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さみしい夜の句会報 第178号&179号(2024.7.14-2024.7.28)
第178回&第179号の参加者は72名でした。ありがとうございました。参加された方の1作品以上を掲載しました。掲載のない方、誤字脱字等ありましたらDMにてご指摘下さい。投句はテキストにてお願いします。テキスト以外の投句は週報に反映しませんのでご注意願います。
「さみしい夜の句会」第3回のリアル句会は札幌市駅前の札幌エルプラザにて無事開催されました。ディスカッション中心の2時間半の句会が間延びすることなく完走することが出来ました。投句、参加されたみなさんに感謝いたします。リアル句会は今後、大阪、東京、他の開催を予定しています。
◆ 参加者(72名)
桑原雑、帰ってきた笛地静恵、胡椒 黒、多生、花野玖ymdmsaki、水の眠り、クイスケ、ハッカ飴、しんいち、しまねこくん、何となく短歌、石川聡、石原とつき、蔭一郎、片羽 雲雀、平松泥沸、高田月光、しみず わかな、岡村知昭、古城エッ、みずなまなつ、souko守宮、西脇祥貴、かれん、雷(らい)、Nichtraucherchen、エミリー・メープル・ボーン、石畑由紀子、おかもとかも、遼旅、平松泥沸、明里水也、菊池洋勝、snuddle、涼閑、まつりぺきん、西沢葉火、奥 かすみ、souko守宮、山羊の頭、もん、しろとも、ユミヨシ、尼寺透、靈夢、遼旅、星野響、汐田大輝、死んでるみたいに生きてる子、futuro、隆邦、牛田悠貴、さんそ、輪井ゆう、もりや、みさきゆう、KBLib♡R、桜藤エキナセア、月硝子、池田 突波、佐竹紫円、もふもふ、玖々泉ろか、酔名、名犬 ぽち、よーこ、ろうる(楼瑠)、琴里 梨央、ハッピーマミー、宮坂変哲、月波与生
◆ 川柳・俳句
三代の日記膨張する宇宙 雷
良い人で流れとしてのジョーカーで 雷
ロンリーがまじわっている水の街 かれん
黄色の傘だけを選ぶてんとう虫 かれん
線を引く気体になれるように引く かれん
垂線を引けば気球でいる家族 かれん
満月を覗く宝石鑑定士 Nichtraucherchen
万緑や紅一点のカズレーザー 帰ってきた笛地静恵
水星の楽器を奏で熱帯夜 帰ってきた笛地静恵
オジサンの何が釣れたと魚籠のぞき 帰ってきた笛地静恵
口々に「モホロビチッチ不連続面!」帰ってきた笛地静恵
夏場所や男の乳の豊かなる 帰ってきた笛地静恵
昼顔の近くの豆腐喇叭かな 菊池洋勝
治つたと決めたら治る夏の風邪 しまねこくん
嘘ついた日の夕焼けと同じ色 しまねこくん
五十音順に昼寝の寝相かな しまねこくん
歴代の社長の髭をすげ替える 汐田大輝
コニシキを切子細工の顔にする 汐田大輝
隣人と人参の差が一馬身 しんいち
いずれ仲間割れするスズランテープ しんいち
アヴァンギャルドな七三分けだ 宮本隆邦
ふたたびの眩暈の果ての時計草 星野響
クレープに巻かれた空の焼け具合 牛田悠貴
知りすぎてまとわりついた試着室 クイスケ
咲いたままでマドレーヌが団扇めく クイスケ
「あなたさえ産まれなければ」は俺が負う クイスケ
銃砲で森から一斉に楽器 蔭一郎
トンネルを抜けてもきっと泳げない 蔭一郎
大暑来ぬユングの都市を脱出し 尼寺透
みよ象が炎昼の街翔び去りぬ 尼寺透
海亀へスターチャイルドから破水 尼寺透
恥を知る人から順に燃えてゆく まつりぺきん
欠伸ください集めているの 石畑由紀子
ゆらゆらのくぢらの眼窩から浜木綿 高田月光
腕まくらあしたスープになる冬瓜 高田月光
帰省ほどよく散らかつた広い居間 高田月光
巴里はまだ濡れていなくて鰐昼寝 岡村知昭
台無しの七月 水が甘すぎる 片羽雲雀
なすび買う行列なので無駄がない ymdmsaki
*
国境を心の中に引かないで 宮坂変哲
ギュットシタカタチガイイトホメラレテ 多生
彼女らと森へ彼らと夏の果て 花野玖
漣がえび焼きそばを遡る 石川聡
助手席の卒塔婆に海を見せてやる 平松泥沸
遠泳のごとく生くるも波荒し しみず わかな
パフェの空洞どうやって味わうの souko守宮
戦場。釘で目指す中島みゆき 西脇祥貴
むましかと申す妖怪キラキラ名 エミリー・メープル・ボーン
辛抱たまらん小鳥になるぞ おかもとかも
かゆい足首もかける 遼旅
放課後の校庭だけを走る君 西沢葉火
どこからか眠りの森へ誘う声 涼閑
ムシムシと昼は蝦夷ゼミ風のない夜 山羊の頭
眼差しを持ってトーナメント登る もん
カラス 鳶 みんなつがいで夏みたい しろとも
負の連鎖 まずは私が やめてみる 靈夢
思い出より今抱っこしてと子ども 輪井ゆう
本気で悪い人に落ちてほしい雷 もりや
すれ違う電車真昼のポリリズム みさきゆう
いつからか梅雨明けしたと気づく風 桜藤エキナセア
濁り江に殖える浮き草スパム垢 月硝子
そのシャツの滲みはウヰスキー夏痩せて 池田 突波
気を読む勉強は教えてもらえなかった もふもふ
墓石に柘榴砕いて縁を断つ 玖々泉ろか
*
合鍵で開かないことは知っていた 月波与生
◆ 短歌
防音がきいてて蝉が聞こえない 国道沿いに住むということ 胡椒 黒
「ぼく」ののち「おいら」を経ての今「わたし」甥の一人称は移ろう 胡椒 黒
頻繁に落雷がある待ち合わせ場所に笑顔で立つ恋人よ 胡椒 黒
ジャケットを脱いだらへんなTシャツでいよいよ好きになってしまった 胡椒 黒
片耳のイヤホンたちへ ごめんなさい別れさせ屋はこのあたしです 胡椒 黒
リモコンの「過去番組」を押したならきのうの夜にも戻れるでしょうか 胡椒 黒
優しさと無関心さをイコールで接続せんと試みた秋 胡椒 黒
処女の太腿のような葦の群生に埋もれながら眠りにつく 桑原雑
この夏も普通のフリをしています ミッキーよりも厚い着ぐるみ ユミヨシ
3円で買った袋に詰めるのは空の酒瓶、通り過ぎる夏 ユミヨシ
夏休みがない大人になってから迷路で迷子になる熱帯夜 ユミヨシ
「本命の彼女にするみたいにして」言えないままのライン下書き ハッカ飴
教会でなくて診察室でする不貞の懺悔は病名がつく ハッカ飴
太平洋ベルトを点々する俺ら 港のキリンの美しいこと 水の眠り
心まで折れそうになる炎暑日の次々に咲くニチニチソウは 水の眠り
たぶん今日名前のしらない満月が大きな軌跡を描くとき小さな臓器いちいち潰す 水の眠り
しあわせが指の端からこぼれ出て掬いとれない流し素麺 水の眠り
ポイントのカードのゴールへ直線がトマト三個でたどりつきます 水の眠り
*
今はなき人の吐きだす夢の跡次第に煤ける白き社屋は 何となく短歌
絶滅したてなシャコブリッジ(中略)な情熱な記号 石原とつき
ひとりだけ眼を見開いたシンパシー鰯の群れに従いながら 古城エッ
ときおりにたたずむ燈りがさみしげでなにを思っているのだろう、と みずなまなつ
消え去ってしまえばいいと花束にとげとげしてる薔薇を突き刺す 明里水也
蝉を浴び眠られぬ夜じりじりと高度を下げてゆく猫の爪 snuddle
ウクレレはユークレリィっていうのよと子はゆっくりと母を越しゆく 奥かすみ
さみしさも心の声を放つとき命が宿り詩(うた)へと変わる 死んでるみたいに生きてる子
暗がりで涙に暮れた切なさの数だけ夢を秘めた夏の日 future
泣くときはお願いだから付き合って夜のスタバで頭を撫でて さんそ
思い出を作ろうとして分かち合う君が隣にいないと気づく KBLib♡R
手取り20万の私が大切にしていたリーデルの足が折れてしまった 酔名
◆ 詩・短文
※ 掲載作品はありません。
◆ 作品評から
ゆらゆらのくぢらの眼窩から浜木綿 高田月光
~浜辺に流れ着いた鯨。頭蓋骨だけが残る。砂に埋もれ。激しい風だ。浜木綿が揺れる。根元の眼窩の砂も動く。浜も海も荒れている。台風か。一言も述べていない。表面は、あくまで静かだ。それなのに、自然の猛威が、顔面に迫る。(帰ってきた笛地静恵)
帰省ほどよく散らかつた広い居間 高田月光
~帰省の句、リアルで好きです(souko守宮)
良い人で流れとしてのジョーカーで 雷
~そらしゃあないな。(名犬 ぽち)
放課後の校庭だけを走る君 西沢葉火
~村下孝蔵の「初恋」の歌詞を思い出しました。好きな歌です。(よーこ)
導火線の先には一級河川 しろとも
~川原にて花火で遊んでいる風景、といえなくもないが、細い導火線の先に大きな川が広がっている、という切り取りはなかなかダイナミック。(月波与生)
雨を撃つ水鉄砲に雨つめて 蔭一郎
~「雨」のリフレインがそんなに効果的でないような、、、。「水鉄砲に雨つめて」のフレーズは魅力的なので撃つのは別なものの方がいいような。(月波与生)
太平洋ベルトを点々する俺ら 港のキリンの美しいこと 水の眠り
~いいな〜この歌(ろうる(楼瑠))
~2択で最後まで迷ったお歌でした!あのキリンほんと好きなんですよ〜本当に群みたいになってますよね!(琴里 梨央)
助手席の卒塔婆に海を見せてやる 平松泥沸
~家族ならば、位牌を持って行けばいい。友人だろう。新しい卒塔婆を立てた。昨年のものが、色褪せて墓の後ろに朽ちている。このまま、捨てるのは、かわいそうだ。おまえは、海が好きだった。久しぶりに、いっしょにドライブするか。シートベルトに止める。悪友との遊び心。さあ、いこう。友情があつい。(帰ってきた笛地静恵)
優しさと無関心さをイコールで接続せんと試みた秋 胡椒 黒
~なんか心がザワつきました(ハッピーマミー)
父さんを辞めて行きたいひとり旅 宮坂変哲
~ひとり旅は淋しがりには無理だと思うのだけど憧れている父さん。旅よりも父さんを辞めたいだけだったりする父さん。(月波与生)
背中から三角形の虹を出す 星野響
~虹は「希望」を暗示させるものではあるけれど三角形、しかも背中からという異色さ。これをブーメランのように投げればきれいな孤を描くことだろう。(月波与生)