二代目のアルゴリズムに塩を振る 成瀬悠
洗い物不足の雨に気をつけて クイスケ
歯ブラシの解放段階を匿う クイスケ
身代わりに戦車のくぼみらしくある クイスケ
真昼間に風呂場の蜘蛛を逃がしつつ クイスケ
酒でも飲まないと交換日記だよ クイスケ
別腹がじんじん痛むめくらまし クイスケ
結葉のざわめき放課後のひかり カオルル
初夏の白く眩しき喉仏 カオルル
青蓮院門跡青蜥蜴走る カオルル
*
現代のトリケラトプス達の知恵 もん
風を待つ船の気分の旅の空 涼閑
夕焼けや放水高く消防士 鈴木正巳
夕映えに聳えるラララ無人君 石川聡
あの場所に居たかったと、桜は散った 山羊の頭
コンプラや山頂にまだ溶けぬ雪 窓花
蓮になれ今日という日は蓮になれ 季川詩音
夏祭りガパオライスにナシゴレン 季川詩音
失敗はなにかをやった結果です 季川詩音
繋がった夜を隠してチョコレイト 東こころ
朝4時まで勉強してもテストは3点 或十
ペラペラと舌か紙かとルンルンと 笛地静恵
電車遅延上野東京盲腸炎 Nichtraucherchen
献血の金魚の鰓のカトリーヌ 石原とつき
記憶を上書きして 負けるが勝ち 流離するおかん時々オクラちゃん桃瀬
花は咲き花は散りゆくつかの間や ひいらぎ
下手くそな漢字を書くやローマ字の日 まどけい
さざ波に削られていく恋心 なさわご
新しい革靴擦れの小糠雨 塩の司厨長
代掻きや初夜の床より入るる念 ひともじ庵
新人が懸垂幕になる会社 内海千智
*
引越しの途中で返り点を打つ 月波与生
◆ 短歌
秘伝だと信じてた出汁は市販品健やかなる日は強がらなくて 水の眠り
牛乳の好きな娘に離された仔牛のことは黙っておいた 水の眠り
雑踏にあふれあふれた無関係それでも君の水は水色 白石ポピー
*
今ごろは家を建ててるはずだった ニトリに出かけ手ぶらで帰る 匂蕃茉莉
耳のないうさぎになった夢の続き見たくて飲んだ錠剤の色 砂原妙々
戦いの傷は忘れてむくむくの雑種の子犬子らとたわむる 笛地静恵
若い男の子かこって育てたい…これも母性に入る? あやな
そこで揺れている木の枝のようにそこにいるだけでいいんだ 桂月
後ろから追い抜いていくその一瞬君は私を逆行してる しまりす
届かない声だと知るも送っては ラジオネー厶のみあなたの声で アリタ別館
大雨のガラスに映るビタミンの不足した顔ぐちゃっとかき消す 円山すばる
愛情以外の何ものでもないものに行き当たって、人間でありたいと心が雨を打ち始める日 夜ポエム寄る?
死にたくて誰より生き恥晒してて 矛盾してるの笑ってほんと 舞風 奏
1人苦しい夜、あのノイズかうるさいバンドだけが希死念慮を包んでくれる 汀
手の平に夜風を当てて教え込むこれがこの街の夜の匂いだよ 黒木悠希
君は星 そっと微笑むそれだけで私の無明に一筋の道 何となく短歌
かなしいな誰にも見つけてもらえない どこに行っても透明人間《いないみたいだ》 松本桃英
愛なんて形のない物出されても入れる器を用意できない 猫塚れおん
泣ききって身体拘束ほどかれるこんなに生きたい朝だと気付く ゆりのはなこ
◆ 詩・短文
忘れないで草
今日もひちょりと咲く
もっと猛々しく
毒々しく
艶やかに
甘く香ったって
よいよ
忘れないで草
花束にして
投げつけたい背中が
あってもいいかな (特急はなます ちゅけ彩緒)
よんぴゃくえんにぎりしめて
かいにきた
ねこのごはん
たぶんあれがねこ
ふこふこしていたから
ほんもののおかね
えらんだら
よんぴゃくえん
あった
ねこのごはんなら
だとう、だろう
ねこはこんにちはした
たぶんともだちになれるとおもう
なんでかおもう(野原 ちゅけ彩緒)
「私たちはもう歌いませんし、踊りませんし、笑う事も、泣く事すらもしたくありません。擬人化に飽いてしまったのです。」と、すみれ族が吐露する。(憚譚之傍見)
大人になったら孤独に強くなると思ってたけど、むしろ弱くなった気がするなぁ。なんか。。 誰かの声が欲しくなるのは私だけ?(ゆう)
ひとをすきになるたびに ひとをしんようするたびに じぶんがしぬ (呪街)
◆ 作品評から
対岸もたぶん五月の川だらう しまねこくん
~対岸が川なら岸はどこですか? (名犬 ぽち)
真っ黒いカードが早乙女に届く 蔭一郎
~真っ黒いカードとは何か想像が膨らみます。クレジットカードを一番はじめに思いつきましたが、オカルト的なお話とも読めます。面白いです。(季川詩音)
いいわよね勉強できてぼうふらで しまねこくん
~やや皮肉的というか嫉妬を含んだ作品だと解釈しました。勉強ができて〜のあとに続くものが、ぼうふらというのも意外性があって面白いです。(季川詩音)
てのひらの線も転売されてゆく 蔭一郎
~なんでも転売される世の中になりましたね。それを皮肉的に表現してるようにも捉えられ、興味深いです。 (季川詩音)
蓮になれ今日という日は蓮になれ 季川詩音
~「蓮になれ」の一句、儚さと強さが共存してます…。赤と黄色のイメージカラーも詩に滲んでる気がします。(シャムローズ)
ペラペラと舌か紙かとルンルンと 笛地静恵
~ペラペラという言葉だけを見ると、言葉(とくに外国語)が上手なのか、紙が薄いのか色々想像が膨らむところです。『ルンルンと』につながっているのは、気になりつつも散歩とかしたのかなと思いました。(季川詩音)
牛乳の好きな娘に離された仔牛のことは黙っておいた 水の眠り
~そうなんですよね、牛乳はおかあさん牛じゃないと出ないんですよね。なんかそういう生き物のように思ってしまいますけど。(ぐりこ)
夏祭りガパオライスにナシゴレン 季川詩音
~いいね、これ面白くて好きだ。(JUNKY店主)
結葉のざわめき放課後のひかり カオルル
~良い句だと思います。結葉と学校の設定、放課後の光が良いですね(さちの扉)
愛なんて形のない物出されても入れる器を用意できない 猫塚れおん
~短歌みたいに読んじゃいました。 さっきはMasumiさんのポストの一文が俳句のように感じたり。 今日はどうしちゃったんでしょう、ワタシ。(くさのけいこ)
昭和の日ちんこはお湯に浮かぶのみ しまねこくん
~祝日でなくても「ちんこ」は浮かぶが「昭和の日」と合わせたのが運の尽き(月波与生)
タケノコの精液に似た匂いなぜ 連休あとのゆるい教室 水の眠り
~「精液」反応する人は多いだろうが似てる?戸惑うひとも多いのでは。栗の花だと当たり前なのだから「タケノコ」というイメージしやすくてエロで無くという微妙なライン。(月波与生)
刺股もアルファベットに試される 成瀬悠
~刺股の弱点がYouTubeで晒されそれに対応するために刺股は進化していく。アルファベットのどれが刺股の弱点を露わにしたのか気になるところ。(月波与生)
あの場所に居たかったと、桜は散った 山羊の頭
~あの場所とはどこなのか想像が膨らみます。せっかく見つけた場所にずっといることができたら幸せかもしれません。しかしながら、成長をしていくためには場所を変えなければならない。それは人間も同じだと思います。未練と、あの場所がいかに良い場所かの色々な感情を感じて面白いです。(季川詩音)
コンプラや山頂にまだ溶けぬ雪 窓花
~干し柿の白い粉のやうだ(たかぎぷりん)
よく見たら鹿の子斑がみな梵字 蔭一郎
~この句、好きです(森内詩紋)
失敗はなにかをやった結果です 季川詩音
~RPGとリアルの違いはさ、失敗してもリアルは経験値ドサドサ入るんだよね。失敗はどんどんしちゃえばいい。(森こずえ)
電動の食パンに能力を問う 牛田悠貴
~電動の食パンという発想そのものが面白いです。しかも能力を問うとはどういうことかと考えましたね。よくよく考えたら、食パンは動くはずがないですし、それが動くとすればその能力は如何程かと問いたくなるものですね。そういえば、某有名アニメに、暗⚫︎パンがありますね笑(季川詩音)
我々は平和なカフェラテの広告 クイスケ
~「我々は広告」という決め付けがまず面白い。「平和なカフェラテ」はやや言い過ぎな感じもするが、「広告」が決め付けを上手く処理している。(月波与生)
切実な感情なのでクラウドへ(割らないように)一度預けた 胡椒黒
~(割らないように)が効果的。「切実な感情」は曖昧なのでクラウドに格納されてしまう。(月波与生)
人妻となる日蜥蜴を見てしまふ カオルル
~「蜥蜴」を見てしまうのは何の予兆なのだろう。「人妻となる日」の言い回しが懐古的で日野日出志の絵を思い出してしまった。(月波与生)
初夏の白く眩しき喉仏 カオルル
~良い句ですね。若者の幼き喉仏。初夏の季語がとても良いですね。(さちの扉)
水はいう 薔薇が足りないこの世の薔薇が 蔭一郎
~577で575の鬼の蔭一郎さんには珍しい韻律。 後半の77の7音の内訳が(3+4)(4+3)。 こういったパターンも素敵でいいですね。(石川聡)