さみしい夜の句会報 第112号(2023.4.9-2023.4.16)
第112回の参加者は96名でした。ありがとうございました。参加された方の1作品以上を掲載しました。掲載のない方、誤字脱字等ありましたらDMにてご指摘下さい。
夏雲システムのおかげでインターネット句会開催の環境が整いました。インターネットで作品を発表している人ならいくつかのネット句会にも参加されているのではないでしょうか。作品に対して参加者全員がコメントを書け、作品ごとの深掘りが可能なところは大変優れていると思います。夏雲+グループライン、夏雲+Zoomで、自宅にいながら全国の人と句会を楽しめるようになりました。既存の柳社も是非活用していただき活性化していってほしいと思います。
◆ 参加者(96名)
とし、石原とつき、奥かすみ、宮坂変哲、菊池洋勝、しまねこくん、岩瀬百、saku、田中ダニエル、太代祐一、daist、何となく短歌、さー、萩原 アオイ、屑乃ハコ、こたろう、凪ちひろ、仁音(hitone)、電車侍、hyuutoppa 突波、上崎、とるばどーる、西脇祥貴、Nichtraucherchen、元さん、此糸むら咲、東こころ、佐竹紫円、futuro、西沢葉火、おかもとかも、日下 昊、Born Slippy(モンモン)、yellow、みさきゆう、mine、水の眠り、落ちる星々、石川聡、雪夜彗星、まめのすけ、消々、せば、Ryu_sen、花野玖、ゆりのはなこ、星野響、雷(らい)、森砂季、はゆき咲くら、ちゅんすけ、みおうたかふみ、ぱさ、岡村知昭、お気楽草紙、おおごえ、涼、まつりぺきん、鴨川ねぎ、あやめ、涼閑、しののめ、汐音 葉月、たろりずむ、輪井ゆう、Tatsuo Kanase、和泉明月子、かのん、Take、水戸充希、crazy lover、二葉らむ、すずしろゆき、しろとも、秋鹿町、ほたる、まこと、む〜みんママ、春町、KBLib♡、くわとろプロジェクト、小沢史、けすけす、戸部紅屑、藤井皐、影薄ネキ直美、白石ポピー、カゲキ・ちゃけぞう、弌定住佳、星見冬夜、山田真佐明、大原鮎美、徳道かづみ、Nemo、カミハテ、月波与生
◆ 7・7、5・7・5 (川柳・俳句)
吊り革のおにぎり型とケーキ型 上崎
ババロアの爆発くらい泣いてみた 消々
待たぬ人ばかり来るなり金盞花 花野玖
あさってを示す3色ボールペン 上崎
秋のアがあなたになって歩き出す 春町
奥歯からキシキシ聞こえ木の芽和え 水の眠り
シンデレラゾーンに水のトラブル Ryu_sen
ハイジ派と反ハイジ派の抜歯跡 秋鹿町
一つだけ空いた升目に春の馬 しまねこくん
幸せに暮らしてますかチューリップ しまねこくん
素手で取る栄螺の勇姿真似したる 菊池洋勝
松明として受け取ったいちごパフェ 上崎
レガッタが刺さつたままの向こう岸 しまねこくん
ゆく春や猫が嫌ひと言ひ出せず お気楽草紙
たんぽぽや隔世遺伝なら禿げる hyuutoppa
断りのメールに深夜まで悩む みおうたかふみ
お台場の電波弱々しいダイバーシティ 石川聡
B4のツバメノートを羽にした Ryu_sen
春の夜をベトナム人に混じり食う せば
はなみずき点や線にはならぬもの 屑乃ハコ
茶番には明るいピンクを貼っといて おかもとかも
不死鳥だけ食べていない 西沢葉火
十五夜に充分熱い中華鍋 西沢葉火
走馬燈のエンドロールに君の名前 宮坂変哲
自分史のさいはてにこたつを置こう 西脇祥貴
……なぜかタグが切れてますね……。 西脇祥貴
君の住む深海へ宛てた手紙 まこと
JKのむずかりやまぬ目借り時 岩瀬百
いいとこ取りの夢みては我に返る日常 saku
水温むのでどいてください 太代祐一
通学用鞄につける助詞選ぶ さー
真夜中に空瞬いて更年期女子 仁音
蒲公英の 綿毛を飛ばす 微風かな 電車侍
甘やかな声を掬って夜のパフェ 東こころ
ラムネ包む青いセロハンだけ静電気が強め 日下 昊
アシンメトリーでバランスをとる 落ちる星々
空溢る涙、五月雨流れ星 雪夜彗星
アラスカの木彫りの鮭が寝返った まめのすけ
鞦韆を揺らすシニフィエシニフィアン 星野響
描かれてない絵のある絵をみている 雷
スイカも玉子になりたい 森砂季
わたくしを膨らませてく春の雨 ちゅんすけ
本日の彦左衛門は亀を撒く 岡村知昭
覗いたら本音が見える顕微鏡 まつりぺきん
指切りの指を嘗めずる蝸牛 あやめ
自分史を月の明かりの下で書く 涼閑
バネひとつ欠けたと知らぬ身で廻る 輪井ゆう
助手席の孤独地獄に右フック Tatsuo Kanase
鍵を閉め心も閉じて泣かないように 和泉明月子
通勤が 花のリレーの 観戦に かのん
不協和音小鳥囀る程でよい crazy lover
あんぱんの空洞ほどの春愁ひ すずしろゆき
笑ったり怒ったりする母の遺影 ほたる
ダライラマ所詮貴方も人間動物でしたね む~みんママ
羊水に落とすバスボム 小沢史
寝台の紫雲英になっているところ けすけす
春暁の違法ドラマに亡き怪優 戸部紅屑
新学期枇杷の周りでふて寝する 藤井皐
新横浜過ぎたら俺を忘れてよ カゲキ・ちゃけぞう
愚痴愚痴とダウンをとってひとりきり 山田真佐明
とんがってひとり金平糖のまま 月波与生
◆ 5・7・5・7・7(短歌)
ウインクが苦手な僕とスキップが苦手な君で奏でる和音 たろりずむ
記憶より缶の中身が減っていてココアと呼べぬ薄いのみもの 佐竹紫円
雨の都会は嬉しい世界戸川純から逃げられぬ まめのすけ
センセイもセンパイもガチャピンもいなくても私は私で生きる春 さー
靴底で人差し指が痛いのに「なんか中指….」と誤解する恋 屑乃ハコ
なるだろう僕もいつしか更新の途絶えたブログ跡地のように daist
アナグラムな果実をゆったりの唾液の静かな 石原とつき
春雷は冬の名残の怒る雲気迷う神よ道を外すな とし
うたた寝の君の吐息を 取りこんで踊るシナプスシアワセ放つ 奥 かすみ
雪上の凍てつく羽音聞ゆるは死に際按じる狩人の業 田中ダニエル
欠けている所も含めて好きだった過去形にすると苦しいほどに 何となく短歌
檻の外 いつまで待っても人間にならないチンパンジーを見ている 萩原 アオイ
風が鳴るエフエムの音消した朝昨日の憂い知ってのことか こたろう
雨の日のキッズコーナー大混雑ふと見上げれば綺麗なくす玉 凪ちひろ
あなたから続いてきてた遺伝子も断ち切ったからもう大丈夫 とるばどーる
腹痛のときに脂っこいものがほしくなるのも希死念慮かな Nichtraucherchen
雨に濡れ孤独の街を歩いてる傘に紛れて行く先もなく 元さん
ふくらんだ蕾のままで腐り落つ愛でるもの無き吾の花盛り 此糸むら咲
フクロウの声聞きたくて身を寄せて肌で感じる孤独の音色 future
朽ちるならせめて共にと誓いあい若葉芽吹いて幾千の華 アルト
届け!届け!届け!ありがとうも、大好きも、ごめんねも。天(そら)へ! Yellow
カレンダーめくれずにいるこの部屋に君の誕生日は来ないまま みさきゆう
ひとりではさみしいだろうと憑いてきた 孤独になれたはずだったのに mine
保障なき世の片隅で生きている非正規の吾と戦禍のキミと ゆりのはなこ
しばらくは来れないよって言ったのにまた会いたくて まだ会いたくて はゆさく
あなたから涙の訳を尋ねられ隠さず言えば楽になるのに ぱさ
苛立ちを隠しきれない君の手が鳴らしてた音だけ覚えてる おおごえ
黄砂舞う晴れ渡る空やや霞む遠くの景色春の装い 涼
サイコロの六が出たなら極楽へ四が出たなら畜生界へ 鴨川ねぎ
「霜焼けを湯につけるよう優しさに包まれ沁み入る甘痒い熱」 しののめ
桜雨 流してくれるか 思い出を涙とともに 海の果てまで 汐音 葉月
僕は右君は左に月を見て落ち合う場所まであともう少し Take
キョロ缶もフリマで買えるこの時代郷愁誘うエンゼル売買 水戸 充希
マリトッツォってつまりちょっとまいっちゃってるパトリオット 二葉らむ
四手辛夷 椿 立ち入り禁止のロープ主人不在の春惜しむ しろとも
真夜中にからすよ君はなぜ鳴くの人の心を見透かすように KBLib
夜も更けて今宵も交わすやり取りは毎度毎度の言葉の遊び 影薄ネキ直美
アネモネは鰐が千切れるように喉咲かせて塔を飛び越えたんだ 白石ポピー
枕詞を置き去りに春の夜風の流るるままに 弌定住佳
たおやかな外は春でも保留音ミスターサマータイムが掛かる 星見冬夜
◆ 詩
君と出会って凍っていた心が溶けたよ
君と話せて溶けた心が暖かくなったよ
君の笑顔で暖かい心が熱くなったよ
君へまっすぐ伝えた熱い心
届かなかった熱い心
でも後悔なんてしていない
今もいちばん大切なのは君だから(くわとろプロジェクト)
◆ 作品評から
じゃんけんと云われて思い出せるのは池田澄子の句なクラスター Nichtraucherchen
~池田澄子のおかげて負けても勝ってもじゃんけんは詠めなくなってしまった。そういう曠野のような場所が詩歌にはいくつかある。(月波与生)
なけなしのテーマソングを川へ流す おかもとかも
~とても残念なことである。しばらくは存在が恥ずかしい。始めるための新しいソングが必要だ。(月波与生)
幸せに暮らしてますかチューリップ しまねこくん
~絶唱なり (大原鮎美)
北の地で燃えるエロスとタナトスを封印できぬ亀甲縛り 水の眠り
~これも「亀甲縛り」に立ち止まるが「エロスとタナトス」「封印」と周到に言葉を置いている。同時に提出されて面白い現象だなあとながめる。(月波与生)
傘ささず雨粒の仮性包茎 秋鹿町
~「仮性包茎」に立ち止まるが上手く紛れ込ませている。「ささず」「雨粒」と周到な言葉たち。(月波与生)
自分史のさいはてにこたつを置こう 西脇祥貴
~こたつも五十路になると長時間はキツいんだよね。朔太郎的な世界の寝台を探そうか。(Tatsuo Kanase)
気の抜けたウィルキンソンを口移すあなたのむこうのあなたの遺影 此糸むら咲
~「気の抜けたウィルキンソン」は水なので「あなた」は亡くなっているのかな。とすれば「あなたのむこうあなたの遺影」とした方落ち着く。(月波与生)
またいつか小雨のなかで逢いましょう 蔭一郎
~#さみしい夜の句会 へ開始当初より投句されていた蔭一郎さんは病気療養のためしばらくお休みするとのことです。一日も早いご回復をお祈りいたします。小雨の中でまたお逢いしましょう。 (月波与生)
十五夜に充分熱い中華鍋 西沢葉火
~何を炒めるのか?とワクワクします。時は満ちて、いざ調理開始!ジュワッと一際高らかな音が聞こえます。(徳道かづみ)
檻の外 いつまで待っても人間にならないチンパンジーを見ている 萩原 アオイ
~深く、痛い。アオイさんのツイート全部見てますが、これ好きです。(Nemo)
アナグラムな果実をゆったりの唾液の静かな 石原とつき
~アナグラムな果実、という言葉がもう良すぎるな……!(カミハテ)
きみがいた故郷が香るこぎん刺しの花っこ挟む夜明けの本に みさきゆう
~こぎん刺しは地元青森県津軽地方に伝わる伝統的な刺繍。本に挿むには少し厚みがありますが栞としている人もいるのかも。「津軽さコイヘ」かな (月波与生)
繰り上がるロケット鉛筆新学期 さー
~懐かしい「ロケット鉛筆」まだあるのかとAmazonを見たらカラフルになってしっかり生き延びていました。そんな古くて新しい新学期。(月波与生)
ルービックキューブ六面揃えたらバラバラにして野生に帰そ 春町
~「そこに着地したか」って感じです。ルービックキューブは六面揃ってこそ商品価値があるとも言え、揃っていないからこそ玩具としての価値があります。(月波与生)
四股名ですかと問えば猫の縄張り 秋鹿町
~隣の白猫は町内会長らしく早朝の見回りを欠かさない。真冬でも雪の上に足跡が付いていて感心する。時々新入り猫が挨拶に来ていたりして人間界と変わらんなぁーと眺めている。(月波与生)