UnsplashのDevin Dumpsonが撮影した写真
さみしい夜の句会報 第219号(2025.4.27-2025.5.4)
第219号の参加者は42名でした。ありがとうございました。参加された方の1作品以上を掲載しました。掲載のない方、誤字脱字等ありましたらDMにてご指摘下さい。投句はテキストにてお願いします。テキスト以外の投句は週報に反映しませんのでご注意願います。
今まで詩のエリアが他に比べて弱ったのですが今回ちゅけ彩緒さん、山田真佐明さんが作品を投稿してくれました。触発されて詩のエリアの投稿が活発になれば嬉しいです。
◆ 参加者(42名)
クイスケ、成瀬悠、海馬、代本版,、もふもふ、呪街管理人、しまねこくん、魔理沙(new)、蔭一郎、ちゅけ彩緒、本藤美賀、笛地静恵、カオルル、輪井ゆう、冬野志奈、山田真佐明、水の眠り、西沢葉火、涼、鈴木正巳、しろとも、雷(らい)、匂蕃茉莉、石原とつき、季川詩音、汐田大輝、アリタ別館、片羽雲雀、武井窓花、苺、漁火いさな、九龍、西脇祥貴、黒木悠希、宮坂変哲、板里カエ、千春、Tomoko、まどけい、多生、なさわご、akao◖、月波与生
◆ 川柳・俳句
おはように砂をつめてもいいですか 成瀬悠
蜂の巣のそれ自体が詩である時 成瀬悠
他人事としては薔薇より冷蔵庫 海馬
伝わらないパントマイムで小人を食べる 海馬
なめらかなグラデーションになるサロメ クイスケ
春深むエロアカウントの中の人 しまねこくん
東スポは今と変はらず昭和の日 しまねこくん
人類が猿へ猿へと衣替へ しまねこくん
カメレオンだものみずあめだいきらい 岡村知昭
シスターのパン焼く匂ひ夏木立 鈴木正巳
町会の塩おにぎりを毒味する 汐田大輝
末の子はあんドーナツになりました 汐田大輝
ためいきで斜めになった金字塔 蔭一郎
あしたから全人類の背がちぢむ 蔭一郎
口元にキムチの跡があるキリン 蔭一郎
お遍路で迷いいまガラパゴス諸島 蔭一郎
葉を笠にしてコロポックルの遍路 蔭一郎
だいすきなバンドTシャツ着て遍路 蔭一郎
猫の子に苗字をつけてゆく仕事 蔭一郎
おむらいすふぁららなだれる春の雲 石川聡
さくらちるあっちは真剣白刃取り 石原とつき
つみびととして生きている多年草 武井窓花
掻きむしる背中かさぶた五月闇 片羽雲雀
夜桜の前任者から報告です 山田真佐明
花の色あなたの背中軋ませて 千春
*
むき身のクラス替えだから、から? 代本版
独り身の 明哲保身 夜半の夏 本藤美賀
大損吸引力が減らない唯一 笛地静恵
修司忌の少女は海へ行くといふ カオルル
真っ白な地図読み間違えて独り 輪井ゆう
黴臭き岩波文庫憲法記念日 冬野志奈
吊り革に掴まる土星 西沢葉火
帰宅してテレビ点けたらドラえもん 涼
一株のミントみたいな人でした しろとも
街にぽっかり街になる前の土 雷
冬の空鯨といるかはたぶんいる 季川詩音
蒸し蒸して 慌て取り出す扇風機 九龍
謹んで襟を踏む中島みゆき 西脇祥貴
嘘だってわかっていてもあいの風 宮坂変哲
置いていく 音の鳴る靴 降る綿毛 板里カエ
囀りや全てに意味がありすぎる akao
図書館も休みで昼寝昭和の日 まどけい
怒んなよからだが光って欲しいだけ 多生
風がない夜 呪街
指を折る終わりばかりを数えてる なさわご
*
正義って苦いねアンパンマンの餡 月波与生
◆ 短歌
柔らかな手だったきっとめいっぱい手放してきた空の匂いだ ちゅけ彩緒
母さんは電話を切るとオクターブ下げた地声のジャージのすがた 水の眠り
*
ウェディング ドレスを纏う 純白の フランドールは 悪魔と天使 魔理沙
精神の波の狭間にたゆたえばわれ苦しめる心とは何 匂蕃茉莉
失くしたと思った君の欠片いて また少しだけ赦された気に アリタ別館
もう来ない分かってるのに空耳で通知音まで聞こえてしまう 苺
さよなら が形を変えて三日月になったよ 君も見てるといいな 漁火いさな
眠剤とお酒と自慰に頼らずに明日こそ眠ると昨日も言って 黒木悠希
痛いのは辛いですね、と書きかけて せめて猫らが側にと念じる Tomoko
今更さ何か願うには遅過ぎて 潔白でない 過去を消したい 舞風 奏
◆ 詩・短文
夜が飛んでいく
炭酸の海におちて
息もできない
朝が萎れていく
季節の波に沈んで
風に流される
ああと叫べよ
おおとこたえるものなく
旅が始まる
雪を食べて
吹雪の夜をやり過ごす
暴れる風
横殴りの雪
ことばの吹雪
咆哮する真っ暗なそら
が飛んでいく (山田真佐明)
体を起こす
目で見た
ぐうるりと
見た
背中に触れた
死者は
背中を向けるという
安いお酒と
ちょっといい煙草
あなたの
気に入りだったライター
小さくなった
手紙を開く
あのときの約束が
書かれている
体を起こす
お返事を
書き続けなければならない (ちゅけ彩緒)
夢を見ない
夢を見なくなって何年経つだろう
夢を見たい
また夢を見たい
夢の世界
夢を見ることも赦されないのか ぼくは (呪街)
◆ 作品評から
お遍路で迷いいまガラパゴス諸島 蔭一郎
~かなり迷って海外まで行ってしまったようですね、、。とほほほほ。果たして帰って来れるのでしょうか。(季川詩音)
葉を笠にしてコロポックルの遍路 蔭一郎
~おそらくアイヌのお話でしょうか。実は自分は、北海道出身なのですがこの作品はコロポックルの特徴を捉えていてすごく気に入りました。(季川詩音)
だいすきなバンドTシャツ着て遍路 蔭一郎
~おはようございます。いいですね~。襟がよれよれならさらに良し!(石原とつき)
アントニオ猪木の顎が好きな鰐 汐田大輝
~顎と鰐の漢字の近似性とアントニオ猪木との(言葉の)距離感がいい。(月波与生)
背油チャッチャ そこにやまない雨がある 蔭一郎
~ナンセンスと詩情を接続して独特の世界を見せてくれる蔭一郎的美意識溢れた句。「そこに」ってなかなかここに「そこに」は置けない。(月波与生)
猫の子に苗字をつけてゆく仕事 蔭一郎
~ほんわかしますね。あったかい作品です。しかしながら、捨て猫なのかもと考えると泣けてきます。猫にも名前を苗字をつけてあげたいですね。(季川詩音)
冬の空鯨といるかはたぶんいる 季川詩音
~この句は「鯨」をひらがなにするか「いるか」を「海豚」と漢字にしたほうがいいような気がしました。もしくは両方カタカナ。あと「たぶんいる」の前の「は」はいらないかも
さよなら が形を変えて三日月になったよ 君も見てるといいな 漁火いさな
~時間の変化を感じますね。空はつながっているという気づきも感じました。そして、君というのは、別れた恋人でしょうか、それとも遠くにいる家族や友人でしょうか。いろいろ考えさせられます。仮に別れた恋人であれば、円満に終えたのだと思いました。(季川詩音)
かつてはアバンギャルドだった西 もん
~4,6,5の破調。アバンギャルドだから破調でもいいのだが。「西」のところを4音字の言葉にすれば10,7で体裁は整うことろを「西」。この「西」が効いている。(月波与生)
ピアニカの蛇腹に息を吹き込めば思いのほかにさみしい音色 水の眠り
~「さみしい音色」は分かりやすいけど読み手の想像力を狭くしているようにも思う。「ピアニカの蛇腹」の出だしがいいだけに。 (月波与生)
人類が猿へ猿へと衣替へ しまねこくん
~少し平和になるかも知れぬ(鷺沼くぬぎ)
「ええやんけ」関西弁で言われたら前を向けそうないのちの電話 ゆりのはなこ
~10年ほどいのちの電話相談員を務めていたことがある。辛いのは自分がいのちの電話相談員であることを言えないこと。さみしさも死にたいも伝染することを知った。(月波与生)
透明な洋館空を埋めつくす 江口ちかる
~透明だから見えないのだけどこの閉塞感はきっと透明な何かで埋めつくされているからなのだろう。世界は透明に埋めつくされている。(月波与生)
宝毛は右腕にありトム・ウェイツ 山田真佐
~トム・ウェイツを川柳に書いたのをはじめて見た。知らない人も多いだろう。まずは自分が心地よい言葉で575の世界を広げていけばいい。(月波与生)
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