UnsplashのRomain Briauxが撮影した写真
さみしい夜の句会報 第220号(2025.5.4-2025.5.11)
第220号の参加者は52名でした。ありがとうございました。参加された方の1作品以上を掲載しました。掲載のない方、誤字脱字等ありましたらDMにてご指摘下さい。投句はテキストにてお願いします。テキスト以外の投句は週報に反映しませんのでご注意願います。
このところ川柳以外で忙しい日が続き22時前に疲れて寝てしまい、本日ようやく220号を発行できました。次回221号は秋田の浅利猪一郎さん宅で開催する『川柳合宿』参加のためお休み、222号との合併号とします。
◆ 参加者(52名)
クイスケ、成瀬悠、海馬、、しまねこくん、笛地静恵、片羽雲雀、蔭一郎、山田真佐明、輪井ゆう、魔理沙(new)、石川聡、西沢葉火、胡椒黒、武井窓花、西脇祥貴、水の眠り、本藤美賀、カオルル、東こころ、ちゅけ彩緒、鈴木雀、鈴木正巳、ひいらぎ、季川詩音、雷(らい)、何となく短歌、汐田大輝、黒木悠希、舞風 奏、もん、なさわご、akao、宮坂変哲、古城エッ、もず、アリタ別館、モノノヒトミ 低浮上、呪街管理人、岡村知昭、まどけい、もふもふ、冬野志奈、星野響、阿笠香奈、匂蕃茉莉、膝の上のねこ、nori、さちの扉、KAZU、桜咲蓮希、石原とつき、月波与生
◆ 川柳・俳句
点線で囲んで「出られるよ」なんて 海馬
眼鏡だと言っても橋かもしれません 海馬
昨日から記号で呼ばれ立つ屋上 成瀬悠
刺股もアルファベットに試される 成瀬悠
神の親指の逆再生 クイスケ
我々は平和なカフェラテの広告 クイスケ
野菜には時計の針が答えます 山田真佐明
ため息は殺されかけた高倉健 山田真佐明
言いかけてやめるバンドを好きでいる 雷
水蜘蛛や田面の富士を滑降す 鈴木正巳
二度開く夏の扉は無いですよ しまねこくん
牛丼に刻んで掛ける赤い薔薇 しまねこくん
昭和の日ちんこはお湯に浮かぶのみ しまねこくん
さまざまな機械人形寺山忌 汐田大輝
フロイトのオモチャになった保育園 汐田大輝
星の数ほどのスッポン脱ぎ捨てる 汐田大輝
どうしてもあたまにつけるラ・ってばよ 蔭一郎
ひるがおの輪郭だけが天に召す 蔭一郎
水槽の揺れる想いに餌をやる 蔭一郎
薔薇だけを星に残したきみの罪 蔭一郎
うれしいな ってばよからつく既読 蔭一郎
宇宙船ぜんいん仲間だったのに 鈴木雀
DMの既読うつくしい秘密 東こころ
花を生みたい筆の撫でる空白 輪井ゆう
狛犬になったばかりだからわかる 岡村知昭
青蓮院門跡青蜥蜴走る カオルル
人妻となる日蜥蜴を見てしまふ カオルル
青嵐『全て緑になる日まで』 カオルル
さらさらと降る雨あをし桐の花 カオルル
*
ばあちゃんを喜ばすためヨモギ摘む 笛地静恵
綻んでひるがお思い出し笑い 片羽雲雀
かじるのはやめて耳にはカタツムリ 西沢葉火
大丈夫 火も河もわたくしだから 武井窓花
音も毛も柄も初夏も中島みゆき 西脇祥貴
川蜻蛉さがすことさへ許されぬ ひいらぎ
推し活に試練なくとも未練あり 季川詩音
五年経った目でみる白紙です 雷
眠れずにまみえた朝の低き鳥 武井窓花
苦しゅうないおもてをあげい さうだあじ もん
取りこぼす滴砂漠に消えていく なさわご
街灯り夜明け前でも見える雲 宮坂変哲
夜ニ聞ク蛙ノ歌ハ寂シイネ もず
お帰りと鯉のぼり迎う雛人形 アリタ別館
コロコロの日猫に衣装を着せてみる まどけい
投句して 名前だけ載る 219 もふもふ
発つために我も風待つ鯉のぼり 冬野志奈
黒い宇宙にゴミを投げる一人 呪街管理人
いたずらに星座をほどく青嵐 星野響
泣きたくなるほど恋だった 阿笠香奈
*
まどみちお潜むデシリットルの海 月波与生
職歴にマーライオンと書く 月波与生
◆ 短歌
タケノコの精液に似た匂いなぜ 連休あとのゆるい教室 水の眠り
「い・ろ・は・す」は錠剤のため常備して機嫌の良さを売り物にする 水の眠り
切実な感情なのでクラウドへ(割らないように)一度預けた 胡椒黒
*
ひとりぼっちの今 あなたの 懐の深さを 知りました 魔理沙
ウイスキーブームひとまず終わったか食卓に置くホワイトホース 石川聡
空よりも透明な青 喉の笛根性だけでは生きていけない 何となく短歌
あなたから 感じる甘えに メスを刺す 出た膿すらも手で拭う夜 黒木悠希
「死にたい」は何処まで行っても 「死にたい」で 裏返したって「死にたい」だから 舞風 奏
足音に気づかないフリお互いに背中越しでも愛していたね 古城エッ
片づけた冬の服達また出して部屋を見渡しため息一つ モノノヒトミ 低浮上
吾子が泣く「ばいきんまんを見たいの」と 悪役が好き 女は分からん 匂蕃茉莉
考えることはいくらでもあると強気な最初の五年残りの十年周回遅れ終わらせられない恋に似たもの 膝の上のねこ
◆ 詩・短文
道道
朝の匂いを吸い込んで
それは植物の匂いだろうなと思う
道道、蛙が鳴いている
とてもよい
あゝこの田舎道の
木製の電信柱が折れた頃
灯りひとつ
目印ひとつ無くなって
それでも蛙が
こっちだよと鳴いていた
たくさんの蛙が
私を家に帰した (ちゅけ彩緒)
夜の静寂を破る母の声。
心配は御無用です。私は静寂な勉強部屋で一人で過ごすのが好きなのです。(本藤美賀)
◆ 作品評から
ばあちゃんを喜ばすためヨモギ摘む 笛地静恵
~懐かしいですね。花とか植物に詳しい今は亡き祖母を思い出しました。祖母と摘んだ覚えがあります。ただ、いまは食中毒とかも怖いのでそういう文化が薄れてしまってる部分があるかもしれません。 (季川詩音)
ウイスキーブームひとまず終わったか食卓に置くホワイトホース 石川聡
~『ひとまず』というのが良いですね。また流行るかもという希望を感じます。これが牛乳とか腐敗しやすいものであれば、ひとまず置くってことが難しいですが、長期保存が可能なウイスキーなのがまた良いです。(季川詩音)
春深むエロアカウントの中の人 しまねこくん
~threadをほったらかしにしていたらエロアカウントからの申請でいっぱいになっていた。あの人たちの中の人にも幸せが訪れてほしい。(月波与生)
伝わらないパントマイムで小人を食べる 海馬
~違うことを表現しているのだが小人を食べているようにしか見えない「伝わらないパントマイム」。そして戦争が始まる。(月波与生)
青嵐『全て緑になる日まで』 カオルル
~懐かしい、レージデージとマリオンのあの物語ですか?関係なかったらごめんなさい。(冬野志奈)
薔薇だけを星に残したきみの罪 蔭一郎
~星の王子さま なんてすてき (nori)
うれしいな ってばよからつく既読 蔭一郎
~「うれしいな」みたいに何気ない会話ができる人って本当に大切ですし貴重だと思います。何気ない会話のできる人こそほっとけないですね。(季川詩音)
あしたから全人類の背がちぢむ 蔭一郎
~ウソツケ、と思うが言葉の力は恐ろしいもので「そういうことも起こるかもな」と思わせる(こともある)。そういえば自分も、最もデカかった頃に比べると2cmほど縮んでいる。オソロシヤ。 (月波与生)
柔らかな手だったきっとめいっぱい手放してきた空の匂いだ ちゅけ彩緒
~手⇒空⇒匂い という広がりが大きくて腕が滑走路のようだ。「めいっぱい」が効いているんだろうな。(月波与生)
町会の塩おにぎりを毒味する 汐田大輝
~微笑ましい光景思いながらも「毒カレー事件」とかあったので毒味役はいるのかもしれないなと思ったり。誰もやりたがらないだろうが。(月波与生)
街灯り夜明け前でも見える雲 宮坂変哲
~雲って朝や昼のイメージが強いですが、夜でも見えるときがありますよね。そのときに見える雲は、なんだか寂しげに見えます。(季川詩音)
青蓮院門跡青蜥蜴走る カオルル
~良いですね。文字の並びも、蜥蜴走るで句を納める。(さちの扉)
人妻となる日蜥蜴を見てしまふ カオルル
~この句、胸ぐら掴まれました(KAZU)
職歴にマーライオンと書く 月波与生
~職歴にマーライオンというチョイスが面白いです。冗談だったのか、本当だったのか、いずれにせよ面白いです。きっとみんなからの人気者になるはずです。(季川詩音)
推し活に試練なくとも未練あり 季川詩音
~推し活はできる時にできることをやればいいと思うのですが、卒業などが決まると、あの時こうすれば良かったとか、あの時あのイベントに行っておけば良かったと未練が残るものです。 その心情を綺麗に捉えていると思います。(桜咲蓮希)
夜ニ聞ク蛙ノ歌ハ寂シイネ もず
~めっちゃ分かります。夜に聴くとなんとなくどんな曲も寂しく聴こえます。選曲の問題かもしれませんが不思議ですね。(季川詩音)
さらさらと降る雨あをし桐の花 カオルル
~良い雨ですね。風のような雨、さらさらがいいなって思いました。あおい雨が、青い雨の方がさらさら感が出ていいかなって思ったりして。(さちの扉)