さみしい夜の句会報 第210号(2025.2.23-2025.3.2)
第210号の参加者は51名でした。ありがとうございました。参加された方の1作品以上を掲載しました。掲載のない方、誤字脱字等ありましたらDMにてご指摘下さい。投句はテキストにてお願いします。テキスト以外の投句は週報に反映しませんのでご注意願います。
2月25日から「さみしい夜の句会」は5年目に入りました。コロナ禍で句会開催がままならい中、SNS上で句会めいたことをしようと参加者34人で句会を始めました。以来現在まで参加し続けている人が数人いらっしゃることに感動を覚えました。200回を超えて継続の難しさを痛感していますがここはできるだけ続けていきます。引き続きご投稿をお願いいたします。
◆ 参加者(51名)
クイスケ、海馬、しまねこくん、星野響、夜ポエム寄る?、石川聡、汐田大輝、笛地静恵、輪井ゆう、西脇祥貴、アリタ別館、宮坂変哲、幾美、山田真佐明、石原とつき、季川詩音、西沢葉火、水の眠り、蔭一郎、towe(たお)、しろとも、𝘮、しんいち、谷下弱弱(たにしたつよし)、雷(らい)、人見佐一、タウタヤト、souko守宮、内海千智、漁火いさな、気まぐれさん、みずがきなか、上崎、片羽 雲雀、靈夢、月階柚、武井窓花、牧和明、わたなべ、牛田悠貴、あきのつき、ゆりのはなこ、まどけい、ことのはかなで、涼、岡村知昭、何となく短歌、リンネリンク、松柏木、名犬 ぽち、月波与生
◆ 川柳・俳句
こまやかにあなたも眠れますように。 クイスケ
肉球を押しつけ見上げてくるサロメ クイスケ
ペンギンのごはんに星の紙芝居 クイスケ
終末時計の粋なデザイン 海馬
からかいが風ならきみは靴だろう 海馬
お雑煮のどこかがごめんなさいだった 海馬
恋人が不埒な鳥を飼いだした 内海千智
このこんにゃくは内気なんだよ 内海千智
跨がって猫の目草に目隠しを 片羽雲雀
満腹の人魚の思い出し笑い 岡村知昭
招き猫だけが本物だった店 雷
やがて革命ペットボトルのくびれ 西沢葉火
笑み笑み笑み笑み笑む中島みゆき 西脇祥貴
曲がるとき遠い眼をするニシキヘビ 汐田大輝
一瞬で記憶が飛んだ玉子焼 汐田大輝
乳首までちやんと付いてる内裏様 しまねこくん
盃に注がれた砂を干す二月 しまねこくん
地球儀と蜜柑 ひらいてつつむ夢 上崎
感慨はゆずあんぱんの舌触り 上崎
*
最初から廃墟の街に朧月 星野響
左手の握りつぶされボルシチへ 笛地静恵
羊歯萌ゆる小庭となるやシダモの香 石川聡
井の中をパドルサーフィンする蛙 輪井ゆう
弱気な夜よ 夜遊びしよう アリタ別館
なんとなく明日は海を見にいこう 宮坂変哲
大根は夢から覚めて単語帳 山田真佐明
春泥や札幌駅は工事中 季川詩音
虚人らの大半の出前なソーダ水なら食堂アララト 石原とつき
さんがつのついたちなので雲になる 蔭一郎
丑三つの砂書きで知る未三つ towe(たお)
二月尽双眼鏡は伏せたまま しろとも
肉厚の赤ピーマンが過覚醒 しんいち
春泥やあたしを踏んで踏んで泣け souko守宮
リアルより ますます私 遠ざかる 靈夢
地球儀を破壊したときさすひかり 武井窓花
トゲのある言葉を抜く 牧 和明
微笑みながら離れていく冷たい人 わたなべ
ホメロスも花野へ埋めて水をやり 牛田悠貴
さみしさをマッチですってあたためる ゆりのはなこ
大雪に負けず生きよう米寿まで まどけい
不眠でも映画は寝落ちダメだこりゃ 涼
春寒や歯の跡ついたチョコレート 松柏木
*
夢の中にはいないおとうと 月波与生
◆ 短歌
残ってる君の温度をジャム瓶に詰めて毎朝パンと食べるね 漁火いさな
割れているネイル わたしは大人だし会えなくたってだいじょうぶだよ 漁火いさな
寄る辺ないわたしときみで寄る辺ないまま歩いているさみしさの縁 𝘮
窓の外落下していく白い夢幾番目かはオリオンになる 月階柚
*
間違ったピースを無理やり押し込んで指に間違いの跡が残った 幾美
会いたさに車につもったうす衣くずれて桜の花の尾となる 水の眠り
現実にヒーローなんていないから自分が自分のヒーローになる 谷下弱弱
情人節は斬首画像を送りつけ 愛と狂気は紙一重 人見佐一
誤解だと、会いたい命は君の方 だと、言わない僕がきっと正しい タウタヤト
死の色は何色だろうか 美術の教科書開き絵画をなぞる みずがき なか
温もりを知っているから冷たさに気付いてしまう春の綻び あきの つき
分かってるいいねフォロワー数じゃない分かってくれぬと一喜一憂 ことのはかなで
その姿何度も何度も反芻し偶像化する 思い出にする 何となく短歌
何ひとつ約束なんてできないけれど それでも側に居て欲しいんだ リンネリンク
◆ 詩・短文
冬の終わりに時を止め、巻き戻し。 もう一度君と春から再生を。 (気まぐれさん)
◆ 作品評から
盃に注がれた砂を干す二月 しまねこくん
~作風かわたね。どする?(名犬 ぽち)
「終電。」と執着もなく手放され 持ち手不在で漂う夜凧 苔土演技
~「終電。」で始まり「夜凧」で終わる。(。」)にどうしようもない不安感がある。執着も響いている。(月波与生)
人肌がこわくてコインランドリーの温度にしか打ち明けられず 漁火いさな
~不思議な質感。「人肌」「コインランドリーの温度」がそれとなく連絡しあっている。(月波与生)
花の宿嫌いな人の名で泊まる しまねこくん
~好きな人の名前で泊まることはあっても嫌いな人の名で泊まることは無いと思うが「ある」ならそのこころは何なのか興味があるところ。(月波与生)
臍でオルガンを弾く罪深さ 汐田大輝
~15音字といいうのが何とももったいない。川柳とするならばまずは575の17音字に寄り添うべきで、それが始まりであり終わりである。(月波与生)
二人いるとかじかむ中島みゆき 西脇祥貴
寝る/煙る 後者なら中島みゆき 西脇祥貴
~「中島みゆき」で7音字使ってしまうので残り10音字でユ二ークな1句に仕立てなければならない。大変な腕力。もう千句は超えたろうか?(月波与生)
春風と言いはる夜の歩道橋 上崎
~無機質な「歩道橋」が風の正体がわかっているという不思議な句。「春風」が句を落ち着かせている。(月波与生)