さみしい夜の句会報 第214号(2025.3.23-2025.3.30)
第214号の参加者は62名でした。ありがとうございました。参加された方の1作品以上を掲載しました。掲載のない方、誤字脱字等ありましたらDMにてご指摘下さい。投句はテキストにてお願いします。テキスト以外の投句は週報に反映しませんのでご注意願います。
今号は季川詩音さんがたくさん鑑賞文を書いてくれましたのでとても読み応えのある週報となりました。詩音さんありがとうございました。鑑賞文が入って嬉しいと感じた方は是非他の人の作品に鑑賞文を入れて嬉しさを分かち合ってください。
◆ 参加者(62名)
クイスケ、西沢葉火、魔理沙、もりまりこ、タカハシカオルル、しろとも、蔭一郎、しまねこくん、石原とつき、ひいらぎ、いずみ、宮坂変哲、星野響、汐田大輝、輪井ゆう、鈴木雀、呪街管理人、西脇祥貴、ユミヨシ、つみき、鈴木正巳、舞風 奏、しんいち、季川詩音、石川聡、猫塚れおん、膝の上のねこ、アリタ別館、胡椒 黒、ネコニスケ、雷(らい)、山田真佐明、東こころ、片羽雲雀、笛地静恵、倦怠感、円山すばる、松柏木、水の眠り、ねるな、JUNKY店主、板里カエ、夕波ちづ、つくだとしお、水柿菜か、毎日短歌生活、古城エッ、まどけい、内海千智、塩の司厨長、松本桃英、ホワイトアスパラ、狢川 久恒、ハッカ飴、なさわご、気まぐれさん、かれん、あおいひなた、牛田悠貴、白石ポピー、名犬 ぽち、月波与生
◆ 川柳・俳句
積ん読の猫背の山が一軒家 山田真佐明
逃避行イマジナリーは流行する 山田真佐明
スパッツは屋根裏部屋で色になる 山田真佐明
これですか黒板消しを差し出して 山田真佐明
葬式も梅にしたから安上がり 内海千智
長閑さや回診女医の京訛り 鈴木正巳
拷問の水で砂吐く浅蜊かな 鈴木正巳
薊濃し聖書に多き罪の声 鈴木正巳
最初から縦スクロールで見る桜 蔭一郎
撃鉄は水温むまであがらない 蔭一郎
花冷えは改竄されて綴じられる 蔭一郎
追う麻疹逃げる麻疹と板ばさみ 蔭一郎
律儀にも歩道橋を渡る燕 蔭一郎
かぎ裂きの中島みゆきそれと雪 西脇祥貴
ぶらんこに足の匂いを馴染ませる しまねこくん
猫耳のあるしやぼん玉を作りたし しまねこくん
たんぽぽの花だけ並ぶバイキング しまねこくん
死ぬ時も五分進めていた時計 西沢葉火
国境の長いトンネルから耳毛 西沢葉火
乾かしたほうがおいしいふくらはぎ 汐田大輝
菩薩とのホットラインが燃えつきる 汐田大輝
雪解けと涙のあとを拭う指 片羽雲雀
初蝶の軌道を採譜する指揮者 石川聡
はからずも開示請求される沼 しんいち
まだ手が触れない自分の腹の底 輪井ゆう
最初はグーそして桜は一休み いずみ
ピアス穴開けし日のこと春の雷 タカハシカオルル
海底に尾びれを買いに出るサロメ クイスケ
三原色はあなたの指でもいい クイスケ
読めない世にも嫁菜 石川聡
豚足だけはララバイですよ 石川聡
*
また消して書きまた消して書く日記 しろとも
知らず知らずをプラトンさん和讃は蛭の類にとどめ 石原とつき
めざむればまわらぬ独楽となりにけり ひいらぎ
ホッとする昔ながらのオムライス 宮坂変哲
ウクライナ侵攻北の春遠く 宮坂変哲
春霖の降り残す夭逝の墓標 星野響
爆弾を抱えたままで助けあう 鈴木雀
キスしていい? そう聞くことが すでにキス 呪街管理人
蓮の花を咲かせにきた試験日 季川詩音
朧月ポストの底の委任状 猫塚れおん
コメが出てこぬ一次会 アリタ別館
サヨナラ注ぐハイボール アリタ別館
見えてきたものが聴こえそうな波 雷
春の日の子どもがほんのり嫌いです 東こころ
ミャクミャクのポンデリング化春の雨 笛地静恵
冬すみれ 我が忍び音を 聞かで咲け 倦怠感
恋猫が首をふりふり鳴き歩き 松柏木
捨てられて 鳥の気持ち知る ポリ袋 板里カエ
黄砂と花粉恐ろし電気記念日や まどけい
卒業子ジャングルジムを脱け出せぬ 塩の司厨長
彼岸明け 夜に煌めく 稲光 狢川 久恒
公転にもたれて通う植物園 なさわご
*
一本道で迷う偽のパンチェッタ 月波与生
牡蠣フライライトフライと打ち上げる 月波与生
ルンバに憧れるポルトガルの亀 月波与生
◆ 短歌
本ばかり読む相方に近づけずお代わり無料の店はやさしい 水の眠り
まぶしさにトレーナーまで脱がされて菜花にしては強烈なキス 水の眠り
深夜二時、彼の寝言で目が醒める 夢で見ないでわたしは此処よ 水柿菜か
咳しても一人のままだし寂しいし ビューラーしてもまつげは下がるし ねるな
ごふうふ?という問いにいえいえいえいえ電気ブランって味しないね 胡椒黒
がまぐちに挟まれたときヒトはみうあるいはきうと鳴くのだそうだ 胡椒黒
優良印たまごを前に思うこと丁寧な暮らしってなんだろう ホワイトアスパラ
*
さらば友 貴女の義姉に成れぬまま 新たなる旅 祝福祈る 魔理沙
ぬいぐるみにはぶつけられなくて 謎のふかふかのもの投げていた もりまりこ
20秒毎に削られてく僕のライフ静かに電源を切る ユミヨシ
一錠のくすりの先に待っているまあるい孤独と埋まらない夜 つみき
消えたいの私何処にも行けないし愛されないし何にもなれない 舞風 奏
そっけない相槌ひとことだけじゃなく残念がって欲しいのよ求められてるみたいにさ 膝の上のねこ
なんでもね良くなってきてもう一缶今宵の月は雨の中です ネコニスケ
あの夏を駆けた自転車暴走族も血糖値の高さを気にして嘆く 円山すばる
声ばかり殺して泣くのが上手くなり今は泣くなよ鈍れよ感情 夕波ちづ
群青に咲く黄金の星月夜 髪かきあげて心に筆を つくだとしお
やり直せぬあの頃恋というのなら月になって何度も巡る 毎日短歌生活
サヨナラを交わさぬままの友からの積もる話のスーパー銭湯 古城エッ
出かかった言葉をグッと飲み込んだ 言ってはいけない 嫌味になるから 松本桃英
先輩がいる最後の夜カラオケとハンバーガーで学生の青春を 気まぐれさん
◆ 詩・短文
出会い系、
会おうと約束しいても、課金しなきゃしらんぷり。(JUNKY店主)
◆ 作品評から
最初はグーそして桜は一休み いずみ
~句も写真も相まっていいですねえ。腰痛しぶといですよね。お大事になさってください〜。(かれん)
ホッとする昔ながらのオムライス 宮坂変哲
~薄焼き玉子で巻いたヤツ!!あたしそれしかつくれんけど、あのオムレツを真ん中切ってペローッと広がっていくヤツ作ってみたいわ(あおいひなた)
~昔ながらの味ってなんだか安心します。閉店だったり、作り手がお亡くなりになってしまったりなどで、もう食べられなくなってしまうときもあります。食べられるときに食べたい、そう思いました。(季川詩音)
20秒毎に削られてく僕のライフ静かに電源を切る ユミヨシ
~電源を切ったのがスマホなのかパソコンなのか色々想像が膨らみます。20秒という時間もなかなか面白く、これが短いのか長いのかも読者次第だと思います。『削られてく僕のライフ』と言っているのですから、時間が貴重であることを認識して区切りをつけたという覚悟を感じました。(季川詩音)
ぬいぐるみにはぶつけられなくて 謎のふかふかのもの投げていた もりまりこ
~イライラしていて、何か物にあたりたいときでも、かわいいぬいぐるみにぶつけるのはなんだか罪悪感があります。謎のふかふかのものというのがなかなか面白く、そこにあった名前もわからぬ謎のものを衝動的に投げたのだろうと思います。(季川詩音)
追う麻疹逃げる麻疹と板ばさみ 蔭一郎
~ベトナムで麻疹が流行っているというニュースを毎日のように見ます。対策をいくらしても安心できないというような不安を作品から読み取りました。ちなみに、自分もベトナムに行きたいと思ったことが何度もあるんですが、なかなか難しいなぁと思ってます。(季川詩音)
読めない世にも嫁菜 石川聡
~「読めない」と、「嫁菜」で、韻を踏んでいるような気がして面白いです。作品そのものについては、何が起こるかさっぱりわからない世の中だけど、嫁菜は咲いているという力強さを感じました。(季川詩音)
コメが出てこぬ一次会 アリタ別館
~コメが出てこないのですから、これも物価高騰の影響かと最初に思いました。しかしながら、フランス料理のように、コメをメインとしない一次会なのかもしれません。いろいろな想像ができて面白いです。(季川詩音)
猫耳のあるしやぼん玉を作りたし しまねこくん
~猫耳のあるしやぼん玉、夢がありますよね。最近は、丸以外の形のシャボン玉をつくる研究をされてる方がいるようで、夏休みのイベントのひとつにもなってるようです。いろんな動物のシャボン玉が作れたら、空が動物園になるのかもしれませんね。(季川詩音)
すぐ横で眠るあなたを起こさずにうどんを作る生理前夜 水柿菜か
~赤いきつねうどんをすする女性のアニメが話題となっていたが、うどんと女性は相性がいいのだろう。女性はこの歌をどう読むのだろう。(月波与生)
横長の信長だけのかけ流し 山田真佐明
~「横長の信長」でいい感じで助走しているが「かけ流し」が作者が狙ったほど効果的にならなかった。言葉のベクトルが離れ過ぎると読み手は想像をアキラメる。(月波与生)
また消して書きまた消して書く日記 しろとも
~日記を書くとき、何回も消しては書き直して、また消して、、というのを繰り返すときがあります。でも、後から日記を読むことなんて、数回あるか程度なのに、書き直してしまうというのはどうしてなんだろうと考えます。(季川詩音)
牡蠣フライライトフライと打ち上げる 月波与生
~試合中に、牡蠣フライ打ち上げてアウトになったら、ルールブックに新しい項目ができてしまいます。(のひとの)
ウクライナ侵攻北の春遠く 宮坂変哲
~人間生きていると、明日が来るのは当然かのような思考になってしまうときがありますが、戦争や、侵攻などが起こった際は、明日どころか1時間後、数分後の未来すらわからなくなってしまうと思います。1日1日を大切にしたい、改めてそう思いました。(季川詩音)
煮るなり(お豆腐でした)焼くなり更地を鉱水まがりなり 石原とつき
~(お豆腐でした)で笑った。それは必要な情報なのか。「更地を鉱水まがり」はわからないけど。(月波与生)
海老天のほてりのような髪にして 汐田大輝
~「海老天のほてり」がいい。確かに丼のフタを開けたときの海老天のほてりは魅力的だ。「~のように」の句は安易に見えるだけになかなか大変なのだ。(月波与生)
これですか黒板消しを差し出して 山田真佐明
~小中学生、高校生時代を思い出しました。黒板消しかと思いきや、相手が欲しいのはチョークだった。そういうストーリーを思い出しました。大人になると黒板消しを渡す機会はなくなります。青春を感じました。(季川詩音)
かぎ裂きの中島みゆきそれと雪 西脇祥貴
~とても珍しいところにみゆきさんがいらっしゃる…!“それと雪”自体の余韻もですけど、句の構造としての余韻もかなり違う気がしてハッとしました。(牛田悠貴)
サヨナラ注ぐハイボール アリタ別館
~別れのとき、野球などいろんな「サヨナラ」がありますが、転勤や卒業などの少しさみしいシーンや、野球のように感激してしまうようなシーンなど、いろんな場面で「ハイボール」は注がれていると思いました。(季川詩音)
ルンバに憧れるポルトガルの亀 月波与生
~亀といえば、ゆっくり移動するイメージがあります。だからこそルンバのように速く動いてみたいと思うときが亀にもあるのかもしれませんね。(季川詩音)
最初から縦スクロールで見る桜 蔭一郎
~実際に足を運んで桜を見に行くことよりも、SNSで見ることの方が多くなりましたね。「最初から」というのが面白く、実際に桜を見に行くことは考えておらず、SNSで見ることが最初から決まっているんだろなと、そういう風にも詠めました。(季川詩音)
春一番リングにイノキボンバイエ 宮坂変哲
~「イノキボンバイエ」ほど猪木を想起させる音はないが元々はアリの音だと言う。そういう虚実入り乱れたエピソードも猪木には似合う。(月波与生)
今夜君の夢に登場予定です芝居でいいから相手をしてね chu短歌
~「夢」はフィクションであるから芝居をみているようなものか。とすれば「芝居でいいから~」は蛇足かもしれず。(月波与生)
お彼岸のランゲルハンス島は雨 タカハシカオルル
~「ランゲルハンス島」とはいい場所を見つけた。「知らんがな」ではあるがそれを許さない?「お彼岸」も効いている。(月波与生)
恋猫が首をふりふり鳴き歩き 松柏木
~恋猫という季語だけでも幸せなのが伝わりますが、ふりふり鳴き歩きという補足により、いかに幸せかが伝わってきます。ふりふりしているのが尻尾ではなく首というのもなかなか面白いです。 (季川詩音)
深夜二時、彼の寝言で目が醒める 夢で見ないでわたしは此処よ 水柿菜か
~此処にわたしがいるのに、夢の中でわたしを見ている。なんだか勿体無いというか、幸せで微笑ましいというか、いろいろな詠み方ができると思いました。(by季川詩音)
律儀にも歩道橋を渡る燕 蔭一郎
~私は歩道橋では見たことないんですが、横断歩道を律儀に渡ってる鳥たちは見たことあります。なんか、律儀になにかを渡ってる動物を見ると面白いですよね。人間じゃないのに、人間みたいで微笑ましいです。(季川詩音)
豚足だけはララバイですよ 石川聡
~そうなんですよね、ポピーも知ってました、豚足だけは、ララバイなんですよ!そう!(白石ポピー)
たんぽぽの花だけ並ぶバイキング しまねこくん
~たんぽぽはよく火を通し食うように(名犬 ぽち)