さみしい夜の句会報 第101号(2023.1.22-2023.1.29)
第101回の参加者は102名でした。ありがとうございました。参加された方の1作品以上を掲載しました。掲載のない方、誤字脱字等ありましたらDMにてご指摘下さい。
地元の新聞紙に2023年の抱負めいたことを書く機会があり、「新年くらいは風呂敷を広げてみよう」と、さみしい夜の句会100号を記念して誌上大会を始める、なんて書いてしまった。書いた以上具現化しないといけないような気がしている。やるやる詐欺にならないよう頑張りたい。
◆ 参加者(102名)
宮坂変哲、たろりずむ、さくら、hyuutoppa、しまねこくん、藤井皐、花野玖、屑乃ハコ、ゆいん、一筆居士、何となく短歌、む~みんママ、みさきゆう、梓川葉、西脇祥貴、しま・しましま、星野響、うめたかな、とわさき芽ぐみ、石原とつき、元さん、菊池洋勝、とるばどーる、電車侍、馬勝、秋鹿町、かのん、おかもとかも、海馬、石川聡、西沢葉火、さこ(砂狐)、雪上牡丹餅、雷(らい)、汐田大輝、流天、syusyu、水の眠り、しろとも、森内詩紋、ǝǝɯouɐ、岡村知昭、高木タツオ、すずめ、Ryu_sen、すずしろゆき、人見弐一、さー、高良俊礼、輪井ゆう、カゲキ・ちゃけぞう、まつりぺきん、東こころ、りん、夕星 凪、蔭一郎、雲心、チューバ2022、影薄ネキ直美、ヤナ・ヤヌー、桔梗菫、山田真佐明、思雨(スイ)、鴨川ねぎ、はかなし、ヨダレウルフコマソン(仮)、水魚、日下昊、綿木、ふら、歌眠、longroof、虹子ミレ、涼、涼閑、𝒮𝓃𝓊𝒻𝒻𝓀𝒾𝓃、ほたる、きり。、金瀬達雄、水須ゆき子、おかわり、小沢史、うたたね凛、抹茶金魚、donkey、同居嫁の呟き、せば、凪ちひろ、水也、雪夜彗星、斌、麻丹mani、野々原 蝶子、銀浪、MAMERI、ササキリ ユウイチ、茉莉亜まり、ガイヤーン、菊谷浩至、おとないやいやえん、月波与生
◆ 7・7詩、5・7・5詩
湯豆腐へ色の付かない醤油かな 菊池洋勝
放牧を兼ねてばら撒く刻み葱 しまねこくん
寒稽古チェブラーシカの話して 花野玖
ピッて音したらおじさんも大根 秋鹿町
背を丸め煙草がうまい日向ぼこ 宮坂変哲
絶望と書く手の中は羽毛都市 西脇祥貴
明日はいまさほど昏くはない客間 西脇祥貴
山羊の言う白さで創られる神話 抹茶金魚
チューリップも心霊写真も時価だった 石原とつき
独りよがりの口語の詩集 馬勝
耳鳴りは星が生まれるオノマトペ 馬勝
冬三日月きのうは見へぬもの見へて 花野玖
朝四時の鼻の穴には蜘蛛がいる おかもとかも
センチメンタルな目玉焼で困る 岡村知昭
熱いからお茶か土かもわかんない おかもとかも
冬やから合法的にムーンサルト 藤井皐
父さんはマックシェイクの顔である 秋鹿町
耽美派に塩揉み込んで少し置くおかもとかも
今月の標語になった氷点下 しろとも
メトロノームに酔っ払う 西沢葉火
山頂になり損なった石ばかり しま・しましま
業務用サランラップは夢見がち 海馬
コーヒーの深爪気味な色が好き 秋鹿町
じゃが芋の隣りでさつま芋が撃たれ 海馬
象はまだ象の形で凍ててをり しまねこくん、
落書きの胡麻ドレッシングは走る 秋鹿町
フェロモンは垂直に垂直に垂直に垂直に 藤井皐
子供にも分かるくらいのディープキス たろりずむ
冬帽子乗せて擬似アンビバレンス 星野響
冬雲に我自粛中することもなく さくら
FEN静かに流れ男は氷柱 hyuutoppa
鬼ごっこ童隠れてわらべうた 屑乃ハコ
しあわせに沼れば明日が怖くなる 梓川葉
木枠の戸ガタガタ騒ぐ冬の風 とるばどーる
冬薔薇 雲間の空は 蒼かりき 電車侍
じゃあまたね 風花と舞う 帰り道 かのん
厳寒の限定蕎麦を手繰りけり 石川聡
似た町のページをめくる両手足 雷(らい)
あの世でも綾取りしたいシマフクロウ 汐田大輝
うつせみのやがて呑まれて波のなか 流天
早番は家も会社も雪を掻く syusyu
一文字(ヒトモジ)を結んで偲ぶ母の皿 水の眠り
無念さは足跡にさえ降り積もる ǝǝɯouɐ
下水から湯気が昇って冬銀河 高木タツオ
刑務所の出口調査でむし返す Ryu_sen
鳩くだを巻く寒月に渇く街 すずしろゆき
戯れに踏み潰されて雪兎 人見弐一
陰口を言う陰探し三千里 雪上牡丹餅
コロッケ屋味知らぬままジムに成る さー
人嫌い泡立っていて雪ひとつ 高良俊礼
光る空のもといっそう暗い街 輪井ゆう
寒空に眼鏡曇らせ外で紫煙 カゲキ・ちゃけぞう
雨どいで泣く冬のひょっとこ まつりぺきん
褒められて堕ちそうになる冬の月 東こころ
鶴凍てゆくので返らない谺 蔭一郎
雪だるまオラフのつもりがひよこさん 凪ちひろ
凩や頭巾深くし修道士 雲心
気儘ねこ一人ぼっちの日向ぼこ チューバ2022
きつねうどん浪花恋しぐれ ヤナ・ヤヌー
薄張りの氷砕けて色がつく 桔梗菫
異次元の改革ならば死んでいる 山田真佐明
対話とはいわばひとつの格闘技 鴨川ねぎ
鷽鳴けば彼の地杜にも母子ならぶ ヨダレウルフコマソン(仮)
雪女郎に一目惚れされる齢六十一歳 日下 昊
19歳 毎日勤労感謝の日 綿木
パクチーがきらいあなたに愛されて 歌眠
電気代にこんなに苦しむ冬が来た longroof
黒飴をくれる婆の小菊墓泥棒 虹子ミレ
突然の雪で一面銀世界 涼
骨のない傘骨だけの傘雷雨 涼閑
「言い訳がましい」「言い訳だから」 𝒮𝓃𝓊𝒻𝒻𝓀𝒾𝓃
飛梅や届かぬ人を好きになる ほたる
炬燵とは眠たくなるという原理 さかもとりほ
いや僕は自覚してますソクラテス 金瀬達雄
凍星の香りと星になる欠伸 おかわり
底冷えや死斑まみれのお人形 小沢史
Vサインから初日の出 うたたね凛
雑多垢四の五の云わず覗いてみ donkey
寝れぬ夜の冷たき足を温める せば
藤棚に忘れ置かれた記憶かな 雪夜彗星
満席の講座ずっとすすめられる 斌
新月に『おまえはひとり』と笑う鬼 麻丹mani
リフレインが止まり木馬から降りる 月波与生
◆ 7・7、5・7・5以外の短詩
ギャンブルと名付けた犬が痩せもせず太りもせずに長生きをした たろりずむ
自分への義理チョコを買う来年は自分をもっと好きになりたい たろりずむ
あの人と同じお墓に入るのか全裸で歩く湯上がりの義父 馬勝
さみしいと伝えたくって「さ」まで打ち「さむいな」と打ち変えるさみしさ とわさき芽ぐみ
これからは眼鏡をかけた人として世界を硝子ケースに入れる みさきゆう
手の中に浮かぶ星月夜うずまいて今この景をきみに見せたい みさきゆう
客質が最悪ですと食べログに書かれてあった行きつけの店 たろりずむ
メレンゲの話をしてたはずなのにいつしかきみの話になって たろりずむ
この夜を割って飲んでる雪解けの兆しみたいな炭酸の泡 とわさき芽ぐみ
こんなにも眠たい君は夢ですか昨日見た恰好のままここに うめたかな
会わずとも声色聞いてわかる君隠せないのが時には痛く ゆいん
霙雪 首筋狙い 忍び込む僕の心と 重なるように 一筆居士
楽しかったまた遊ぼ、と送信後会いたい人とは会えぬを嘆く 何となく短歌
摘まないで離れた薔薇の甘やかな香りが胸の奥に満ちてる 森内詩紋
世界はホルモンバランスで変わるよだからお体ご自愛します すずめ
十年に 一度の寒気と テレビ吠え エコキュート壊る 寒梅は咲く りん
夜勤はね基本待つだけ静かだしコッソリイヤホン本怖きいて寒かった 影薄ネキ直美
冷え過ぎて充電出来ないiPhoneと今夜は一緒にベッドで眠る 思雨
気ぜわしく動いて疲れて痛む足だけど好きなのこの赤い靴 はかなし
いつからか音程ズレて読めないよ五線譜に乗る君の本心 ゆいん
来世は自分嫌いなひとたちもねむれるような部屋になりたい 水魚
祈っても祈ってもまだ足りぬほど 立ち込めている悲しみの雲 ふら
眠れずにためいきついてスマホ持ち 猫なでるよに画面にふれる きり。
なんかもうめんどくさいなジャスミンの花の白さを妬みつつ冬 ぽっぽ
恨みごとやめてたがいにふさわしい未来願うは別れの用意 秋日子の呟き
◆ 詩
振り向けば
きちんと、ありがとうも
さようならも言わないで
別れてしまった人ばかり(む~みんママ)
想い出を
風に還した
それなのに
哀しみだけが
記憶に残る (元さん)
しゃらり しゃらりと
天から雫が落ちてくるので
私はそれを ざしざしと除けました
がりり がりりと繰り返し
気がつけば
いっぱしの道が出来ていました
私はそれを 満足しながら眺めていました
道は遠慮がちに光っていました
風が冷たい夜でした
暗く静かな夜でした (夕星 凪)
生きている中で、一度でもあっただろうか、
きみの頬に触れる風でもよかった、
きみの肩に落ちる雨粒でもよかった、
きみが孤独なままきみに触れられる方法なら、
なんでもよかったんだよ、
いつか、きみの心臓の音になりたい、
きみに、安心して暮らしてなんてほしくないんだ、(野々原 蝶子)
◆ 作品評から
なまはげがちやんとスリッパ履いてをり しまねこくん
~最近では事前に「行ってもいいか?中に入ってもいいか、玄関までか?大声を出していいか?」など事細かに確認したうえで訪問するなまはげ。(月波与生)
手の中に浮かぶ星月夜うずまいて今この景をきみに見せたい みさきゆう
~ゆうさん、おはようございます!ゆうさんがお持ちの万華鏡は、ゴッホの星月夜の絵のように渦巻いて、ゆうさんの手の中で数えきれないくらいの美しい星空を描くのですね。ゆうさんの見せたい人に届きますように。とても素敵なお歌で、すきです。突然勝手な解釈を失礼いたしました!(銀浪)
この夜を割って飲んでる雪解けの兆しみたいな炭酸の泡 とわさき芽ぐみ
~ウワー 好きーーー (MAMERI)
ふゆふくは乾きづらいね縁側はあったかいねと猫語で話す タダノナイコ
~岩合光昭さんは猫語を話しているんだと思う。そしてみんなそれぞれ自分の言語を持っていて、自分語を解ってくれる人を待っている。猫のように。(月波与生)
ローソクと私が黙っていれば済む まつりぺきん
~この世の大半のことは「黙っていた方がいい」ことなのだろう。よせばいいのに言わなくてもいいことを言って時間を無駄にする。おかしな生き物である。(月波与生)
明日はいまさほど昏くはない客間 西脇祥貴
~なんだそりゃ!(ササキリ ユウイチ)
耳鳴りは星が生まれるオノマトペ 馬勝
~すごい。私の中の耳鳴りが、原因のよくわからない危険信号から、素敵なスパークへ一変しました!(さー)
ぎみあきゅー鳴く夜明け前ぎみあきゅー 岩瀬百
~「ぎみあきゅー」って何?しかも二度繰り返して終わる。謎だけが残る夜明け前。(月波与生)
~明かすことの是非はあるかもしれませんが、喪失への悲嘆、そして追悼なのかもしれません。
Give me a cue.『CUE』は高橋幸宏さんの代表曲のひとつです。(茉莉亜まり)
対話とはいわばひとつの格闘技 鴨川ねぎ
~すごい沁みました(ガイヤーン)
セーターの胸の丸みや五時間目 雲心
~「五時間目」。昼休み後の授業に身が入らないけだるい五時間目。これが二時間目、四時間目だと視線の対象が違うんだろうな、と思う。(月波与生)
底冷えや死斑まみれのお人形 小沢史
~すてき。めちゃ気に入った。(菊谷浩至)
うつせみのやがて呑まれて波のなか 流天
~本当にそう感じる時は、あります。(浜本亜矢子)
窓に住むさかなの指は五角形 秋鹿町
~「ありえないもの」を書いている。この生き物はまったくの嘘、何かの例え話なのか?そうではなく言葉にした瞬間すべては正しく「そこにある」ことになるのだ。(月波与生)
早番は家も会社も雪を掻く syusyu
~雪国に転勤した人が、毎朝出社前に一時間かけて家の周りを雪掻きし、出社後一時間かけて会社の雪掻きをした、という話を思い出した。そして早朝に住人の通勤通学のために道の雪掻きをしている人々がおられることも、句の向こう側に感じた。(おとないやいやえん)