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さみしい夜の句会報 第218号(2025.4.20-2025.4.27)
第218号の参加者は51名でした。ありがとうございました。参加された方の1作品以上を掲載しました。掲載のない方、誤字脱字等ありましたらDMにてご指摘下さい。投句はテキストにてお願いします。テキスト以外の投句は週報に反映しませんのでご注意願います。
XのTLを眺めていると川柳を書いている人がここ2年くらいでずいぶん増えた印象です。私のように結社に所属している人間が間口を広げるためにネットで川柳を書いているのではなく、ネットが川柳創作の起点となっているようで、これがさらに裾野を広げていくのか、あるいはより深化していくのか見守りたいと思います。
◆ 参加者(51名)
クイスケ、成瀬悠、海馬、しまねこくん、カオルル、黒木悠希、輪井ゆう、牛田悠貴、塩の司厨長、西脇祥貴、呪街管理人、山田真佐明、shyisnormal、季川詩音、西沢葉火、水の眠り、もん、蔭一郎、桜咲蓮希、武井窓花、円山すばる、宮坂変哲、匂蕃茉莉、舞風 奏、ひいらぎ、しんいち、雷(らい)、汐田大輝、何となく短歌、crazy lover、ゆりのはなこ、江口ちかる。、🍓、石原とつき、akao、なさわご、鈴木正巳、山羊の頭、しろとも、Kiyoko | 清子、石川聡、片羽 雲雀、まどけい、冬野志奈、魔理沙、あきのつき、藤井智史、コマさん、トルバドール、あおいひなた、月波与生
◆ 川柳・俳句
家族なら脱走手配をするはずで 山田真佐明
宝毛は右腕にありトム・ウェイツ 山田真佐明
コンビニに百円玉を敷きつめる 山田真佐明
菜の花の色であなたを塗りつぶす あきのつき
鰹追う目からこぼれる太平洋 鈴木正巳
海霧(じり)晴れてミサイル聳ゆ国後島 鈴木正巳
苧環の花に摘まれたおとこたち 蔭一郎
お祈りを浅黄水仙から始め 蔭一郎
背油チャッチャ そこにやまない雨がある 蔭一郎
白藤や百日ぜきの百日目 蔭一郎
投げ縄ではるたけなわを捕獲する 蔭一郎
逃水の飛沫を浴びて寛解す 蔭一郎
逃水の跡に散らばった星座 蔭一郎
ラフカディオハーンの耳をかじる夢 汐田大輝
アントニオ猪木の顎が好きな鰐 汐田大輝
鎌倉の和菓子でボコボコにされる 汐田大輝
行く先はたぶん寝癖が知っている しろとも
透明な洋館空を埋めつくす 江口ちかる
アドリブを温めている鳩時計 西沢葉火
かつてはアバンギャルドだった西 もん
時事消えて一の位をなぞるヨガ 牛田悠貴
ご意見番の歯を磨く歯ブラシね 牛田悠貴
暗闇で中指立てている軍手 輪井ゆう
花びらが追いかけあって止む風 雷
鯉幟ばかりが泳ぐ山深い谷 雷
ピンポンダッシュして逃げ込んだら尼寺 清子
存在を独りにさせるマヨネーズ 藤井智史
夢見る乙女で染める安全性 クイスケ
ガチャのたびサロメだけ出る(朝顔は?) クイスケ
あっ絶対零度のヒーロー泣いた? クイスケ
とちゅうから自分も地図で破けてる 海馬
春からあやとりを向けられても困る 海馬
アーカイブからアダムの墓標 成瀬悠
*
黄金週間金の眠りのとろんとろん カオルル
屋上に骨だけの中島みゆき 西脇祥貴
葉桜の余生を包む青い空 塩の司厨長
鯉のぼり鱗はがれて光る空 shyisnormal
人生はそのとき抱いたギャラリーか 季川詩音
付箋紙を貼っただけの単語帳 季川詩音
三月が海馬のすみに仕舞われて 武井窓花
やどかりが口から覗く頭蓋骨 しまねこくん
ちよつとだけ外した席にチューリップ しまねこくん
フリージア一週間て長いよな しまねこくん
フロイトのにおい漂うシンク下 しんいち
さっきから片隅にいる音心地よい crazy lover
本当は良いことだってあったのに 宮坂変哲
まだ空を見上げられるなら大丈夫 宮坂変哲
×と〇書いては消して花嵐 武井窓花
親になる君と僕との分水嶺 なさわご
ここじゃいつでも悪意も花吹雪 石川聡
フリージア微笑み返せば赤くなる 片羽雲雀
川柳をあまた作るや肩こりを労る日 まどけい
嫌ひとは言へずに褒めてゐる牡丹 冬野志奈
*
空想で飛ぶ船だもの春だもの 月波与生
◆ 短歌
ピアニカの蛇腹に息を吹き込めば思いのほかにさみしい音色 水の眠り
お祝いでもらった高い化粧品まだ追いつかぬ肌の治安が 水の眠り
合法的サディスティックでスリッパはみんなのためにゴキブリ倒す 水の眠り
「ええやんけ」関西弁で言われたら前を向けそうないのちの電話 ゆりのはなこ
*
布団から 太陽の匂いした時に 出てけと言われたような気がして 黒木悠希
目の前に 黄金連休 来てるけどするのことといえば 推し活ばかり 桜咲蓮希
創作者の浜辺に打ち寄せらるるものあなたも誰かの希望だったの 円山すばる
障りあり手帳を受けし吾はもはや川の向かふに
かへることなし 匂蕃茉莉
今日もまた死にたい明日も明後日も その次も ねぇ疲れたねもう 舞風 奏-
曇天の夜空に慣れる生き物のふしぎ仄あかり夜うつくしき ひいらぎ
とりあえず無事でいるならそれだけを知らせてほしい 4月が終わる 何となく短歌
変人の 天才ならば 良かったが 凡人なので しにたくもなる 🍓
アタッシェケースの置きざりの薫風は交尾を透明 石原とつき
サヨナラをたまに出しては磨いてる今年も開くあの夏の鍵 akao
迷っても転ばぬようにと先の杖 要らぬが幸と母ごころ 山羊の頭
週明けの 夕は感想 注意報 潤い欲しく 濡らす指先 魔理沙
◆ 詩・短文
ひとりでさみしいから
ひとりコラボをやってみ
コラボはたのしそう(呪街管理人)
幸せになりましたメールが私の心の余裕のなさも示している。 季川詩音
◆ 作品評から
ちよつとだけ外した席にチューリップ しまねこくん
~少しだけ席を外して、席に戻ったらチューリップが置かれていたらと考えました。サプライズでしょうか。可愛らしいワンシーンが思い浮かびます。(季川詩音)
新しいモールはどこも同じ顔なんの跡地か思い出せない 水の眠り
~たいていは売り上げのよくない店が撤退していくので尚更わからない。でもストリップ小屋がコンビニになったのは時々思い出す。(月波与生)
ゴム跳びで進研ゼミを乗りこなす クイスケ
~しまじろうの進研ゼミ。加入していた1990年代はCDとVHSビデオが人気教材でまさにゴム跳びのような隔世の感があり。(月波与生)
今ごろは落花に埋もれてゐるピアス 冬野志奈
~「ゐ」が花に埋もれているピアスの造形っぽくていい。そこに私はいない、という時間、距離を「今ごろ」の4文字で表現した。(月波与生)
布団から 太陽の匂いした時に 出てけと言われたような気がして 黒木悠希
~いつまでも布団にいるわけにはいかない。それを太陽が教えてくれたのかもしれません。出たくもない日もあるけれども、今日こそは頑張って出ようと決意したようにも思いました。(季川詩音)
逃水の跡に散らばった星座 蔭一郎
~日が暮れて夜になったころの情景なのかもしれません。逃水があった地面には、星座がうつって見えている。そう感じました。綺麗ですね。(季川詩音)
「ええやんけ」関西弁で言われたら前を向けそうないのちの電話 ゆりのはなこ
~きっと関西弁で言われたらホッとするのかもしれません。方言には癒しというかそういうのがあるような気がします。「ええやんけ」というのは何かを肯定された気になり、ポジティブな気持ちなりますね。(季川詩音)
大阪に違う自分がいてもいいネイルサロンの間違い電話 胡椒 黒
~大阪にいる自分は大阪弁で話すのだろうか。生活は荒んでいないだろうか、と想像してしまう間違い電話。(月波与生)
主のない家のトタンにまだ風がある 雷
~「まだ」の使い方。無ければ定型となるがあえて「まだ」を付ける効果とは?(月波与生)
人生はそのとき抱いたギャラリーか 季川詩音
~ギャラリーを「空間」としてとらえた。規模にもよるが、広いギャラリーだと案内の矢印が貼られていたりする。しかし、迷うこともあったり、ふと気になってもう一度見たいと戻ったり逆に素通りするものもある。その行動は日々の営みに近く、そのときどき。「人生」とだいたんにくくったのが秀逸。(蔭一郎)
幸せになりましたメールが私の心の余裕のなさも示している。 季川詩音
~自分は変わってないのに、心が寒くなるのはなぜだろう…(コマさん)
海霧(じり)晴れてミサイル聳ゆ国後島 鈴木正巳
~海霧がおさまったかと思えば、ミサイルの恐怖を感じる。落ち着かない感じがしました。ちなみに、歳時記を確認したら、海霧(じり)というのがあったので一般的な表現だと思いますが、北海道の人はよく「じり」というのでそこの再現性も高いなと思って詠ませていただきました。(季川詩音)
本当は良いことだってあったのに 宮坂変哲
~メンタルの主治医に嫌なことがよく頭にうかぶのは何故って聞きました。人の生存本能というか、そういうことには気をつけなさいよという意味じゃないかなって。なるほどと思った次第。そうかもしれないけど、いい気分にはならないもんねー(トルバドール)
行く先はたぶん寝癖が知っている しろとも
~時間がなくて髪型をセットせずに出たのでしょうか。行く先を寝癖が知っているなんて面白い表現です。『たぶん』と作品にあるので知らない可能性もありますね。(季川詩音)
ほんとうに花は花言葉がきらい 蔭一郎
~総じて花言葉は嘘っぽい、とすれば自分に付けられた花言葉がキライな花もあるだろう。ほんとうに、の「に」の微妙な言い回し。(月波与生)
くつひもはほどいておいた靴の夢 牛田悠貴
~靴がみる夢はほどいた「くつひも」の夢。それでよかったのかほどかない方がよかったのか。寝苦しい夜が続く。(月波与生)
開花とは繁殖のことルリタテハ真昼のセックスの祝祭をする 水の眠り
~ポイントは「セックス」からどれだけ水気湿気を抜くかだが「ルリタテハ」という蝶を置いたのがいい。蝶は「繁殖」「開花」にも止まり飛んでいった。(月波与生)
付箋紙を貼っただけの単語帳 季川詩音
~受験の駆け込みで貼っただけで見返すことはない単語の付箋紙。取り残された様。もしかしたら不合格?付箋を貼っただけで、やる気も起きなかった受験勉強だったのかも。(山羊の頭)
まだ空を見上げられるなら大丈夫 宮坂変哲
~ほんまそれ ほんまにしんどいときは足元しかみてないから(あおいひなた)
フリージア一週間て長いよな しまねこくん
~フリージアという花に話しかけているのでしょうか。たしかに、一週間は短いようで意外と長いです。(季川詩音)
合法的サディスティックでスリッパはみんなのためにゴキブリ倒す 水の眠り
~ごきぶりはみな集まって話しあい 今日明日にでも人間倒す(蔭一郎)
存在を独りにさせるマヨネーズ 藤井智史
~マヨネーズを見ると、孤独に感じる人もいるのかなと思いました。その理由について考えてみたのですが、マヨネーズが苦手だったり、逆にマヨネーズが好きすぎて他のものはいらないというような人とかが浮かびました。(季川詩音)
ピアニカの蛇腹に息を吹き込めば思いのほかにさみしい音色 水の眠り
~小学校の音楽を思い出しました。蛇で蛇腹ってのが面白いと思いました。そして、『思いのほかにさみしい音色』というのも良いですね。力加減によって、思ってた音色と違うというのはよくありますね。そういうときの音色はなんだかさみしさを感じます。(季川詩音)